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【小説】宝塚のトップスターを好きになりました

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宝塚歌劇団に関するエッセイ風小説を書いています。 主人公が宝塚歌劇団のトップスターを好きになり、ファンとして活動していく中でさまざまな人たちと出会っていきます。 そして1ファ…
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#takarazuka

推しの退団ー宝塚トップスターとの別れー

推しの退団ー宝塚トップスターとの別れー

「椿さーーん!」
「いままでありがとうーーー」

キャーという悲鳴の向こうに、手を振りながら歩いてくる真っ白な人。
ファンクラブという鉄壁の人垣に守られながら、その人は最終地点まで向かっていく。

「椿さん!私たちはいつまでも忘れませんーーー!」
ファンクラブ幹部の号令とともに、朝から並んでいたファンクラブ会員がいっせいに叫ぶ。

「いままでありがとうございました」
彼女はそう大きくない声を発しな

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こうして宝塚沼にはまっていく

こうして宝塚沼にはまっていく

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全国ツアー 略して全ツ。
宝塚ファンの中ではこう呼ばれていた。

全国ツアーは年に数回、それぞれ組のもちまわりで行われている。
その年たまたま贔屓の組にあたれば、熱心なファンは全国どんなところでも参上する。

椿が所属する「虹組」はちょうどこれから全国ツアーに出るらしい。
そしてうれしいことに私の実家がある地域に行くそうだ。
これはちょっとした里帰りも兼ねて観劇にでもいっ

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全国ツアーが始まるー地方公演の醍醐味と憂鬱ー

全国ツアーが始まるー地方公演の醍醐味と憂鬱ー

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公演会場に到着し席に着くと、意外と狭いことに気づく。
全国ツアーで使用される会場は、地方によってかなりの差がある。

私の実家がある地方の会場は、それは大変古い建物だ。
もちろん座席もかなりの年季を感じる。
そしてこの座席の致命的なところが前が見にくいことである。

宝塚の劇場は座席の配置に工夫がされていて、よっぽど前のめりの人でもいないかぎり舞台を見渡すことができる。

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ファンクラブに入る決意

ファンクラブに入る決意

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全国ツアーでの「虹組」の演目はこんなストーリーだ。

逆境の中意思を貫き通す心優しき青年が、最後は愛する人と結ばれ死んでいく。

まさに王道の宝塚ラブストーリーだ。
逆境というのがまたそそる。

そもそもネタバレでも見ない限り、開幕してもストーリーは明かされない。
大筋だけはわかっているけど、なんとなく雰囲気で演目は楽しむものだ。

だからこそ最後死んでしまうのは想定外だ

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全国ツアーの入り待ち・出待ち

全国ツアーの入り待ち・出待ち

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運がよかった。

ファンクラブに入ろう、と決意した私にとってこの日は本当に運が良かった。

全国ツアーでファンクラブのテーブルを出していたスタッフは、西会のチームだったのだ。
西会は宝塚大劇場方面を仕切っている私設ファンクラブだ。
めったに行かない宝塚方面での入会申込書をもらうには今日がチャンス。

これで次の大劇場公演からファンクラブ活動に参加できる。
本当にラッキーだ

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