認知度を高めることに意味はあるか 見落とされる「顧客ファースト」の重要性
昨今、ビジネスにおける「認知度向上」は重要な課題として注目されている。確かに知名度が上がれば顧客獲得や売上増加につながる可能性は高くなる。
しかし、「認知度を上げれば成功する」という考え方は、実は大きな落とし穴を孕んでいるように思う。
この記事では、認知度向上に潜む問題点を解き明かし、真の成功へと導く、戦略的な認知度向上アプローチについて考える。
認知度とは
認知度とは「あなたの会社やサービスをどれくらいの人が知っているか」という指標。具体的には、以下のような指標で測定される。
想起率
特定のカテゴリーを提示された時に、どれだけの人があなたの会社やサービスを思い出すか無想起率
特定のカテゴリーを提示された時に、どれだけの人があなたの会社やサービスを知らないかシェア率
特定の市場におけるあなたの会社やサービスの占有率
消費者は多くの場合、認知した情報をもとに購買行動を進捗させる。つまり購買行動にリーチしたいのであれば、購買行動に入る前段階で自社のブランドやサービスについて知ってもらえている方が有利ということになる。
認知度を上げたい目的はどのようなことだろう。
売上の向上?イメージの向上?採用人数の増加?
ぼんやりと「名前を知ってほしい」という設定では狙った効果を得にくいし、結果として効果の測定ができずにコストも肥大化してしまうだろう。
まずは目的を明確にし、誰にどのようなイメージを持ってほしいのかを設定することで、その先を迷わず考えることができるようになると考える。
ブランディングとは
認知度の話をする際に、ブランディングというキーワードがよく出てくるかもしれない。ブランディングとは、「あなたの会社やサービスにどのようなイメージを持たせたいか」を戦略的に構築していくこと。
具体的には、以下のような要素を意識する。
ブランドイメージ
顧客にどのような印象を与えたいかブランドメッセージ
顧客にどのようなメッセージを伝えたいかブランドストーリー
顧客にどのような物語を伝えたいか
前節で認知度を上げたい目的について触れたが、その部分こそがブランディングと呼ばれるものであり、ここは意外にも多くの方が誤解している部分だと捉えている。
「名前を知っていてほしい」ではなく、「誰に」「どのように」知ってもらえるのかで、その後の行動に繋がるのかどうかが変わってくるからだ。
物事には理由がある。私たちは理由なく選択を行うことはそれほどないので、想起してもらいたいシーンで、しっかりと想起してもらうことが必要ではないだろうか。
消費者は売り込みを嫌う
近年、消費者の購買行動は大きく変化している。従来のように、企業が一方的に情報を発信して売り込む方法は効果が薄れ「顧客ファースト」の考え方が重要になっている。
つまり、消費者は「自分にとって本当に必要な情報」を求めており、「押し売り」を嫌うということだ。
彼らは、商品やサービスを選ぶ際に、「自分にとって何が重要なのか」を自分で判断したいと考えており、「企業が一方的に押し付ける情報」には興味を示さない。
では、現代の消費者に響くマーケティング戦略とはどのようなものだろうか。
私は単に商品やサービスの宣伝をするのではなく、顧客の課題を解決するようなコンテンツを作成することがとても重要だと考えている。そのため私たちは、消費者が本当に必要と思って求めるニーズにフィットするコンテンツを提供し、且つ魅力的に魅せることが必要だ。
「押し売りを嫌う」と書いたが、どの程度嫌うかはその情報を受け取る人によって様々な反応を伺うことができるだろう。
逆に言えば「非常に嫌われる」場合もあることも考慮対象としておかなければならない。軽い気持ちで売り手の事情を押し通せば、消費者はよりつかなくなり、顧客離れに繋がることを理解しておかなければならない。
消費者の欲しいに応える
では、消費者はどのような情報を求めているのだろう。従前は「AISAS」と呼ばれる購買行動モデルが注目されていた。AISASとは、
Attention(注意)
Interest(興味)
Search(検索)
Action(行動)
Share(共有)
の頭文字を取ったもので、消費者が商品やサービスを購入に至るまでのプロセスを表している。
消費者は、まず何かしらのきっかけで「注意」を向け、「興味」を持ち、「検索」を通じて情報を収集し、最終的に「行動」を起こし、「共有」することで周囲に影響を与えることとなる。
「消費者の欲しいに応える」ことは、真の認知度向上と成功への鍵となる。従来の「売り手主導」の考え方は、もはや通用しない。繰り返しとなるが、消費者は、企業が一方的に押し売りするような情報ではなく、「自分にとって本当に必要な情報」を求めている。
そこで重要となるのが、「顧客視点」に立った戦略構築。これは顧客のニーズを深く理解し、顧客にとって価値のある情報を提供することで、顧客との信頼関係を築き、真の認知度向上を実現していく考え方だ。
これは顧客と書いたが、何も購買者を対象としたことに限った話ではなく、採用がメインテーマの場合には求職者やジョインしてほしい層に向けた話ということは念の為断っておく。
AISASからDECAXへ
近年では消費者の購買行動は大きく変化しており、従来の「AISAS」と呼ばれる顧客行動モデルでは説明しきれない部分が出てきている。
そこで近年注目されているのが、「DECAX」と呼ばれる進化型顧客行動モデルで、AISASの5つのフェーズに加え「発見」という新たなフェーズを加えることで、より詳細な顧客行動を分析することができるようになったものだ。
DECAXの5つのフェーズ
Discovery(発見)
顧客が商品やサービスを初めて知る
ソーシャルメディアやインフルエンサーマーケティングを活用して、顧客に商品やサービスを認知してもらう。コンテンツマーケティングを活用して、顧客にとって有益な情報を提供し、顧客とのエンゲージメントを高める。Engagement(関与)
顧客が商品やサービスに興味を持ち、情報収集を始める
ウェブサイトやアプリを改善し、顧客にとって使いやすいインターフェースを提供する。顧客からの問い合わせに迅速に対応し、顧客とのコミュニケーションを図る。Consideration(検討)
顧客が複数の商品やサービスを比較検討する
顧客にとって分かりやすい比較表やレビューなどを提供し、顧客の検討を支援する。無料トライアルや割引クーポンなどを提供し、顧客に商品やサービスを体験してもらう。Acquisition(獲得)
顧客が商品やサービスを購入する
購入手続きを簡略化し、顧客がスムーズに購入できるようにする。顧客に特典やクーポンなどを提供し、購入を促す。eXperience(体験)
顧客が商品やサービスを利用し、体験する
顧客からのフィードバックを収集し、商品やサービスを改善していく。顧客にアフターフォローを提供し、顧客満足度を高める。
DECAXモデルを活かしたマーケティング戦略
DECAXモデルを活かしたマーケティング戦略を実行することで、より多くの顧客にリーチし、顧客満足度を高めて売上を増加させることができると考える。具体的には、以下のような施策が考えられる。
マーケティング、ブランディングには受け皿が必要
AISASやDECAXを通じて顧客の創造活動を行っていくことがセオリーだが、顧客となる人々の活動に対して受け皿を用意しておく必要がある。
集客施策や認知施策を行うことは必要であるものの、単一の施策としては効果が薄かったり、狙い通りの効果が得られない状況が発生しやすい。
なぜ受け皿が必要なのか?
集客や認知施策は、顧客との接点を生み出す重要な役割を果たすものの、その施策単独では顧客が行動を起こせる状態にはならない場合が多い。顧客は、情報を収集し、検討し、最終的に購入に至るまでの過程において、さまざまな選択肢を比較検討する。
受け皿が不足している場合、次のような問題が発生する可能性があります。
顧客の行動が途切れてしまう
興味を持った顧客が、情報収集や検討を進める場所がないため、購入に至らない。せっかく集めた顧客を逃してしまう
顧客が競合他社の商品やサービスを選択してしまう。ブランドイメージが低下する
顧客が満足できる体験を提供できず、ブランドイメージが低下してしまう。
効果的な受け皿とは?
顧客が求める情報を提供し、検討・購入をスムーズに行える環境を整備したものを用意することが効果的であると考える。このあたりはクロスメディアでブランディングを行う際には必須である。
受け皿を整備するための具体的な方法
ウェブサイト
顧客にとって使いやすいウェブサイトを構築し、必要な情報を分かりやすく掲載する。ソーシャルメディア
顧客とのコミュニケーションを図り、ブランドイメージを向上させる。ブログ
顧客にとって有益な情報を発信し、エンゲージメントを高める。メールマガジン
顧客に最新情報を配信し、購買意欲を高める。顧客サポート
顧客からの問い合わせに迅速に対応し、満足度を高める。
良い受け皿は、認知された顧客がほしいと感じている情報を整理して体系的に提供する媒体だ。昨今はインターネットを通じてアクセスされる受け皿が主体だが、もちろんフライヤーや記事でも良い。
ただし、自由度が高く自ら調整が可能な自社サイトやオウンドメディアが効率的であることは申し添えておく。
AISASやDECAXなどの顧客行動モデルを理解し、顧客ニーズに合致した受け皿を構築することは、現代のマーケティング・ブランディングにおける必須条件と言える。
この記事を読んでいる認知活動に勤しむあなたは「そもそも何故認知活動をしているか」「認知活動の先の狙いは何か」を改めて振り返り、それをAISASやDECAXと照らし合わせながら、CVするシナリオを想定して受け皿を用意することをお忘れなく。