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癒された朝、薬の発祥の地、奈良
もし、旅館にいながら悠久の時を感じ癒されたい
となれば、断然、<奈良公園内>にたたずむ
唯一の旅館 『ふふ奈良』をおすすめしたい。
料理長の作り出す料理の、えも言われぬ味わい
一品、一品が丁寧で、「はじめて食べる味!」と
思わず、互いに声が出る程。
食材の組合せや食感に、一工夫も二工夫もある。
いにしえの薬の発祥の地といわれる、奈良
大和当帰などの和漢ハーブと、奈良産の野菜たち
奈良のちからを、食で体感できる宿『ふふ奈良』
1200年前この辺りは、興福寺、春日大社、
東大寺などの境内であったところ。
竹林に抱かれていると、南都七寺の僧侶たちの
ささやき声が風に乗り耳をかすめる気さえする。
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今年、『ふふ奈良』を訪れたのは、5月中旬
昨年訪れたのは、5月初旬
たった10日間の違いで、<竹の秋>が
始まっていた。
すくすくと伸びていく竹の子たち
地下茎でつながっている大人の竹は優先的に
竹の子に養分を送るために、自分たちの葉を
枯らせて落葉する。それが初夏なのに
<竹の秋>と呼ばれるもの。
落葉した葉の根本からは早、青い新芽が顔を
のぞかせている。だからあまり気づかれない。
こうして、竹はいのちをつないでいく。
部屋の露天風呂から、その竹を眺める。
~低張性中性低温泉~
その湯船に、和漢ハーブの袋を浮かべる。
日が沈む頃には、湯は黄金色に変わる。
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和漢ハーブには、当帰、桂皮、陳皮、川芎、
甘草、芍薬など。
湯船に浸かり、竹林に吹く風を感じ、鳥たちの
声を聴く。
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バスロブをはおり、隣のリクライニングチェアに
寝そべる。冷たい奈良の緑茶が、喉元に涼しい。
またバスロブを脱ぎ、湯船につかるを繰り返す。
少しずつ、身体の奥がほぐれて、和漢ハーブの
成分が沁み込んでくるのを感じられるようだ。
母と娘(姉妹)の三人旅
誰に遠慮することもなく、ゆっくりとした時間を
堪能できるのが嬉しい。
『ふふ奈良』は、基本2名用だ。全室露天風呂付
ラグジュアリー プレミアム スイートという
4名までの部屋もあるが、それだとお値段が……
昨年は、1名と2名で、2部屋に分かれて予約した。
今年は、『ふふ奈良』へ直に電話をすると
一室だけ、一つベッドを追加できる部屋があり
そこに、女三人仲良く泊まることができた。
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縦長の部屋なので、さらに奥にくつろげる
ソファー空間がある。
そして、夕食の滴翠(てきすい)へは竹林を
通って、しっぽりと歩く。
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前菜は、稚鮎天婦羅。さくっと香ばしい。
肝の苦みが爽やかだ。
グリーンピースの摺り流しは、甘く濃厚。
合鴨ロースにはオレンジ、トマトに花山椒
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清まし汁仕立ての御椀は、鰻が揚げてある。
揚げた鰻は、初めて食べた。
そこへ、とろとろの丸茄子と蓮根、梅肉、山葵葉
花柚子、そして椀の底には、蓬餅
一つの御椀のなかで繰り広げられる、複雑な妙味
幸せは、早、最高潮へ♬
今回は、3種のノンアルコールのペアリングを
お願いしてみた。
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お料理に合わせて選んでくださるのだが
前菜は、アプリコットとジンジャーのノンアル
ジャスミンとシナモンの香りが加わり、
ノンアルコールの概念が変わる。
お造りの、炙り伊佐木やイカ、初鰹の和漢漬けに
爽やか林檎と炒り茶、カモミールのノンアルが
ピッタリな味わい。楽しい♬
小鍋は、最も楽しみにしていたお料理の一つ。
山芋の下には、揚げ長芋、芹、湯葉、素揚げ当帰
飛鳥の「蘇(そ)」、いにしえのチーズだ。
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箸休めには、あまごと無花果
蕨と荏胡麻の葉、荏胡麻のクリームが
中に敷かれていて、これも絶妙な味わい。
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そして赤ワインのノンアルが登場するという
ことは……お肉
大きな器に乗って、燻されながらやって来た。
DOUXLESSのCHAOS GRAPE
カオスグレープ
黒胡椒, 山椒, クローヴが加えられているそう。
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太刀魚の釜焚きごはん
新茶葉の天婦羅と塩昆布も添えられている。
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水菓子は、濃厚なマンゴーアイスに
甘酸っぱいヨールグトソースがかかり
枇杷とメロン、さくらんぼも。
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身もこころも幸せに包まれて
身体の奥底が、食材のちからで動き出した
そんな気分になる。
すっかり日が落ちた竹林を通り
部屋へと帰っていく……
また、あの和漢ハーブの湯に浸かりながら
女三人の秘密の夜は続く。
朝、不思議な甘酒の一杯からの、おもてなし
甘酒とバナナがシェイクされていて、そこに
りんごの果汁の爽やかさがプラスされている。
「こんな甘酒、飲んだことない♬」
また一つ扉が開いた感覚に包まれる。
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<味>で、知らない世界に誘われる
そんな気分になるのは『ふふ奈良』ならではだ。
朝食には、一口茶粥
まさに、大和の朝は茶粥で明ける。
当帰などの香りがして薬膳の味わい。
フルーティな甘酒と茶粥で、朝一 栄養が
身体の隅々まで行き渡っていくのが分る。
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きな粉のプリンのまわりに黒蜜ゼリーがかかり
なかには、甘酸っぱい みかんが3粒
あぁ、堪能した!
と、食べ終えたとたん
また食べたい!!
来年も、女三人旅は、きっと
『ふふ奈良』になりそうです。
5月19日、この日は、唐招提寺で
中興忌梵網会が行われる日。
鼓楼では、「うちわまき」の準備が整っていた。
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今年は、うちわを鼓楼からまくのではなく
僧侶のかたが、礼堂と東室の間の馬道で
手渡しされるのだそう。
あいにくの雨のため
法要が行われている講堂や隣の金堂の軒下で
舞楽奉納がなされていた。
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雨の中、僧侶の方々の読経や声明の声が聞こえて
いにしえの昔が、目の前に出現したかのようだ。
唐招提寺の薬草園は、来年、完成予定だそう。
岐阜の薬草園から、少しずつ運ばれてくる……
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イブキジャコウソウが植えられていた。
日本産の“タイム”
伊吹麝香草の名の通り、麝香の香りする。
立札には、「百里まで香りが届く
百里香とも呼ぶ」とある。
食と香り
寺院などの佇まいや、草木、竹林
目にも鮮やかな完成された都、京都とは
一味 趣きが違う、おおらかな 奈良
す~と、自ら、いにしえの世界に
吸い込まれていきたくなる、想像の余白
そんな慈愛に満ちた <懐の深さ>こそ
大人の奈良の魅力ではないだそうか。
その入り口が、もしかしたら……竹林
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