東京でみつけたもの、みつけられたもの
気づけば、わたしはこの庭を3周していた。
ひとまわり5分もかからない小さな日本庭園。
「私はこれくらいのお庭が好きよ」と60代くらいの小柄な女性が管理人さんと話している。なんて素敵な声と話し方かしら。綺麗な英語で若い観光客とも朗らかに会話している。現代に仙女がいたらあんな感じでなかろうか。
池には二羽のカモ。「あれは親子だと私は思うの。模様が似ているでしょう。ほら、お母さんがリードしているの。」
とても自然に語りかけてくださったのに、気の利いた返しもできず、「あ、そうなんですねぇ、へえ、たしかに」と照れた江戸っ子みたいになった私。
その人は、短く切り揃えられた髪に白いイヤリング、美しく計算され尽くした装いで、その存在がこの庭園をさらに気品高く見せているように思う。あと40年かけたら、わたしもあんなふうになれるかしら。
「『否、三つ子の魂百まで』だわよ」
3歳の私がケタケタ笑っている。
あともう一回りして帰ろう。
仙女になりたい。
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