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風の時代、クリエイティブの”やる気セルフタイマー”

村上春樹さんの デビュー作 ”風の歌を聴け”↑に、”The Birth Of My Kitchen-Table Fiction(キッチンテーブル小説の誕生)” という素敵な序文(?)が載っていました。(日本ver.英語訳↓に入っているかは不明)

小説家としてデビューなさる前、神宮球場での観戦中のこと。ヒットが打たれた瞬間、何の脈絡もなく創作の天啓が降ってきたそう。

In that instant, for no reason and based on no grounds whatsoever, it suddenly struck:

Introduction of ”Hear The Wind Sing”

今日は、私こと作曲ピアニストのmintが、作曲のモチベーションをお話ししてみようと思います。

残念ながら、”風の歌を聴け”みたいな神がかりな話では当然ありません。最初のきっかけは高校生時代、音楽の授業で。

担当のシスターOから、宿題に「曲を作ってくること」が出ました。作曲なんてしたことはなかった、遅咲きのmint。仕方なく、テキトーに作った弦楽四重奏の楽譜を提出しました。

すると次の週の授業で、シスターがいきなり私の曲を、達者なピアノで披露なさったんです。mintはびっくり。

シスターにはベタ褒めされ、授業後にはみんなから「いい曲ねぇ」「ベートーヴェンみたい」などと声をかけられました。

これでやる気が出ればよかったんですが、ぜんぜんで。モチベーション「あるある」じゃありませんか?

で、次は高2の夏休み。カリフォルニアの姉妹校での英語研修ツアーに参加した時です。最終日に開かれるお別れパーティーに向けて、グループ別に出し物を用意することになりました。

mintの班は自作劇に決まり、本当は目立つ役で出演したかったmintは、脚本と音楽担当を振られてしまいました。仕方なく、効果音を含む全編のピアノBGMとともに、英詞つき主題歌も作ることに。

幸いメンバーは結束し、「JAPAN版シンデレラ」が出来上がりました。パーティーの本番後には姉妹校のシスター・先生方から涙ながらに握手を求められたり、周辺住民の皆さまにも熱狂していただけて。

これでやる気が出ればよかったんですが(またですか)。

高2の終わり、卒業生を送る校内イベントの企画チームから、アメリカで演ったシンデレラの曲を使わせてほしいと打診が。

本番には、クラス全員で私の曲を歌いました。その後カフェテリアで行われた謝恩パーティーでは、知らない上級生からまで次々声をかけられて。人生最初で最後のレッドカーペット体験でしたね。

以上が、「作曲家って、いいかも」とmintが思った動機です。

このように、自分の創作物(料理、工作、イラストなど何でも)が思いがけず喜ばれる経験て、誰しもあるでしょう。ただそれが天啓とまでは感じられないことも、mintのようにありがち。 

すんなり「やる気スイッチON」とは行かないと思うんです。

とくにmintが若いころは、まだまだ「男性生涯雇用」「専業主婦」が普通の時代。クリエイティブなんて、道楽に思われ易かったです。

風の時代になり、多様性が言われる昨今といえども、安定を求めるのは人の本能のよう。ただ、副業規定が緩くなったり、ネットでの発表の場も広がり、様々なライフスタイルの可能性は拓かれています。

だから、内なる”風の歌“に聴き耳をたてれば、”やる気タイマー”はONになるのではないでしょうか?――で終わるのも、なんか綺麗ごとみたいなので……。

もう一つ、創作自体のモチベーションについても、経験を書いておきますね。

これがやっぱり、「上司からの強制リクエストで」とか、「DTM講座の宿題で」みたいな、仕方なくの動機で作り始めることばかりでした。 

なので、やるしかない状況に自分を置いてみるのも、”やる気セルフタイマー”として有りかも。

締め切り日などでタイマーが作動。で取りかかりさえすれば、アイディアって芋づる式に出てくるもの。「ヒラメキ」と言ってもいいかもしれません。

それでも村上春樹さんではないので、ヒラメかないこともままあります。そんな時にも、不思議と「強制終了」がかかるんです。これは保証します。

例えば、高名なI先生に作曲を習っていたとき。「あと5分で家を出ないと、レッスンに遅れるっ」というのに、「サビができてない!!」

「もう、何でもいいから入力するっきゃない!」と、作譜ソフトFinaleにめちゃくちゃを打ち込み、プリントしてる間に服装と持ち物を整え、プリンターから出てきた楽譜を引っ掴んで猛ダッシュ!

ところが、(内心)「あれっ?!」レッスン室で先生がピアノで弾いてくださるのを聴いたら、(内心)「いいじゃん、コレ!」

こんなことは結構あります。度々引用させていただいているmintのバイブルにも、それを裏付ける記述が。(歴代No.1ヒットメイカーの音楽プロデューサー著)

レコーディング・スケジュールはたいてい予定通りに進まないが、最後は必ず予定通りに終わる。

The Creative Act

つまりクリエイティブって、始めさえすればなんとかなる性質があるよう。

ここで、mintにも(たぶん誰にも)「たまにはインスピレーションが降ってくることはある」という例も。(鼻歌とあなどるなかれ)

10年前、アメリカで音楽がやりたくてニューヨークに来たばかりの頃のこと。近所を散歩中に、空から曲が「降って」きたんです。

「うわっ、忘れてはタイヘン!」と、バカみたいにメロディを繰り返し歌いながら帰りました。部屋に駆け込み、(Macのシーケンサーを立ちあげる間に忘れそうなので)キーボードの演奏録音機能を使って一気に録音。

それがこの “Longing For New York”↓。NYが教えてくれた、アメリカでの初作品です。

最後に。

ここまでお読みくださったあなたのクリエイティブが、心地よい風をキャッチして「ハッピーエンド」となりますよう、願いを込めて……。大好きな “風をあつめて”を貼りますね。(はっぴいえんどさんの名曲、矢野顕子さんのキュートな弾き語りバージョンで)

冒頭の写真はmintのKitchen-table。アメリカ版”風の歌を聴け”は、”Pinball, 1973(1973年のピンボール)”とバンドルです。

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