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コロナ・ネット・断絶・現代(山川築)
西村さんの日記を読み、虚を突かれたのは、漠然と現代を捉えるのではなく、まさにいま現在進行中の事態である新型コロナウイルスを取っ掛かりにしていることだった。いや、それは自然なことかもしれないが……わたしにはその発想がなかった。
「コロナ読み」の話になるほどと思う。わたしも意識下では影響を受けているだろう。西村さんは慎重に書かれているが、状況や感情を代入して読める(場合が往々にしてある)のも、短歌
不連続に劇的に(山下翔)
西村さんの「コロナ読み」の話を読みながら、似たようなところで「震災読み」の話題をおもいだしました。二〇一一年のあの震災のあとでは、たとえば「津波」という語がそれまでとはちがったニュアンスをもって読まれるようになった、というような話です。むろんそれだけに限りませんが、「震災」というフィルターを通してうたが受け取られるようになった、というのは自身の〈読み〉を振り返ってみても、おもいあたることです。
つながっている(田丸まひる)
――三巡目「短歌と現代」
今まで当たり前だと思っていた日常が、災害によってある日突然、もしくは今の新型コロナウイルスの拡大のようにじわじわとくずれ落ちていく。西村さんの言うように、「現代」は、たとえば昨年思い浮かべていたようなものとは変わってしまった。
「コロナの歌しかできない」という歌人の話があったが、わたしは正直、歌を詠むこと自体がなかなかできなかった。気力がなくなっていた。ウイルスそ
とある誤読の話(西村曜)
――三巡目「短歌と現代」
この交換日記も三巡目、さいごのテーマとなった。第一期の三巡目「短歌の過去・現在・未来」にて山崎聡子さんが「交換日記だと思って気楽に書き進めてきたエッセイの最終回がこんなテーマでとまどった」と書かれていたけれど、わたしも三巡目で手が止まってしまった。それでも「短歌と現代」ということで、わたしがTwitterから短歌にのめり込んでいった話などして、短歌と現代のSNSについ
代数系入門(山下翔)
二〇一一年のことで、まず思い出すのは成人式です。夜の会だけは出ようと、電車と船を乗り継いで地元へ向かいました。小さな高速船です。波がたっていて、客室は後ろ側だけが開放されていました。
次の日はバイトでした。朝まで飲んでそのまま帰ろうと船は往復券を買ったのだった――いま思い出しました。手帳と松坂和夫『代数系入門』を突っ込んだだけの紙袋を手に提げ、海辺の国道をふらふらとホテルまで向かいます。鼠色
不完全を生きる(田丸まひる)
――二巡目「私の好きな本」
「母という生き物は大変ですね。子どもがすべてで、子どもにとってはお母さんが絶対的で」と屈託のない笑顔で言われて、正直戸惑った。
昨年の初夏に出産をして、たしかにわたしは自分の子どもにとっての母になった。今は子どもと過ごす時間がいちばん長い。しかし、仕事も短歌も、そのほか好きなアイドルの応援をすることも、時間配分は変えながらもそれぞれ大切に思う気持ちは減っていない
やたらに風の強い町で(田丸まひる)
――一巡目「短歌と私」
「汽車の時間やけん、帰るな。またあした」全国で唯一電車の走っていない県で、高校生だった。毎日は自宅と高校の往復で過ぎていく。モーニング娘。が好きでよく口ずさんでいたけど、カラオケボックスに行ったことはなかった。コンビニっぽい店で買った雑誌で見かけた浜崎あゆみのブレスレットが可愛いと思って、雑貨屋で似たようなイミテーションを探した。コンサート会場も、「本物」を売っている店
積み重なる新しさ(馬場めぐみ)
―― 三巡目「短歌の過去・現在・未来」
短歌研究十一月号掲載の石井僚一さんの連作二十首「短歌をやめた日」がとても印象的だった。
あなたに賭ける、と言われて、この人に短歌のすべてを賭けよう、と思った東京の日
電話をすれど電話をすれどつながらない日 あなたは短歌をつくっていました
こんな歌つくらないほうがいい、と言われて歌会にいくのをやめた日
なんだか嫌なきもちの日
会えば殴
語りづらいことを(道券はな)
―― 三巡目「短歌の過去・現在・未来」
お変わりありませんか。馬場さんにご紹介いただいた『LOVE WAY』、本筋には関係ありませんが、未来とは明日も歌うと約束すること、という箇所に、胸を突かれたような気がしました。また、山崎さんの短歌で誰かと感情の交歓ができるというご指摘、大変心強く思いました。辺見さんが仰る個別と協働との往還の蓄積については、そんなに大きな往還に入っていることが、なんだか怖