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眠れない夜たち
睡眠導入剤がないと眠れない。睡眠導入剤によって眠れているのか、睡眠導入剤を飲んだという安心感で眠れているのか、わからないが。
睡眠恐怖症という言葉など聞いたこともないが、そんな恐怖症があるのだとすると、私はこれかもしれない。眠りに堕ちていく瞬間が怖い。叶うならば、私が眠りにつくまでの間まで、胸を貸してくれる男性がいればいいのに、と思う。私が安心して眠りに堕ちてゆけるように。
さあ、寝るぞ!と電気を消すと気合いが入ってしまって眠れない。眠りって本来生理現象なので、体と心が眠りを欲するから眠りに付けるのだと思うが、私の場合「さあ、寝るわよ私」って感じで気合いが入ってしまう。そうすると私は「はい」と返事して、覚醒してしまう。
いまほど深刻ではなかったと思うが、寝るのが惜しいというか、寝たくないというのは昔からだ。その理由を考えてみたこともあったが、寝て明日が来るのが嫌だとか、今日という日を終わらせたくないとか、そんなところか。うまく分析できない。そして最近は、眠りに堕ちる瞬間を迎えるのが怖くてたまらない。
もともと夜型人間なのと、完全在宅ワークで、一週間軟禁状態で一日中PCに向かっている生活もかなり影響している。布団に入ると(入っても?)脳内の高速回転が止まらない。目をつぶっても仕事の段取り、明日朝一でメールしなきゃいけないこと、今日の出来事、今日の後悔、今日のむかつき、今度ああいわれたらこう言い返そう、過去の恋愛のワンシーン、今の恋愛の悩み、将来の不安、自分とは、髪を切るか伸ばすか、髪を染めるか黒でいくか、今食べたいものを明日食べるかどうか…ぐるぐるぐるぐる…コラージュのように次から次、思考がシャッフルされたり回転したり出たり消えたり…忙しい。眠れない。電気をつける。やっぱり消す。クーラーを切ったりつけたり。寝返りを打つ。シャツを脱いでみる。眠れない。
気持ち良い眠りってどんなだったかを思い出す。ほらあれ、子供の頃。大人たちが雑談している、何の話をしているかわからない、その会話をBGMに眠りに落ちたあの気持ちの良さ。または。高校の英語のグラマーの授業。お昼休みの後の授業。寝ても怒らない先生がいた。あの授業ではクラスの半分ぐらいの生徒が机に突っ伏して寝ていた。あの先生の顔を見ると睡魔のスイッチが入るみたいだった。堂々とは眠れない、でも半分許されているような、諦められているような、そんな雰囲気の中で眠りに堕ちていった。または。昨年無職で、しかも鬱がひどかったとき。とにかく横になってなきゃ息をするのもしんどかったあのとき。ベッドの沼に沈み込んでただただ眠りに逃げたあの日々。あの感じ。重い心と体がベッドに沈んでいく。暗闇に逃げていくみたいな感じ。
…そんなふうに眠りに堕ちていく感覚を思い出してみても…やっぱり眠れないのだった。
10月、今年の冬にお世話になった心療内科をもう一度訪ねることにした。今度は鬱ではなく、眠れない相談に行く。私のかかっている心療内科の先生を信頼しているわけでは全くない。どちらかと言えば苦手な部類の人かもしれない。人間的なあたたかみもないし、私がにわか知識で何か質問するとそれがおもしろくないのか、ばっさりと否定する。そのくせ私がひるまないとみると、妙に怯えた表情をする。こんな人とは心を交わすことはできない。なので、私は薬で苦しさが軽くなるのであればそれでいいと割り切った。鬱に関して、この心療内科で医師との心の疎通で楽になることは、きっぱり諦めたのである。
この心療内科では睡眠障害についても相談可能とウェブサイトにあったので、別のどこかにかかるより、一度かかったことのある同じクリニックでいいやと思っただけである。薬がないと眠れない、いわゆる依存状態になっている気がするので、薬を使いながらも断薬していきたいことを相談してみようと思う。彼は心のスペシャリストではないかもしれないけれど、薬のスペシャリストなのだから。
眠りにつくのが難しいだけで、一度眠りについてしまうと二度と起きない自信がある。週末は夕方くらいまでだって、二度寝、三度寝を繰り返すことができる。どれだけ寝ても寝足りない。私の問題は「寝付きの悪さ」だ。
そこにきて、やっと寝付けそうなときに霊障がいたずらする。私の部屋には地縛霊がいて、13歳の頃からの長い付き合いなのだ。今では恐怖よりも、ただただうっとおしい。寝ようとする私にかまうなという怒りだけだ。身体中に電流を流されたような金縛りが続き、気づくと朝の4時になっていたりする。フラフラでベッドから出て睡眠導入剤を舌にすべりこませて眠りにつく。私の気持ちが弱っている時も、そうでないときもこれは起こる。私が眠りにつくのが怖い理由のひとつに、このこともある。
この話をするのはかなり人を選ぶ。目に見えない世界のことを信じられない人も多いし、それは当然だし、私はこういった話題を積極的にしない。我が家は家系的に霊感が強い。これは母親の家系譲りの遺伝だ。父親はこういった類の話をまったく信じないし、嫌悪すら感じているタイプだ。霊とかUFOとか前世とか来世とか、そういった話題が大嫌いで、頭の悪い人間がする話だと思っているからだ。だからこういった話は母親にしか相談しない。
それでも私が毎晩のように身体に電流を流されて眠れないのは事実なのだ。これがただの妄想だったり虚言だったとしたら、それこそ心療内科の分野にお世話にならなければならない。
家に憑いている地縛霊の話は、以前の記事でもいつか書くと言った覚えがあるのだが、これを記事にしてしまう怖さがある。それに、うちの父みたいな、こういった話題が嫌いな人も多いだろうし、理解されなかったら恥ずかしいという気持ちがあって、なかなか書く気が起きないのである。
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