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チャイとビーズのトルコ暮らし。

実はトルコに到着してから学校が始まるまで、2週間の謎の空白の時間が存在していた。やらなきゃいけないこと(滞在許可証の手続きや先生方への挨拶回り)はあったが、バディのおかげで予想以上に早く終わった。そんな私は、どこかに出かけるとしても部屋にいるとしても、少し早く来すぎたな〜と思いながら1人で寂しくしていた。(連絡してくれた日本のみんなには感謝しかない)

そんな私のリアルの生活を豊かなものにしてくれたのは、紛れもなくルームメイトである。

今回は彼女と私の可愛らしくて人間らしい、トルコでの暮らしの話。

心を開けない日本人

ルームメイトと出会ったのは、私がトルコに来た日。最寄りの駅まで迎えに来てくれた。

オレンジ色の髪が綺麗で笑顔が可愛らしい、というのが第一印象。英語が苦手だと言う彼女はとてもおしゃべりで、私も負けじとなんちゃって英語で話し返す。
この頃は言っていることが、分かりそうで結局よく分からないことが多かったが、今となればそれも可愛い思い出である。

もちろん、初めの頃はなかなか心を開けなかった。見知らぬ人と共同生活をするというのは慣れるまで割とストレスである。また、日本人の話題になった時に、彼女が言った何気ない発言にこっそり傷ついたりもした。
一緒に住んでいるのは私と彼女だけ。本当はもう一部屋空いているのだが、なかなか入居者が見つからない。その代わりに、たまに彼女のいとこがシャワーを浴びにくる。それもまた最初はびっくりした。

私は普段から家ではかなりオフなので、日本人つまらん冷たいと思われてもおかしくない。


何も隠さないトルコ人

しかし彼女はひたすらに明るかった。元気の塊みたいな人。そして、思ったことは全部言う。(いや、日本人が察しすぎなだけかもしれない。)でも下着で過ごすのはヤメテほしい。流石に隠して!

そんな彼女は、毎朝「オハヨー!」と扉を叩き、部屋に篭りがちだった私に家事という仕事を与えた。一緒に掃除をし洗濯をし、料理を作った。たまにリビングで昼寝をして、彼女が育てている大量の植物の手入れをした。そして、おつかいという名目で、1人で外に出る私の背中を押した。(トルコの一部のお店は薄暗くて怖い)

1人寂しくしていた私だったが、「生活をする」というのはこんなにも活力が湧くのかとおったまげた。

お料理上手はおもてなし上手

「とりあえず座って、チャイでも飲んで、おしゃべりしようよ」というのがトルコスタイル。
彼女も例外ではない。トルコに来てから毎日飲んでいるのではないかと言うくらい、チャイを作って私をリビングへ誘い込む。
ごはんにチャイ、おやつにチャイ、座っチャイなよ、チャイチャイチャイ。

なにより彼女は料理上手だ。
トルコの伝統的料理のメネメンやクスル、トルココーヒーを作ってくれる。フレッシュな野菜達とパンをお供に、毎日食卓は色鮮やかだ。そして何よりヘルシーでオイシー。
(そもそもトルコ料理は美味しい。特に塩とチーズが美味しいのが私的グッドポイント。また食材の物価が安い。日本ではなかなか手が出せなかったフルーツもトルコでは買い放題!)

そんなこんなで1週間ほどで生活に慣れることができた気がする。

ある日の朝ごはん

1人じゃないよ

あの日のことを私は忘れもしない。
1人で外に出ることに慣れてきた頃、帰ってくると彼女の元気がなかった。いつもだったら部屋に直行するところだが、その日はリビングで一緒に過ごすことにした。そういえば、出会ったばかりのころのあの明るさを最近感じないかも、と思いながら話していると、いつのまにか彼女の目から涙が溢れていた。

彼女のスマホの翻訳画面を見ると、「鬱」の文字。そして彼女は「同時に全てを失った」と言った。
思い返せば、前の仕事でいじめがあり職を探していると言っていたし、トルコ人の男性は良い人が少ないとも言ってた。故郷は離れた場所にある。もう一部屋の入居者候補がたまにやってくるが誰もこの家を選ばない。そして、彼女は私と10ほど年齢が離れている。その事が彼女にとって悩みの種であることがわかった。(もしかしたらなかなか部屋から出てこない日本人もそこに含まれていたかもしれない…)

「自分は1人だ、たまに猛烈に悲しくなる」そう話す彼女の言葉が、トルコに来たばかりの頃の私に重なった。そして、たくさんもてなしてくれた彼女に私は何も出来ていなかったなと気づいた。

どうすればいい?と聞かれたので、趣味と運動と音楽を提案した。

ビーズで繋がる夜

あれから、私と彼女はビーズのネックレス作りに夜な夜な励んでいる。アラビック調のトルコ音楽をかけて。日本のお香を焚いて。

彼女の趣味はビーズアクセ作り

そして再び彼女は明るくなった。
友達のお腹に双子の赤ちゃんがいることを嬉しそうに話し、仕事が見つかったら一緒に故郷に遊びに行こうと私を誘った。

昨日は突然ファッションショーが始まり、いらなくなった服をたくさんくれた。というか商売が始まり10着ほど中古価格で安くお買い上げした。
トルコの女性はなかなかセクシーな服を着る。さて、明日はどんなコーディネートにしようか。少し現地に染まるのもありかもしれない、なんて。
明るくなったのは彼女だけではないようだ。


そんなこんなであっという間に2週間。オリエンテーションではいろんな国の留学生と友達になり、学校も始まった。慌ただしい日々でも、家という安全地帯が私にとって帰ってくるのが楽しみな場所である、これ以上の幸せはない。

彼女はビーズに飽きたら次は編み物をしようとチャイを飲みながら誘ってくる。私はもちろんと言って、出来上がったビーズのネックレスの糸をギュッと締めた。明日は毛糸屋に行こうかな。

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