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みずほ銀行の働き方改革に見る「自立していないおじさん」の行方

マイクロ人事部長の髙橋実です。

コロナ禍になり、これまでの働き方の見直しが一気に進み、大手企業を中心に、これまでになかったような「働き方改革」のニュースが飛び交っています。

多様な働き方の選択肢が増えるのは、歓迎すべきこと

先日は、みずほ銀行が週休3~4日制を希望者がとれるように進めていくとの記事が出ました。

みずほ銀行は、これまで、様々な働き方改革を行っています。

・副業解禁
・男性の育児休業100%取得
・フレックスタイム制導入などの柔軟な勤務時間を認める制度
・リモートワークの推進

                  など

とてもいい施策だと思います。
社員の自由度は、上がります。個人の働き方の選択肢が多くなりますね。

みずほ銀行のような働き方の自由度を広げる施策は、これまでのような画一的な「人は、1社に就職し、週5日、1日8時間、必ず働かなければならない」という考え方を変えていく意義は大きいと思います。組織が大きくて動きにくいはずの大手企業が改革が進むことは、僕は大賛成です。

人それぞれ、多様な価値観や周囲の環境によって、画一的なルールの中ではまらない事情もあるはずです。その選択肢が増えていくのは、とてもいいことだと思っています。

誰がこの施策のターゲットなのか?

さて、皆さんは、このみずほ銀行の記事を見て、どう感じましたか?
すべての人が「働き方の自由度が上がって良かった」と思ったでしょうか?

みずほFG広報担当の塩野雅子氏によると、給与は週休3日の場合でそれまでの8割程度、4日の場合は6割程度の支給を想定しており、労働組合からの合意を得た上で順次希望者を募る。
みずほFGは、社員の専門性や多様性の向上を目指して、2019年10月から新人事戦略を進めている。昨年からは社員の兼業や副業を認めるほか、転職や起業などによる離職者を人的資源として活用するネットワークづくりも構築している。

この施策は「会社の出勤日数を減らすことは認めるけれど、その分給料も下げる。それを勤務時間割合でみる」というものです。
(週休2日の人は100%、週休3日の人は4/5、週休4日の人は3/5)

本来は、企業としては「優秀な社員にはフルで働いてパフォーマンスを発揮して欲しい」のが本音だと思います。問題は、この施策が、自社のどのような層を想定して作られた施策なのか?という点です。この施策を自社の全ての優秀な社員が選択したら、果たしてその企業は回るのか?恐らく現段階では、答えはNoだと思います。

人事施策は、必ず企業側のプラスメリットがなければ、実行しません。この施策の場合、企業のメリットは、どこにあるのでしょう?

構造改革の、真っただ中にいる

2017年に、みずほ銀行は、大胆な構造改革案を発表しています。

みずほフィナンシャルグループが13日発表した2017年4~9月期連結決算は、純利益が前年同期比12%減の3166億円だった。日銀のマイナス金利政策による利ざやの縮小に加え、株式や債券を売買する市場部門の低迷が響いた。収益力の向上にむけた構造改革案も公表。人工知能(AI)などを使った効率化で業務量を減らし、26年度末までにグループの従業員数を現在の約7万9000人から6万人に減らす方針を明らかにした。
構造改革は業務量の削減による組織や人員の最適化に加え、店舗数の統廃合で17年3月末時点の約500拠点から24年度末までに約100拠点を減らすことなどが柱だ。佐藤社長は「厳しい競争環境に加え、マイナス金利政策で(売上高にあたる)業務粗利益の引き上げが難しくなっている。コスト競争力の強化が必須だ」と強調した。

みずほ銀行は、2017年に発表した10年計画の構造改革の真っただ中にいるわけです。

年功序列・終身雇用の限界

では、誰がこの人員削減の主要なターゲットなのか?
日本は、長らく「年功賃金制」「終身雇用制」のスタイルで、雇用が守られてきたのはご存じの通りです。

そもそも、コロナ禍になる前から、経団連の中西会長やトヨタなど、大手企業が「終身雇用の限界」を唱えてきました。そんな中、経済の行方を鈍化させたコロナ禍が発生しました。さらに、経済の先行きが見えない中では、不測の事態に備えて更なる内部留保を進めるのは、仕方がないことだと思います。

そして、みずほ銀行は、10月から給与制度の改革に踏み切るとのこと。

 3メガバンクのうち、段階的な人事制度改革を進めてきたみずほ銀行も、いよいよ大幅な給与改革に乗り出す。昨年5月に「5ヵ年経営計画」をぶち上げ、ジェネラリストの育成から手に職を付けられるスペシャリストの育成への変更を人事制度の核に据えた。それに呼応するように、昨年10月に副業や兼業の解禁、今年6月に業績連動賞与の導入などを連続して取り入れてきた。そして今年10月には、専門性や成果によって給与水準を見直す仕組みに変えるという。
 10月の改革のコンセプトは、若手人材でも成果次第ではシニア行員の処遇を超えられるというもの。みずほ銀は職務を「ミッション」と称し、経験年数とは関係なく高い知見を発揮してより高度な仕事をこなした職員に対しては、高い給与で処遇する。役職に就く前の若手職員のみならず、次長や部長も対象となる。

大手企業でも、本格的な年功序列制度の改定が始まります。

働き方の自由度という飴は何をもたらすのか

これは「優秀なパフォーマンスを上げられる社員に(年次に関係なく)人件費を集中投下する」という流れです。

優秀かそうでないかに関わらず給与が上がる仕組みにより人件費割合が高くなっていたミドルシニアは、どの企業でも悩みの種。これから先にパフォーマンスが発揮されにくい(ピークを越えた)ミドルシニアは、早期退職制度という施策で削減されてきましたが、日本は一旦雇用した社員をなかなか辞めさせられない。

しかし、「働き方の自由度という飴」を用いて、結果的にパフォーマンスが低くなった社員の人件費比率を下げていく施策としては格好の施策になる。一方的な企業側の論理でのリストラではなく、自由度という社員へのメリットと引き換えに、人件費比率を落としていく。

恐らくこれは、これからの大手企業でも同じような施策が進むと思います。

「自立していないおじさん」には辛い時代

これまで、ずっと年功序列で企業に奉公して、定年まで勤められると思っていたミドルシニアには、厳しい時代に入りました。僕自身もバブル最期の年代ですが、もう逃げ切れない状況がそこまで迫っています。

年功序列の撤廃は、過去の輝かしい成功や実績はゼロになり、これから先の成果で全てが決まる、ということです。本当に厳しい時代に入りました。

終身雇用を前提に入社して、30年近くも同じ会社勤めをしてきた人が、真綿を締めるようにその会社での存在価値をなくしていく、そんな時代に入ってしまいました。

コロナ禍を契機に、大手企業からアウトプレイスメントサービス提供企業(再就職支援会社)への相談が一気に増えたという話も聞きます。50代向けの研修の要望も増えているようです。

企業がこれを提供し始めるということは「企業がミドルシニアのガイドラインを示す」ということ。内容をクリヤーできなければ、企業としては「いらない」という、リトマス試験紙のようなもの。

そしてもう一つ、僕が非常に気になっている点があります。
ミドルシニアの転職マーケットは、未成熟であるということ。つまり、放り出されたら、例え実力があってもセーフティネットがないということ。これは、すぐに大きな問題になると考えています。

ピークを過ぎた人材のマーケットは、日本にはない。
これが現状です。

もし、少しでも心配が頭をよぎる人は、今すぐに自分の人生の棚卸と、積極的なリカレント教育による学び、新たな自分の再構築に向けて動き出すことをお薦めします。

厳しい時代に入ってきてしまいました。

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髙橋実@マイクロ人事部長
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