親族が亡くなった後、いつまでにどのような手続きが必要か
親などの親族が亡くなった後、遺族は、さまざまな手続きを行わなければなりません。
私の場合も、忙しい仕事の合間を縫って奔走しました。
同じ市役所でも手続きによって窓口が分かれていたり、年金は年金事務所だったりというように縦割り行政の複雑さに辟易しました。
そもそも何の手続きが必要なのか、それはどこに行けばよいのかがよくわかりません。
しかも、期限があるものもあり、なかなか時間が取れないなか、漏れなく間違いなく手続するのにたいへんな思いをしました。
死後の事務手続きは何が必要なのか。
相続の手続きは何が必要なのか。
それらはいつまでに行う必要があるのか。
概要だけでもあらかじめ知っておけば、そのときになってあわてなくてすむでしょう。
1 死後の事務手続き
死後の事務手続きは、故人が亡くなった後に行う必要のある手続きです。
(1)当日
①死亡診断書
医師が死亡診断書を作成してくれるので受け取ります。
原本は後述の死亡届といっしょに提出しますが、保険金請求などでも提出が必要となるので5部程度コピーを取っておきます。
②葬儀社の手配
病院などで亡くなった場合は、すみやかな遺体の引き取りと搬出を求められます。
葬儀社は、あらかじめ決めておいたほうがよいでしょう。
評判や信頼性、価格の妥当性、サービスの内容、スタッフの相性などを考慮して選んでおくと、後々スムーズに事が運びます。
事前相談もできるので、複数の葬儀社を比較したり、希望を伝えたりといったことも可能です。
(2)7日以内
①死亡届の提出
死亡の事実を知った日から7日以内に死亡届を提出する必要があります。
提出先は、つぎのいずれかの場所の市区町村の窓口です。
・亡くなった方の本籍地
・亡くなった場所の所在地
・届出をする人の住所地
必要書類は、死亡診断書、届出人の印鑑です。
②埋火葬許可証の交付申請
死亡届といっしょに市区町村の窓口へ提出すれば、その場で埋火葬許可証を発行してもらえます。名称は市区町村によって異なるようです。
埋火葬許可証がなければ火葬や埋葬ができません。火葬場や墓地管理者へ提出することになります。
死亡届を提出すれば、別途申請書なしに埋火葬許可証を発行してくれる市区町村もあります。
なお、①および②は、葬儀社が代行して提出してくれることもあります。
(3)14日以内(原則)
①健康保険の資格喪失手続き
故人の相続人などが被保険者資格喪失の届出を行う必要があります。
被保険者資格喪失の届出は、つぎのとおり各健康保険の窓口で行います。
・故人が組合健保の被保険者だった場合は、死亡した日から5日以内に勤務先を通して健保組合へ
・故人が協会けんぽの被保険者だった場合は、死亡した日から5日以内に協会けんぽ支部へ
・国民健康保険の被保険者だった場合は、死亡した日から14日以内に市区町村の窓口へ
なお、故人が後期高齢者医療制度の被保険者(原則75歳以上)の場合は、死亡届の提出により自動的に資格喪失となります。
②年金受給権者死亡届(報告書)の提出
故人の年金証書と死亡を証明する書類(戸籍抄本、住民票の除票など)とともに年金事務所または年金相談センターに提出します。
期限は、厚生年金は10日以内、国民年金は14日以内です。
なお、勤務者の場合は、会社が代行してくれるので勤務先に報告します。
(参考)つぎの請求についても5年以内に行うことができます。
㋐未支給年金の請求
亡くなった月分までの年金を、生計を同じくしていた遺族が受け取ることができます。
・故人がまだ受け取っていない年金
・亡くなった日より後に振込まれた年金
㋑遺族給付の請求
配偶者や子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹など、一定の条件を満たす遺族が遺族年金などを受け取ることができます。
③世帯主の変更
故人が世帯主だった場合、住所地の市区町村の窓口に世帯主変更届を提出します。
(4)期限はないがすみやかに
電気、ガス、水道、新聞、インターネット、携帯電話、クレジットカードなどの公共料金の契約を解約または名義変更します。
故人の口座から引き落としている場合は、口座凍結により支払いができなくなるケースもあるので注意が必要です。
2 相続の手続き
(1)相続開始後すみやかに
①遺言書の有無の確認
基本的に遺言書の内容にしたがって手続きすることになります。
自筆証書遺言の場合は、家庭裁判所で検認を受ける必要があります。
②相続人の確定
被相続人と相続人全員の戸籍・除籍謄本などを市区町村から取り寄せ、法定相続人を確定します。
被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍を取得する必要があります。
③相続財産の確定
預貯金、土地・建物、有価証券、生命保険金といった遺産をリストアップし、相続財産として何がいくらあるのかを確定します。
相続財産には、借入金などの負債も含まれます。
(2)3カ月以内
○相続放棄、限定承認の手続き
相続財産をいっさい相続しない相続放棄、あるいは負債を差し引いた相続財産がプラスなら相続するという限定承認をする場合です。
相続開始があったことを知った日から3カ月以内に手続きが必要です。
いずれの手続きもしなかった場合は、単純承認したものとみなされてすべての相続財産を相続します。
(3)4カ月以内
○被相続人の準確定申告
故人が個人事業を営んでいた場合や不動産収入がある場合などです。
死亡日までの所得について相続人が税務署へ確定申告をする必要があります。
相続開始があったことを知った日から4カ月以内に手続きが必要です。
(4)10カ月以内
○相続税の申告、納付
相続財産の相続人が税務署に申告し、相続税を納付する必要があります。
ただし、相続財産の相続税評価額が基礎控除額(3,000万円 + 600万円 ×法定相続人の数)を超える場合が対象となります。
期限は被相続人の死亡日の翌日から10カ月以内です。
遺産分割協議が成立していない場合は、法定相続分にもとづいて相続したものとして相続税を計算します。ただし、小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例や配偶者の税額の軽減の特例などが適用できなくなります。
遺産分割協議成立後に、修正申告または更正の請求をすることができます。
(5)1年以内
○遺留分侵害額請求
遺留分を侵害された場合は、相続の開始および遺留分を侵害することを知ったときから1年以内に請求する必要があります。
また、相続開始のときから10年を経過したときは時効となり請求できなくなります。
(6)3年以内
①生命保険金の請求
生命保険金の請求期限は被保険者の死亡後3年以内となります。
実際には3年経過しても保険会社が支払ってくれるケースが多いので、保険会社に相談するとよいでしょう。
②相続した不動産の名義変更
相続の開始およびその所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記(名義変更)をしなければなりません。2024年4月から義務化されました。
(7)期限はないがすみやかに
○遺産分割協議書
とくに期限はありませんが、遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成します。
だれがどの遺産をいくら相続するのかを相続人全員で合意した内容を書面にしたものです。
作成は義務ではありませんが、不動産の名義変更や預貯金口座の解約などの場合、あったほうがスムーズに手続きが進みます。後々の相続人間のトラブルの防止にもなります。
遺産相続の手続きで不安があれば、弁護士や税理士、司法書士、ファイナンシャル・プランナーなどの専門家に早めに相談しましょう。
人が亡くなった後の手続きは数多くあります。期限を守り、スムーズに進めることが重要です。