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読書記録「川のほとりに立つ者は」


2025/1/13(月)

川のほとりに立つ者は
寺地 はるな
2022年10月20日発売 224p

図書館の返却されてきた本の棚から借りた。あらすじなどの情報を得ずに、装丁の美しさで選んだ。

恋人である松木の背景が明かされていく様子がおもしろく、次々とページをめくりたくなるミステリー小説に楽しんでいたが、読みながら、この本のテーマに気づいた。

この本には、社会では欠点とされる特性を持った人物達が登場する。ADHDやディスクレシアと名前がついている障害が理由であったり、過去の出来事が理由となってゆがんだ人格を形成していたり、友人思いの真っ当な人間なのに、表面だけを見て「乱暴者」と呼ばれたり、それぞれに背景があった。

そこから「人の表面だけを見て決めつけてはいけませんよ」という教訓めいたテーマを感じとった。
私は思った。「そんなこと、言われなくても分かっている。わざわざテーマにしなくても、大人として生きる人間ならみんな気づいているだろう」と。

しかし、主人公の清瀬は気づいていない人だった。

むごい事件や他人の非常識な行動に「そんなことをする人がいるなんて信じられない」と、理解しようとせずに他人事として切り離してきたらしい。

私は他人事だとは思わない。自分が事件をおこしたり、非常識な行動をとったりしないと言い切れない。事情を知り、考えることでそれを防げるかもしれない。
清瀬のように自分には関係ないと切り離す人がいるなんて信じられない。

そう考えて、ハッとした。
私も清瀬と同じではないか。気づいていないではないか。

清瀬には「そんなことをする人がいるなんて信じられない」と思う人になった背景があるのだ。

家族や友人に恵まれて育ち、社会生活を送るうえで大きな欠点のない清瀬には、むごい事件を起こす人の気持ちが分からなかった。

恵まれた人生を送る人と、辛い人生を送る人。どちらかというと、私は辛い人生に共感しやすい。
自分にとって共感しづらい「恵まれた人生」という背景があることに考えが及ばなかった。

この本を読まなければ気づけなかった。


人の背景を考えるときに、共感はしなくていい。分かろうとしなくてもいい。

ただ、自分には考えつかないような背景があるのかもしれない、そう考えることを心に留めておこうと思った。


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