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文章の腕をみがきたいと思ったら読む本

早大院生と考えた文章がうまくなる13の秘訣
著者:近藤勝重 幻冬社 


数年ぶりにブログを再開し今は「書くことリハビリ中」の身。
本棚の奥で眠っていたこの本のことを思い出し再読した。

それにしても私の記憶力の残念なこと。正直、本の内容はほぼ覚えていなかった。とはいえ、そのおかげで気分新たに読むことができたので、新鮮な気づきがあったことは収穫。
せっかくなので備忘も兼ねて、その収穫を簡単にまとめてみたい。


1. 「物」に気持ちを託すこと

これは映像表現でも使う技。

言葉で直接的に表現するよりも、「物」を使って事象を表現することでより多くが伝わる。読者は想像力を掻き立てられ共感しやすくなるからだ。

「クリスマス たった一つのグラスかな」(本文より)と表現することによって、「クリスマスに一人で寂しい」ということが、より深みを持って伝わるという風に。


2. 小さな不幸の先に共感を用意する

物語を作る上での常套手段。

たとえば、完璧な人が自身の曇りない人生を文章にした場合、読み手から「すごい人」と思われることはあっても共感はされにくい。

多くの人は失敗や挫折を繰り返して成長していく。なので、失敗などに代表される不幸が先に語られた上で共感を用意すれば、読み手は自分に引き寄せて読むことができる。それによって親しみが湧き、共感がより深いものになる。

でも、ここでのポイントはあくまで「小さな不幸」というところなのだと思う。
あまりに壮絶な不幸では、共感を通り越して別のものになってしまうし、読み手は自分に引き寄せにくくなる。だからこそ「小さな不幸」の先の共感が大切。

3. 説明をしない

たとえば、「うれしい」「寂しい」という直接的言葉を使わない。
「うれしかった」と表現してもそれ以上でも以下でもない。
直接的な言葉は説明的で深みに欠けるのだ。

俳優で言えば「演じない事で演じる」に通ずる。
また、切実に心情を吐露する必要はない。
伝え過ぎはかえって伝わらない。

このあたりは文章表現のみならず、あらゆる表現に当てはまる。
伝えたいことがあるとついつい書き過ぎてしまうものだが、描写すべきとすべきでないことの区分けは大切だ。


4. 文章の上達はカラオケの上達方法とよく似ている

著者は「カラオケのうまい人というのは、ちゃんと聞き手の反応に気を配っている」と、清水義範著「大人のための文章教室」の文章を引き合いに出して説明する。

確かにそうだ。
カラオケではソロカラオケでもない限り、自分の歌を聞くオーディエンスがいる。
できることなら気持ちよく聞いてもらいたいし、自分も上手に歌いたいと考える。だから場数を踏んで練習し歌に磨きをかける。

一方で、ストレス発散や自己満足で歌う場合の優先順位は、自分が気持ちよく歌うこと。が、たいていの聞き手は聞いていないか、あるいは早く終わらないかと思っている。

文章も同じだ。読み手を意識して文章を書かなければ伝わらない。
それどころか、伝らない以前に読み手を得ることすらできない。歌はその場にいる以上、耳を塞がない限り聞こえてしまうが、文章は読みたくなければわざわざ文字を追う必要すらないのだから。

ともあれ、カラオケと文章の上達方法の重要な共通点は、聞き手や読み手を意識すること。


5. どれだけ削れるか

私がこの本を読んで特に肝に命じたのがこれ。

・いらない接続詞と副詞を削る
・段落は多く、読点は少なく
・言葉の重複と文末への気配り
・「ので」「だから〜」「〜が」でつながない



以下に上記の「ので」「だから〜」「〜が」でつながない の例を本文から引用する。(小学生の文章だそうです)

【「ので」「だから〜」でつないだ例文】
ぼくは夕ごはんのとき、おかずをこぼしたので、父に「よそ見をしているからだ」と叱られた。それをきいていた弟も「そうだそうだ」と言ったが、それから数分後には父もおかずをこぼしたものだから、家中「シーン」となった。
「ので」「だから〜」など接続詞や言葉を削った例文】
ぼくは夕ごはんのとき
おかずをこぼした
父に「よそ見をしているからだ」と叱られた。
弟も「そうだ」といった。
それから数分後
父もおかずをこぼした。
家中「シーン」となった。

確かにスッキリする。
特に、接続詞は文章の転換に便利なので多用しがちだが、冗長になるだけでなく、なにより読みにくい。

ところで、文章の推敲は削るか加えるかのどちらか。
著者は「削る派」だそうだ。

確かに表現行為はいかに削れるかによってクオリティが決まると感じる。
「3.説明をしない」の章とも通づるが、表現したいことを表現し過ぎないこと、そして無駄を削ることの大切さを改めて知った。

早大院生と考えた文章がうまくなる13の秘訣 著者:近藤勝重 幻冬社 

(day12)




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