のこされた家族の生活を支える!遺族年金
こんにちは。ミライ・イノベーションnote編集部です。
前回まで、「年金」についてお話ししてきました。
ところで、公的年金には3つの給付がありましたね。それは、老齢給付・障害給付・遺族給付です。一定の要件を満たすことでこれらの給付を受け取ることができます。
今回は遺族給付についてくわしく解説します。
1.遺族年金とは
遺族年金は、国民年金あるいは厚生年金の加入者(であった方)が亡くなったときに、その方によって生計を維持されていた家族が受けることのできる年金です。
遺族年金にも、「遺族基礎年金」「遺族厚生年金」があります。
亡くなった方の年金の加入状況などによって、「遺族基礎年金」「遺族厚生年金」のいずれか、またはその両方の年金が遺族に給付されます。
なお、遺族年金を受け取るには、亡くなった方の年金の納付状況や、遺族年金を受け取る方の年齢・優先順位などの条件を満たす必要があります。
それでは、遺族基礎年金と遺族厚生年金についてくわしくみていきましょう。
(1)遺族基礎年金
遺族基礎年金は、年金を受け取っている方などが亡くなったときに、その家族に給付される年金です。
①受給要件
次の要件1~4のいずれかを満たしている方が死亡したとき、遺族に遺族基礎年金が支給されます。
②遺族基礎年金の受給対象者
遺族基礎年金は、亡くなった方に生計を維持されていた、次の遺族が受け取ることができます。また、遺族厚生年金を受給できる遺族の方は、あわせて受給することができます。
なお、上記の「子」の条件を満たしていても、次のような場合には、子に対して遺族基礎年金は支給されません。
子のある配偶者が遺族基礎年金を受け取っている間
子に生計を同じくする父あるいは母がいる間
③遺族基礎年金の年金額
遺族年金は、亡くなった月の翌月分から受け取ることができます。
また、遺族基礎年金の年金額は一律です。
なお、子の加算額はその方に生計を維持されている子がいるときに加算されます。
(2)遺族厚生年金
続いて、遺族厚生年金についても確認していきましょう。
①受給要件
次の要件1~5のいずれかを満たしている方が死亡したときに、遺族に遺族厚生年金が支給されます。
②遺族厚生年金の受給対象者
亡くなった方に生計を維持されていた以下の遺族のうち、最も優先順位の高い方が受け取ることができます。なお、遺族基礎年金を受給できる遺族の方はあわせて受給できます。
なお、子のある妻、あるいは子のある55歳以上の夫が厚生年金を受け取っている場合、子には遺族厚生年金は支給されません。
③遺族厚生年金の年金額
障害厚生年金の年金額は、亡くなった方の厚生年金の加入期間や報酬額をもとに計算されます。
このように、遺族基礎年金は一律額でしたが、遺族厚生年金は、亡くなった方の老齢厚生年金の報酬比例部分の額によってもらえる金額が異なります。
2.中高齢寡婦加算と経過的寡婦加算
遺族厚生年金における加算制度に「寡婦加算」というものがあります。
その名のとおり、夫を亡くした妻(=寡婦)に加算されるもので、寡婦加算には、「中高齢寡婦加算」と「経過的寡婦加算」があります。
これらは支給要件や支給タイミングが異なり、仕組みが複雑です。それぞれについて確認していきましょう。
(1)中高齢寡婦加算
夫を亡くした妻(=寡婦)が、老齢基礎年金をもらえるようになるまでの間(妻が40歳以上65歳未満の間)、遺族厚生年金に上乗せして支給されます。
なお、対象は寡婦、あくまで夫を亡くした妻です。妻を亡くした夫には支給されないので注意しましょう。
①受給要件
厚生年金に20年以上加入していた被保険者である夫を亡くした妻が、次の条件のいずれかを満たす場合に支給されます。
ただし、次のような場合は中高齢寡婦加算は支給されないので注意が必要です。
②中高齢寡婦加算の加算額
中高齢寡婦加算の加算額は2022年度(令和4年度)実績で、583,400円です。この額は、遺族基礎年金(満額)の4分の3程度の金額です。
なお、公的年金の額は毎年見直しされており、中高齢寡婦加算の加算額も毎年見直されています。
(2)経過的寡婦加算
遺族厚生年金を受けている妻が65歳になり、自身の老齢基礎年金を受け取れるようになると、中高齢寡婦加算は打ち切られます。
ただし、年金額の大幅な減額を回避するための措置として、経過的寡婦加算という制度があり、中高齢寡婦加算に代わり加算されます。
中高齢寡婦加算の支給額は、妻の生年月日に応じて異なりますが、65歳から生涯もらうことができます。
ただし、1956(昭和31)年4月2日以降生まれの妻には経過的寡婦加算は付かないので注意しましょう。
なお、中高齢寡婦加算・経過的寡婦加算はどちらも単独で手続きする必要はなく、遺族厚生年金の受給権がある人には、条件に応じて新規加算や切替が行われます。
(3)中高齢/経過的寡婦加算の支給イメージ
中高齢寡婦加算の支給イメージを具体例を用いて確認してみましょう。
なお、遺族年金および寡婦加算の受給要件などは満たしているとします。
例1:妻に子がいる場合
夫の死亡時、妻が38歳、子が13歳の場合を想定してみましょう。
上図のように、妻には子がいるので遺族基礎年金を受給できます。
遺族基礎年金は、子が18歳になると打ち切られ、中高齢寡婦加算が支給されるようになります。
中高齢寡婦加算は、妻が老齢基礎年金をもらえるようになるまでの間に支給されるものです。したがって、妻が老齢基礎年金を受け取れる65歳になると、中高齢寡婦加算は打ち切られ、代わりに経過的寡婦加算が加算されるようになります。
例2:妻に子がいない場合
夫の死亡時、妻が38歳で子がいない場合を想定してみましょう。
上図のように、妻には子がいないため、遺族基礎年金の支給はありません。
しかし、子のいない妻は40歳から中高齢寡婦加算が支給されるようになります。
中高齢寡婦加算は、妻が老齢基礎年金をもらえるようになるまでの間に支給されるので、妻が老齢基礎年金を受け取れる65歳になると、中高齢寡婦加算は打ち切られ、代わりに経過的寡婦加算が加算されるようになります。
このように、子の有無や妻子の年齢により、年金がそもそも支給されるかどうかや、支給のタイミングが異なります。
3.寡婦年金と死亡一時金
国民年金独自の給付制度として「寡婦年金」と「死亡一時金」があります。
どちらも国民年金のみの制度で、厚生年金にはありません。
(1)寡婦年金
国民年金の第1号被保険者としての保険料納付済期間(免除期間を含む)が10年以上ある夫が、何の年金も受けずに亡くなったとき、その妻が60歳から65歳になるまでの間支給されます。
また、夫が亡くなってから5年以内に手続きをしなければ、受給できなくなります。
①受給要件
次の要件をすべて満たす妻に支給されます。
②寡婦年金の支給額
寡婦年金の支給額は、夫の第1号被保険者期間だけで計算した老齢基礎年金額の4分の3の額相当です。
ただし、受給資格のある妻に以下の事由が生じたとき、寡婦年金の受給資格はなくなります。
(2)死亡一時金
国民年金の第1号被保険者として保険料を納めた期間(全額免除を除く保険料の一部免除を受けた期間を含む)が36月以上ある人が、老齢基礎年金、障害基礎年金のいずれも受けないままに亡くなったとき、生計を同一にしていた遺族に支給される一時金です。
なお、亡くなってから2年以内に手続きをしなければ、受給できなくなります。
①受給対象者とその優先順位
死亡一時金は、亡くなった方によって生計を一にしていた次の遺族の中で優先順位の高い方に支給されます。
ただし、遺族が遺族基礎年金の支給を受けられるときは支給されません。
②死亡一時金の支給額
死亡一時金の額は、保険料を納めた月数に応じて、12万円~32万円です。
また、付加保険料を納めた月数が36月以上ある場合は、8,500円が加算されます。
(3)寡婦年金と死亡一時金のまとめ
寡婦年金や死亡一時金は、生計を一にする夫や家族が亡くなったときに、その妻や家族に支給されます。制度内容は似ていますが、それぞれの支給対象や支給額などは異なります。
また、寡婦年金と死亡一時金の併給はできません。
同一事由により寡婦年金と死亡一時金を受けることができる場合は、受給者の選択により、どちらか一方のみが支給されます。
4.遺族年金のまとめ
遺族年金は、国民年金または厚生年金に加入している人が亡くなった時、その人が生計を維持していた遺族に対して支払われる年金のことでした。
亡くなった方の年金保険の加入状況により支給される年金が異なります。
また、遺族基礎年金と遺族厚生年金では、受給対象も異なりますので注意しましょう。
5.さいごに
いかがでしたか?
家族を失ったとき、のこされた家族の生活を支える遺族年金。
ただし、年金加入者が亡くなったからといって自動的に遺族年金が給付されるというわけではなく、支給申請の手続きが必要です。
遺族年金の概要を大まかに知っておくだけでも、いざ手続きをするとなったときに、心に少し余裕ができるかもしれませんね。
なお、遺族年金の申請をする際は、お近くの年金事務所や日本年金機構が運営する「ねんきんダイヤル」にまずは相談するとよいですよ。
さて、今回で公的年金の給付についての解説はおしまいです。
こちらの記事で老齢年金、障害年金について解説しているので、合わせてご一読ください(^^♪
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