141.詩| 僕のかけら


そっとずっとだまっていれば
君はそばにいてくれるのだろうか
どこにもいかずに、このままそばにいられるのだろうか
もし僕がなにもしなければ

だれかが好きだと言ってくれた自分を
冷凍保存してしまいたい
そのままの鮮度で
君が好きだと言ってくれたままの僕でいられたらいい

それでも僕は動きだす
世界には求めるものがありすぎて
毎日目が覚めたらまぶしくて
手をのばさずにはいられない
手をのばしてなにかに触れてしまえばもう

そのままの僕ではいられないのに
君が好きになってくれた僕でいたいのに
日は上り
日は沈み
雨が降って
また日が差して
洗濯物がからっと乾いて 氷はじゃんじゃん溶けていく
この夏の空の下で
毎朝 僕は変わっていくから

ごめんねって思うんだ
せっかく好きになってくれたのに
毎日君の望む僕でいたいんだ ほんとだよ

それなのに 変わっていってしまう
君が好きになってくれた僕は 誰だったのだろう

変わってしまう僕ら
変わりつづけてしまう僕ら
ただ好きあっていることが こんなにもむつかしい僕ら

あの日 君が好きになってくれた僕のかけらを探してみる
僕の中に たしかに ちいさく しずかに
僕の中にあったもの

さようなら もう行くね
ありがとう 元気で
忘れるかな
忘れないよ

僕が君を思い出したときは、君が僕を思い出したときなんだって

そう思ってさ 生きていればいいんじゃない