友達が労働マルチに吸収されて思うこと
「労働マルチ」という言葉を聞いたことはありますか?
「マルチ商法」「ネットワークビシネス」と同列で話されることも多く、いわゆる「労働力をマルチ商法的に搾取していく構造」のことを言います。
一般的には、「夢」「起業」「独立」といった甘い言葉で求人を行い、度を超えた労働時間・社内教育などを行い、労働力を搾取していくというものです。
誰がそんな場所で働きたいのか…?と疑問に感じるかもしれませんが、若者や社会経験の少ない人(主婦なども含む)をターゲットに、労働マルチ会社・組織はいたるところに潜んでいます。
さて、実は去年、私の長年の友人が「労働マルチ」に吸収されてしまいました。
このことについて、彼女に何か意見を言うべきか、それとも見守るべきか…ずっと悩んできましたが、文章にすることで一度自分の思考を整理したいと思います。
今回は、私と同じように身近な大切な人が不当な搾取構造やブラック企業に沈んでしまった方、就職や転職を考えている組織に「何か違和感がある…けど、なんだろう?」と言語化できない方に向けて、労働マルチの実態と向き合い方についてまとめてみました。
これ以上、若い時の「時間」という貴重な財産を搾取されてしまう人が増えないよう、もし周りの家族や友人に当てはまることがあれば、この記事をシェアいていただけると嬉しいです。
そもそも「労働マルチ」とは?
「労働マルチ」とは、マルチ商法のようにお金や人脈を吸収するのではなく、求人募集をかけて人を集め、労働力を吸い取るというものです。
INDEEDなどの掲載料不要の求人サイトで見かけることが多く、求人文言には
起業したいあなたを応援!
学歴不問、月収100万円も可!
金髪、タトゥー、ネイルOK!
夢を叶える会社です!
などと言った、魅力的な文言が並んでいます。
雇用形態は「アルバイト=固定給ありだけどインセンティブなし」「業務委託=固定給なしだけど、収入の上限なし!✨」という二択から選べることが多く、説明会等で後者「業務委託」の魅力をプレゼンされた若者は大抵こちらを選びます。
そして、会社の謳う「頑張ったらビジネスオーナー、社長になれる!お金持ちになれるよ!」という夢のような言葉により、妄信的に労働力を組織に提供することになります。
無知な若者を集め、「研修」「教育」などのセミナーが毎朝、夜に開かれ、社内ルールに従うように教育されます。こうして、「社会とはこういうものだ」「この組織にいることで、成功できる!」と組織に定着させていくわけです。
(労働マルチの定義・実態については、ビジネスジャーナルでもっと詳しく綺麗に言語化されていますので、気になる方はぜひ。)
労働マルチは違法なのか?
結論、今の労働基準法の元では、労働マルチは「違法寄りの、ギリ合法」です。
労働マルチ会社の雇用形態は「業務委託」というをとります。
これは「正社員」「アルバイト」というように「会社に雇われる『労働者』」ではなく、「事業主として会社の業務を引き受ける『事業者』」という扱いとなります。
だからなんなの?と思った方は、こちらの図をみてください。
アルバイトや正社員と業務委託の大きな違いは、「会社に雇用されているか・否か」という点。
会社に雇用された労働者であるアルバイトは、「労働基準法」により、最低賃金や労働時間が定められています。最低賃金を下回る給与で働かされたり、長すぎる労働時間は「違法」となるわけです。
しかし、業務委託となると話は別。
フリーランスのエンジニアやデザイナーのように、「事業者=成果物を提供することで報酬を得る」という働き方のため、労働基準法によるルールは適用されません。
つまり、「どんなに長時間労働をしようが」「どんなに低賃金労働になろうが」違法ではないのです。
ひとつだけ、唯一「違法寄り」と表現できるのは、上の表の「指揮命令」にあたる箇所。
アルバイトや正社員の場合、「出勤時間の縛り」「ミーティング参加への義務」など、会社からの司令を受けて動くことは法律上OKとなります。
しかし、業務委託の場合「出勤時間を指定する」「ミーティングへの参加を義務化する」「会社からの司令で社員教育をする」と言った、司令に基づく行動は全てNG。
そこで、会社側は「あくまでも個人の判断」ということにするために、「自主参加」と謳いますが、実際に「参加しないと昇進できないよ」などと言われると「不参加」という選択はできませんよね。
こちらがマルチ労働の「違法性」が垣間見える部分になります。
会社が「ギリギリ合法」なラインを狙っているというあたりも、かなりグレーな匂いがしますよね。
「マルチ労働をどう捉えるべきか」という話
ここまで読んで、「マルチ労働の構造や、グレー要素はわかったけど、結局良いの?悪いの?」とモヤモヤした感想を持った方も多いかもしれません。
じつは私もその一人で、「マルチ労働をどう捉えるべきか」に葛藤していました。
ここ数ヶ月で考え、私なりに行き着いた見解は
労働マルチ=「若者の貴重な時間・思考・アイデンティティを奪ってしまう、悲しい構造」
であるということ。
組織は洗脳のプロなので、若者の意識を「組織の都合の良いように」染め上げていきます。それはグラデーションのように滑らかに行われていくので、多くの人はその「違和感」を通り過ぎてしまいます。
そうして、自分や、自分の下につく人たちが組織の利益のため、「養分」となっていくのです。
もちろん、組織の中でがんばって結果を出せば、昇進し、自分の利益を増やすこともできます。努力をして結果を出すこと、それ自体は素晴らしいことですね。
ですが、それは「新たな養分を育て、自分がその利益を吸収する」という結果だということをお忘れなく。
営業マルチに入った人の体験談👇
まとめ:労働マルチと「時間」の重要性について
今回は、労働マルチの実態・構造についてをまとめて書いてみました。
マルチ商法とは違って「自分のお金を失うわけではない」ことで、その不当性がかなり分かりにくい労働マルチ。ですが、あなたの時間・労働力は有限であり、貴重な資産です。
お金は失ってもまた稼ぐことができる。でも、時間は二度と戻ってきません。
人生の大切な時間を、簡単に開け渡さない。そして、もっと素敵な何かに使えると良いですね。
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