ザマス眼鏡と言わないで…!眼鏡ライターが語る「フォックス」の魅力
眼鏡のカタチには、それぞれ“キャラ”がある。
フォックスは、「凛としていてエレガント」。
だから私は、好んでフォックスを掛けています。
なぜフォックスは敬遠されてしまうのか
フォックス。またの名を、キャットアイ。もしかしたら、日本では「ザマス眼鏡」「“教育ママ”っぽい眼鏡」と言ったほうが通じるのかもしれないけれど。フォックスとは、上の写真の通りサイドのラインがつり上がったカタチの眼鏡です。
眼鏡の基礎知識としてカタチのバリエーションを説明する企画には、必ずや登場する定番的なデザイン。だけど、眼鏡雑誌でフォックスが特集されることはほとんどありません。それは、残念ながら未だに日本では「ザマス眼鏡」として敬遠されてしまっていることに加え、眼鏡雑誌の多くが男性誌の別冊ムックであるため、往々にしてウイメンズとカテゴライズされるフォックスは蚊帳の外となってしまうからです。
ですが、じつは毎年各国の眼鏡ブランドからは素敵なフォックスがたくさんリリースされています。デザインやサイズも多様で、掛けこなしやすいものも多い。いつまでも食わず嫌いでいるのはもったいないのです。
フォックスの魅力について、もっともっと知ってほしい。とはいえ、そんな執筆依頼は待てど暮らせどやって来ない。だから私は、noteでフォックスについて気が済むまで語ることにしました。
私がフォックスを好きな理由
まず、なぜ私はフォックスが好きなのか。
それは冒頭にも書いたとおり、掛けるだけで凛としてエレガントな印象をもたらしてくれるから。つまりは、意志の強さを感じさせながらも、“女性らしく”掛けられるということです。
今やフレームの紹介文に“女性らしい”と書くと校閲から指摘が入る時代ゆえ、この表現は相応しくないのかもしれません。でも、パっと眼鏡のシルエットだけを見ただけで“女性らしい”と感じられるのは、フォックスならではの特徴ではないでしょうか。
女性にとっての眼鏡を、アクセサリーに変えた存在
ここでちょっと、フォックスの歴史を振り返ってみましょう。そもそもフォックスが誕生したのは、1930年代後半と言われています。
考案したのは、アメリカの起業家であるアルティナ・シナシ・ミランダ(Altina Schinasi Miranda)氏。当時ディスプレイデザイナーだった彼女は、自身が飾りつけをしていた衣料品店の向かいにあったメガネ屋のショーウィンドウに、スタイリッシュなフレームがないことからアイデアを考案。劇場のハーレクイン(道化師)のカーニバルマスクにヒントを得て、外縁が目尻に向かってつり上がったフレームをデザインしたのだといいます(『ファッションメガネ図鑑』(ガイアブックス)より抜粋して要約)。
そう、フォックスは最初「ハーレクインフレーム」という名で誕生したのです。昨年発売された『メガネの歴史』(原書房)にも、こう書かれています。
登場は1930年代ですが、その後1950年代に女性向けのファッションアイテムとして本格的に流行。同書の第11章「ハーレクインのメガネ」には、このハーレクインフレームの登場によって、メガネが女性にとってアクセサリーとなった歴史が書かれています。
そう、たしかにフォックスは女性向けのデザインとして登場し、そのデザインによって多くの女性に眼鏡が受け入れられることになったのです。
その事実は、「女性は眼鏡を掛けないほうがいい」と両親にさんざん言われながら育った私を勇気づけてくれる。女性だって、眼鏡を掛けてもいい。女性用に作られた、こんなにも美しい眼鏡があるのだから、と。
フォックスを掛けると……
フォックスの特徴といえば、目尻に向かってきゅっとつり上がるサイドのラインだ。テンプルの位置が高く、リムの上側(ブロウライン)も上がり眉のようにサイドに向かってややつり上がるよう、なだらかなラインを描く。この全体的に上向きのラインが、目元を凛とした印象に見せてくれる要因となっています。
目元だけではありません。フェイスラインのリフトアップ効果も、フォックスの魅力です。その効果を実感できる画像を、ここに紹介しましょう。これは、数年前に眼鏡誌に掲載されたもの。徹夜明けで店舗取材へ行き、プラスチックとメタルでそれぞれ似合うものを見立ててもらったのですが……、
寝不足でむくんだ顔が、つり上がり気味の眼鏡を掛けている左の方はシュっと締まって見えているのが一目瞭然でしょう。この違いには、正直自分もびっくりでした。どちらが良いと思うかは好みにもよりますが(我が子は右のほうが優しそうで良いと言う)、掛ける眼鏡で印象が大きく変わるのは確かです。そして、フォックスに引き締め効果があることも。※この場合、素材の違いも要因ではあるのだけど。
“オフ”ではなく“オン”の眼鏡
顔タイプ診断では「エレガント」と診断された私ですが、フォックスを掛けるとエレガントな印象がより強化されるような気がしています。だからフォックスの出番は必然的に取材などよそ行きの時が多く、きれいめな服と合わせることが多い。“眼鏡を掛けるとオフの日っぽくなる”みたいに言われたりもするけれど、きちんと肌を作ってフォックスを掛ければ、しっかり“オン”の眼鏡として活躍してくれます。
それに、フォックスを掛けると、ちょっと背筋が伸びる感じがするのもいい。意志の強さを感じさせつつ、ひとさじの可愛らしさと愛嬌も併せもつ。そんなフォックスが、やっぱり私は大好きなのです。
フォックスの魅力、広まれ!!
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