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せいかつの軌跡(34)

パート先で新しい仕事を任されることになった。

車で別の作業場まで移動し、作業着に着替えて手を消毒。従業員の指示に従い、材料を量って混ぜて焼き菓子を作る。

「○○はしないようにしてください。△△はやめてください。××はしないで。アレはダメ。それはダメ。」

以前働いていた飲食・食品製造の職場と較べると、「やってはいけないこと」などのルールが非常に多いように感じられ、それは美しい仕事の為の工夫であるらしかった。作業を始めて30分もすると息が苦しくなり、45分を過ぎる頃には頭痛が始まった。たぶん無理。この環境は、私にはものすごく向いていない。

心身の健康を優先し、従業員と所長に業務内容の変更を相談した。もう半分くらい早退して山に行きたい気分になっていたけれど、別の一人で行う仕事を依頼されたので、継続を選択した。自由度の高い場のほうが、私は息がしやすい。


翌朝、トモシの声で目が覚めた。

「どこに行く〜?何して、あそぶ?ダンプ?いいよ〜。」

誰もいないはずの方向に向かって、何か喋っている。見えない世界との交信か。邪魔をしたくない気持ちもあったけれど、好奇心の勝ち。何となく小声で、彼に尋ねた。

「トモシ、誰と話してるの?」

つぶらな瞳をキョロキョロ動かしながら、トモシが答えた。

「うーーんとね、、端っこ。毛布の、端っこ。」

なんと話し相手は、毛布の端っこだった。
コミュニケーション能力、高過ぎ。


どこに行く?話し相手は毛布くん
みんなトモダチ無敵の二歳

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