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桜もちるに歎き、月はかぎりありて入佐山。

美術館が好きだ。
印象派が好きだ。油絵が好きだ。
一番好きな絵画はゴッホの『星月夜』
好きな画家はモネ、ドガ、ミュシャ、ルーベンス。
この前はメトロポリタン美術館展で、エル・グレコの絵を初めて鑑賞したり。
ずっと観たかったフェルメールの絵に出会えたり。フェルメールブルーと言われている美しい青を間近で観られて感動したり。
とても満たされた。
しかしわたしは、気づいてしまった。

あれ、もしかしてわたし西洋絵画の展覧会しか行ったことない?
日本画には興味なかった?


今まで西洋画の展覧会にしか行ったことがないと、やっと気がついた。
冒頭に挙げたものも西洋画関連のものばかりだ。
元々知的好奇心が旺盛すぎるわたしが日本画にも触れたいと思うのに時間はかからなかった。
偶然にも次の日は原宿方面に予定があったので、太田記念美術館に行くことも追加した。

太田記念美術館は渋谷区にある浮世絵専門の美術館だ。
常設展示はなく、企画展示で構成されている。わたしが行った時は "信じるココロ 信仰・迷信・噂話" というテーマの展示だった。

浮世絵を鑑賞するのはこの日が初めてだ。浮世絵についての知識は大体の時代、代表的な人物や作品、完成するまでの大まかな流れくらいしか持ち合わせていなかった。
事前に勉強して行けば良かったのかもしれない。だけど、前日の夜に突然決めた予定だから仕方がない。


未知の世界に飛び込む時ってわくわくする。
きっと、どのジャンルにおいても同じなのだろう。
チケットを購入し、そわそわしながら足を踏み入れ、最初の作品と出会った瞬間。初めて西洋画を鑑賞した時とは全然違う感動を覚えた。

木版でこんな繊細な表現ができるのか。
こんな綺麗なグラデーションができるのか。
こんなに生き生きと描けるのか。
「火事と喧嘩は江戸の華」
…そんな言葉が脳裏をよぎる。
江戸の喧騒が本当に聞こえてきそう。
わたしの拙い語彙ではこのときの感動を表現しきれないのがもどかしい。

メモをとって鑑賞したいと思ったが、鉛筆を忘れてしまったわたしは受付の方にダメもとで鉛筆を借りられないか聞きに行った。

「あっ鉛筆ってお借りできますか……?(ニチャア)」

こう尋ねたわたしに、がさごそと鉛筆を探してくれてよくアンケートについている、むしろそこ以外で見たことのない鉛筆(?)を貸してくれ、

「持ち帰っていただいて大丈夫です。」と言ってくれた。え、聖母?マリア様??

こうして鉛筆(?)を手に入れたわたしはなんでもノートにメモをとりながら鑑賞した。

作品を観ながら思いついたことや疑問に思ったことをすぐにメモできて、ほくほくした。たとえば、歌川国芳の浮世絵には既に吹き出しっぽいものがあるが、いつから吹き出しはあるんだろう、とか。
涙が赤色で表現されているのはどうしてだろう、とか。
しゃぼん玉はいつからあったのだろう、とか。
また知りたいことがたくさん増えてしまった。

広くはない館内だったが1時間以上かけてゆっくり回った。ノートは5ページも使った。

わたしは美術館に行ったら必ずポストカードを購入している。その展覧会で好きだと感じたものを、とくに良いと思ったものを2、3枚選んでいる。

この日も例外なくポストカードを買って帰った。わたしのポストカードコレクションの中に日本画が加わって嬉しいな。

今まで鑑賞してこなかった浮世絵だが、浮世絵が西洋画に与えた影響は大きい。
ポスト印象派で『ひまわり』や、わたしの大好きな『星月夜』を描いたゴッホは浮世絵の熱心なコレクターだった。彼は『タンギー爺さん』という作品で、浮世絵を背景として描き、浮世絵の模写までした。
浮世絵の模写には漢字も書かれている。辿々しい漢字を見ると、どうしてもゴッホに対して可愛らしいな、と思ってしまう。


浮世絵の奥の深さを知ることができた1日だった。充実した1日だった。
これまで触れてこなかったことがちょっぴり悔しくなるくらい。
前の日、急に太田記念美術館に行くことを決めたわたしを全力で褒め称えたい。スタンディングオベーションものだ。
浮世絵の他にも水墨画などの日本美術が楽しめる場所にも、もっと足を運びたい。
そんなことを思った1日だった。


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