【読書エッセイ】読書週間に読む『この世の喜びよ』
毎年10月27日から11月9日(文化の日を挟んで2週間)は『読書週間』だそうだ。
本屋さんで素敵なデザインのポスターを目にした。今年の標語は「この一行に逢いにきた」。読書推進運動協議会のHPにポスターのデータが公開されており、自由にダウンロードできるようだが、個人のブログに掲載していいのか分からなかったので見送った。それでもとにかく素敵なポスターだったので、ぜひ見てほしいと思う。
以前も書いたが、私は読書が苦手で、最近になってようやく本を読むようになった初心者だ。本を読みながらつい別のことを考えてしまい、なかなか進まない。それでも、楽しいと思える作品に出会ってからは少しずつ読書への抵抗が減り、食わず嫌いせずに本を手に取るようになってきた。いつかは初心者マークを外せる日が来るだろうか……。
今日読んだのは井戸川射子先生の『この世の喜びよ』。先日、本屋さんで文庫本になっているのを見かけて衝動買いした。第168回芥川賞受賞作だ。
この作品、最初の一文から私の知らない文体だった。
「あなたは」で始まった。
「私は」「僕は」は一人称、「彼は」「彼女は」は三人称。
「あなたは」は……二人称か。
一人称の「私」「僕」、三人称の「彼」「彼女」には馴染みがあるが、「あなたは」という形で進む物語は初めてだった。
そもそも芥川賞は難しいイメージがあるが、この作品も私には容易に理解できるものではなかった。読書初心者だからか。
小説にしても、詩にしても、作品のすべてを理解しているのは作者のみであって、読み手としては想像力を働かせて感じ取ろうとする。けれども、想像力の乏しい私はいつも作品の世界観をすぐには理解できない。ファンタジーではなく現実を描くテーマでさえ、時にその全体像をつかむのは難しい。
それでも、この作品に並ぶ言葉たちは「あなた」の内面を深く描き出し、もっと理解したいと強く思わせる魅力があった。
一度で全てを理解できなかったこの作品を私はもう一度読むだろう。間違いなく、もう一度読む。
読書週間はまだ続くのだから。
読んでくださった皆さんへ!
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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『それでも本を読む者』
ミノキシジルでした。