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ラマナ マハルシについて。

ラマナマハルシ(1879-1950)は、インドの著名な聖者であり、近代の偉大な精神的指導者の一人として知られています。彼は特に「自己探求」というシンプルで強力な教えを通じて、真の自己(アートマン)の認識に至る道を示しました。彼の教えの中心は「私は誰か?」という問いを通じてエゴの本質を探ることで、真の自己を直接的に体験し、悟りに至るというものでした。

ラマナマハルシは16歳のときに深い霊的覚醒を経験し、その後、アルナーチャラ山に近いティルヴァンナーマライでほぼ一生を過ごしました。彼の教えはインド国内外で広く受け入れられ、多くの弟子や訪問者が彼を訪れ、真理を求めました。彼の教えは簡潔でありながら深遠で、多くの人々が内なる平和と解放を求めるための道標としています。

マハルシは人間のエゴについてこのように解説しています。
エゴは、私たちが自分自身を認識し、世界と関わる際に中心的な役割を果たすものです。しかし、ラマナマハルシの教えにおいては、エゴは本質的な自己を覆い隠す幻想であり、真の自己に目覚めるためにはその実体を見破ることが重要であるとされています。ラマナマハルシの視点からエゴを理解することは、自己の探求と解放のプロセスにおいて不可欠なステップです。

エゴの本質とその働き

エゴは、私たちが「私」という感覚を持つ根源です。これは、個々の身体、思考、感情、記憶などと結びついて、自己を他者や世界と区別する感覚を生み出します。エゴは「私はこの体である」「私はこの思考である」「私はこの感情を感じている」といった主張を通じて、私たちのアイデンティティを形作ります。

しかし、ラマナマハルシによれば、このエゴの感覚は真の自己ではありません。エゴは、心と感覚の結びつきから生まれる一時的な現象であり、常に変動し、実体がないものです。エゴは自己の中心として機能し、私たちを物質的な世界や外部の経験に結びつける一方で、真の自己である「純粋な意識」から私たちを遠ざけます。

エゴの幻想性

ラマナマハルシは、エゴが実際には存在しない幻影であると教えます。エゴは、自己探求が始まる前にのみ実在するかのように見えますが、自己探求が深まるにつれて、その存在の不確かさが明らかになります。エゴは、真の自己が光を放つことを妨げる一種の影に過ぎず、実際には何の実体も持ちません。

エゴは、自己と世界との分離感を生み出し、それによって恐れ、欲望、執着、怒りなどの感情が生じます。これらの感情は、エゴが自己保存を図るために作り出すものであり、私たちの意識を真の自己から遠ざけ、物質的な世界に縛りつけます。しかし、このエゴの働きは、自己探求によって容易に見破ることができます。

自己探求とエゴの解消

ラマナマハルシは、「私は誰か?」という問いを通じて、エゴの根源を探求することを強調しました。この問いは、エゴの存在を直接に問い直し、その本質を明らかにするための手段です。「私は誰か?」と真剣に問い続けると、エゴの背後にある真の自己が徐々に浮かび上がってきます。エゴが一時的で変化し続けるものにすぎないことが理解されると、その執着や分離感は自然に薄れていきます。

自己探求のプロセスにおいて、エゴが実体を持たないことが明らかになると、それは消滅します。エゴが消滅すると、自己は「純粋な意識」として輝き始めます。この意識は、時間や空間に縛られることのない、永遠に存在し続けるものです。それは、すべての存在の根源であり、すべてのものがそこから生まれ、そこに帰る究極のリアリティです。

エゴの残存と対処

ラマナマハルシは、エゴの解消が完全に達成されるまで、心と体が存続する限り、エゴの影響が時折現れることもあると認めています。しかし、真の自己に目覚めた後は、エゴの影響は極めて微弱であり、もはや自己の中心にはなり得ません。エゴが再び現れることがあっても、それは単なる過去の習慣や心のパターンによるものであり、真の自己に対する理解が深まるにつれて、自然に解消されていきます。

自己探求を進める中で、エゴが再び顔を出す時には、それを否定するのではなく、ただ静かに観察し、その背後にある真の自己を見つめ続けることが重要です。エゴの動きを観察することで、その存在が幻想であることを再確認し、自己への理解がさらに深まります。こうして、エゴは完全に解消され、真の自己が完全に顕現することになります。

エゴと世界との関係

ラマナマハルシの教えでは、エゴの消滅によって世界そのものも幻想であることが理解されます。世界は、エゴのフィルターを通して見られるものであり、エゴが消えると、世界もまたその実体を失います。しかし、この「世界の消滅」は、物理的な意味での消滅ではなく、ただ観察者の意識の転換を指します。エゴが消えると、世界は真の自己の表現として再認識され、すべてが一つであることが明らかになります。

この視点から見ると、世界との関わり方も大きく変わります。エゴが消滅し、自己が真の自己として顕現するにつれて、世界は敵対するものではなく、自己の延長として認識されます。この認識は、すべての存在が一体であるという深い理解をもたらし、すべての行動が自然で調和的なものとなります。もはや自己中心的な欲望や恐れに基づく行動はなくなり、代わりに全体の調和を保つための行動が自然に現れます。

まとめ

エゴは、私たちが世界と自己を分離して認識するための仮の道具ですが、ラマナマハルシの教えによれば、それは本質的に幻影であり、真の自己を隠す障害に過ぎません。自己探求を通じてエゴの本質を見破り、その根源を探求することで、エゴは消滅し、真の自己が顕現します。このプロセスは、すべての苦しみや分離感を解消し、純粋な存在としての平和と調和をもたらします。エゴが消滅した後、私たちは世界を真の自己の表現として見つめ、自然で調和的な生き方を実現することができるのです。

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