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肥料を知る!(基礎) ~窒素(N)~

こんにちは。農業経営サポーターの小川隆宏です。今日は肥料の基本の話をしたいと思います。どちらかというと農業初心者や家庭菜園の方向けの話になると思います。
農業や家庭菜園で経験のある人であれば経験されていると思いますが、肥料を与えるとたちまち葉の緑色が濃くなり樹の姿も急激に大きくなります。
主に肥料に含まれている窒素(N)の働きによる影響が大きいです。野菜を育てる者としては樹が大きくなって緑色が濃くなると健康に育っている感があり嬉しくなって、ついたくさん肥料を与えがちになります。

〇成長に影響が出る
窒素を与えすぎると色々な 弊害が出てきますので注意が必要です。まずトマトなどの果菜類においては 葉・茎ばかり成長して花や実がつかなくなる現象が起こります。これは植物の体を作る成長(栄養成長)から花や実を作る生長(生殖成長)へスイッチが切り替わらないためと考えられています。

トマトなどの果菜類は実が獲ることが目的ですので、葉や茎ばかリ大きくなっても困った結果となります。

茎・葉ばかりの過繁茂

〇味や耐病性にも影響
窒素の与えすぎは野菜のおいしさや品質にも影響を与えます。植物は土の中の窒素を取り込む際に炭水化物を使ってそれを行います。土の中に窒素(N)が過剰にあると、植物は余分な窒素(N)も体に取り込もうとしてしまい、せっかく光合成をおこなって作って貯めていた炭水化物を無駄に消費してしまうのです。
その結果、野菜の場合は食味が悪くなり、体は軟弱になり抵抗力も減少するので病害虫などの被害を受けやすくなります。野菜ではありませんが水稲も窒素(N)が多いと 過繁茂になって倒伏し、品質が低下する危険性が高くなります。
もう少し詳しくいうと、窒素をたくさん与えた場合、植物細胞レベルでいうと、細胞の中身である細胞質がたくさん増え、細胞の外壁であるの細胞壁が追い付かず、水風船のように薄っぺらい細胞壁になってしまう状況になります。そうなると外部からの攻撃に弱くなるため病害虫にかかりやすくなります。
さらにタンパク質含有量が増え、食味が低下することも分かっています。

〇窒素をたくさん与える植物も
逆にセロリ栽培では窒素(N)を多く入れて茎を柔らかくすることで食味を高めています。 茶の栽培でも同様に窒素(N)を多めに施して、茶の旨味成分のアミノ酸を増やしています。
これは植物を健康に育てるという観点よりも、食味をよくするという観点での人間の都合で窒素を多く与えている例ですね!

しかし吸いきれなかった窒素(N)は地下水などに流入して環境汚染します。 そこで例えば茶では成分がゆっくりと溶け出る肥料を使用したり、セロリでは点滴潅水によりゆっくりと与える試みが産地では進められています。

〇植物の多くは硝酸態窒素を好む
窒素(N)にはアンモニア態と硝酸態の2つの形があります。アンモニア態窒素を含む肥料には「硫安」・「塩安」などがあり 硝酸態窒素を含む肥料には「硝酸カリ」 「硝酸ソーダ」などがあります。両方を含むものに「硝安」があります。アンモニア態窒素は窒素(N)に水素(H)が4つついてプラスの電気を帯びた形になっています。(アンモニア態窒素:NH4+

それに対して硝酸態窒素は窒素に酸素が3つついてマイナスの電気を帯びています。(硝酸態窒素:NO3-

wikipedia より窒素循環

植物はそれぞれどちらの形の窒素を好むものかが決まっていますが、大部分の植物は硝酸態窒素を吸収することによってよく育つことが分かっています。 畑には硝化菌という微生物がいてアンモニア態窒素をすぐに硝酸態窒素に変えてしまいます。そのため 畑の作物の多くは 硝酸態窒素を利用できるように適用しています。


〇アンモニア態窒素を好む植物

一方で アンモニア態窒素を好む植物は少なく、水稲、ブルーベリー、茶、 レタスが主なものです。これは水田では水を張るので土壌には酸素が少なく硝化菌の働きが弱く 有機物が分解してできるアンモニア態窒素が硝酸態窒素にならずに、安定して存在できます。
またブルーベリーや茶の場合は 酸性の土を好んで生育しますが 酸性土壌では硝化菌が働きにくいため、アンモニア態窒素が多く存在します。水耕栽培のレタスの場合でもアンモニア態窒素の方が生育が良くなります。 これらのアンモニア態窒素を好む植物も生育環境にうまく適応しているというわけです。いずれにしても 植物にはその植物に適した形の窒素があり、適していない方を与えても植物の生長の 効率は悪くなります。
畑の野菜に限れば 硝酸態窒素を与えるのが正解となります。

今日は窒素(N)の話でした。


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