流浪の月
小説がすごく好きで、ずっと見ようと思ってた｢流浪の月｣をようやく鑑賞できました！
あらすじ
2020年本屋大賞を受賞した凪良ゆうのベストセラー小説を、「怒り」の李相日監督が広瀬すずと松坂桃李の主演で映画化。ある日の夕方、雨の公園でびしょ濡れになっていた10歳の少女・家内更紗に、19歳の大学生・佐伯文が傘をさしかける。伯母に引き取られて暮らす更紗は家に帰りたがらず、文は彼女を自宅に連れて帰る。更紗はそのまま2カ月を文の部屋で過ごし、やがて文は更紗を誘拐した罪で逮捕される。“被害女児”とその“加害者”という烙印を背負って生きることとなった更紗と文は、事件から15年後に再会するが……。更紗の現在の恋人・中瀬亮を横浜流星、心の傷を抱える文に寄り添う看護師・谷あゆみを多部未華子が演じる。「パラサイト 半地下の家族」のホン・ギョンピョが撮影監督を担当。
感想
言葉にしたら感情が上書きされてしまいそう。それくらい儚い残酷な物語だった。広瀬すずさんと松坂桃李さんの圧倒的な演技力は言わずもがな。
映画化について
もともと、小説を読んでいたので観る前は｢文が松坂桃李さんかな、？｣とか思っていたけど、線の細さが私の想像していた文で、｢あ！これ！文だ、、｣となった。それに、文と子供の頃の更紗の暮らしのシーン。画面から想像していたままの温度で映像化されていて、二人だけの世界というのが伝わってきてとても良かった。細かいけどマンションの部屋の造りとか想像していたままで、｢さすがの世界観、、｣と唸った。
記憶に残ったシーン、台詞
まずは、湖でのシーン。更紗の手を強く握る文に自然と涙がこぼれた。切なくて、でもふたりの関係性を、絆を、語るには充分なシーンだった。
更紗は更紗だけのものだ
誰にも好きにさせちゃいけない
この言葉もすごく印象に残ってる。きっと、更紗はこの言葉だけを頼りに、救いにして生きてきたんだろうな。文の何も聞かない優しさが更紗には心地良かったんだと思う。口数は少ないけど誰よりも優しい文。彼女さんと別れるシーンもきっとわざとああいう風に言ったんだろうな、と思った。
それから、15年の時を経て文が警察に連れていかれるシーン。文が語気を荒げたのはあの時だけじゃないかな。自分の大切なものを精一杯守ろうとした文の強さがひしひしと伝わった。もう二度と渡さないって決意が伝わった。更紗の時とは違う文の力いっぱいの抵抗がやるせなかった。ただほっといて欲しいだけなのに、人と違うだけなのに。文も更紗もそれを願ってるのにほっといてくれないのが世間。
あと、文と更紗が子供の頃の二人のシーン。セリフは少ないけれど、だからこそ二人の関係性がよく伝わるシーンだったと思う。
感想
「人は見たいようにしか見ない」
これは文とアヒルボートを漕いでる時に更紗が言った台詞。その通りだ。普通という固定観念が怖いと思った。普通って何だろう、と。
きっと私だってニュースだけを目にしたら、｢ロリコン、キモっ｣って思う。でも、よく分からないけど、キモいじゃないのかなと思った。キモいんじゃなくて知らないから、怖い。ロリコンは普通じゃないって知識が意識の前提にあるから。自分とは違うから。(しかも実際、文はロリコンでは無い)
私は文の孤独を全部分かりきることも想像することも出来ないけど、人と違うことがどれだけ怖いことか、孤独なことかは想像できる。どうか、誰からも見つからないようにふたりだけの世界で幸せに生きていって欲しい。
原作を読了後にも映画鑑賞後にも感じたことだけど、二人の恋でもなくて友情でもない、愛に近いけど名称のない関係性が美しいなと感じた。