ラブミー マイルーム 【短編小説】扉③
となりの扉③
ガチャガチャ、
その音がすると、突然周りが明るくなる。
いつもの決まり。
ほどなくして、私のお部屋の前に大きな影がのぞき込む。
けど、この影は平気。
いつも私のお家をのぞき込んでいくだけ。
私もなんだか楽しくて、
最近は待ってる時もある。
だって、この影は美味しいのものくれるから。
私の好きなものは甘くて大きい、真っ赤な色の食べ物。
サクサクしてるけど、美味しくて、私は大好きなの。
「いくらは、本当に苺のおやつが好きだな」
前にいる大きな影が、そんなことを言う。
こんな幸せな時間はないわ!
半分食べ終わるとお腹がいっぱいなってきた。
あとは明日のために枕の横に隠しておこうかな?
隠しとくって大事。
いつ何があるかわからないし、
とにかく私はなんだか毎日胸騒ぎがするから、この美味しい食べ物を隠しておくことにするの。
次の日のことだった。
いつも同じ時間、
いつもと同じガチャガチャ音、
いつもと違うふたつめの影。
私は不審に思いベットから起き上がることができなかった。
何??
今までこんなことなかった。
「いくらちゃん出てこないよ?」
いつもより高い音域。
何かが違う。気配で感じる。
「あんまりのぞき込まないでくれ、怖がってるのかもしれない」
いつもの声が聞こえる。
「しばらくそっとしといてくれ、あとで様子みとくから」
部屋の明かりが少し暗くなる。
わからない、なんだろ?
とりあえず、昨日の苺を食べれるうちに食べておこう。
何かあったら、ここから動かなきゃいけないかもしれないし。
そう思いながら、
ふわふわの布団に眠気を誘われていく。
明日はがんばらなきゃ。
がんばって、がんばって、
気持ちだけが焦って走り続けた。
わかってる、この回転する車は別の場所にはたどりつかないって。
どれだけ走って、休憩して、それでも走って、
だけど、いつも決まって、同じところに戻ってしまう。
安心だけど、少し退屈。
今日もふかふかの枕に埋もれて眠っていると、
声がした。
「いくら、ご飯だよ」
それを合図にするように、
上からご飯が現れる。
大きな手に揺られて、
ご飯が現れる。
私は待ちきれなくて、枕を捨てて二本立ちになる。
あー、だから、
私はこの部屋が大好きなんだ。
ちょっと退屈でも、ふかふかなこの部屋で埋もれていたい。
sub title ハムスターいくらの幸せな苺
🔚
そらいろのmintからアピール!
連作になってます。
前作です↓
1話完結でそれぞれの視点と
それぞれの立場からみた悩みや思考を表現してます。
今回はハムスターいくらちゃん。
最初に部屋に置きっぱなしのクリスマスツリーを思い出した時に、
これは動物目線とか挟みたい!と思って書き上げました。
↑1話目です。
ここからキーワードだけでつなげていく短編小説を楽しんでほしいです。
ちなみに、
ちょいちょい廃人になる私の部屋にも
常設クリスマスツリーあります。
たいしたものじゃないけど、
疲れてたら、あるある。
を楽しんでください。
他人の視線をどれだけみてくか、
考えを固定しすぎないか?
は、占いをしていても、人と一緒にいても、
とても大事だなと思うので、
そんな気持ちをこめて、
くるくる回る視点を楽しんでいただけたら
うれしいです!
続きです↓ いくらの飼い主さんのお話