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そうだ、城南宮、行こう。

 今年初めて、金木犀の香りが鼻先をかすめた、満月の日。
 
 平安京の守り神、北の玄武「上賀茂神社」、西の白虎「松尾大社」、東の青龍「八坂神社」、南の朱雀「城南宮」のうち、唯一足を運んだことのない「城南宮」。南だけ押さえてないのは片手落ちだと、常々思っていました。

 そうだ、城南宮、行こう。
 
 城南宮は伏見区にあり、阪急電鉄ユーザーとしては、ちょっとアクセスしづらい場所だと感じていたのですが、阪急烏丸駅から地下鉄に乗り換えて竹田駅に行けば結構近いものでした。ただし、竹田駅から徒歩で15分ほどかかります。名神高速の京都南インターのすぐ南にあり、本当にこんなところに城南宮があるの?道、間違えてないかしらん?と不安になるくらい、クルマやトラックがバリバリ走っています。

 しかし鳥居をくぐると、まったく違う空気が流れていました。

立派な鳥居からは結界感が伝わってきます

 平日の昼下がりだったためか、ほぼ貸し切り状態です。
 まずはお浄め。こちらの手水舎で使う菊水若水は霊験あらたかとのことで、ペットボトルを持参した甲斐がありました。ひんやりと冷たく、飲んでみるとかなりの軟水。やはり伏見の水ですね。

 手水舎の脇には「熊野詣の出立の地」の紹介文が。先月に熊野詣を計画していたものの、とうとう行けずじまいだった私には、せめて出立の地にだけでも来てみたら?と呼び寄せられたようにも思えました。

 本殿は平安時代後期の建築様式で造営されたとのこと。おっとりとした美しさを感じます。手を合わせて心の中で願いを申し上げました。神様、いつもありがとうございます。いろいろお願いしてしまいますが、どうぞよろしくお願いします。

「曲水の宴」が行われる「楽水苑」

 神苑「楽水苑」は、『源氏物語』に描かれた80種余の草木が植えられ、「源氏物語花の庭」として親しまれているそう。白河上皇は光源氏の造営した「六条院」にインスパイアされ、城南宮を中心とした城南離宮を造営したというのですから、六条院の疑似体験ができそうです。
 
 しかしこの城南宮、普通の神社とはちょっと雰囲気が異なって、宗教色が薄いなと感じたのは、離宮だったからなんですね、納得です。

 「源氏物語 花の庭」には、花の学名や種類などの説明だけでなく、『源氏物語』でどのように使われているかを記載した、扇型の看板が添えられています。物語に登場する姫君たちの名前といい、紫式部は花や草木の特徴をよく考慮して、物語を書いているんですね。実に優れた観察眼や深い洞察力の持ち主だと感心します。

親切な説明パネル 桔梗も美し

 また本殿の向かい側にも、「桃山の庭」、「室町の庭」、「城南離宮の庭」があり、庭三昧。・・・なのですが、周囲に立てられたビルや鉄塔が、完全に景観を乱してしまっており、残念でなりません。洛中ほど建築制限が厳しくないのでしょうが、ビルを建てる企業ももうちょっと考慮しましょうよ。

 それでも庭の豊かな緑や池の趣きに、心が鎮まってゆくのを感じます。
 もしこの庭で満月を眺めることができたなら、どんなにすばらしいことでしょう。

室町の庭

 その後。
 心満たされ洛中に戻り、ビールを飲みつつ月の出待ちをしたのですが、雲が厚く、満月にお目にかかることはできませんでした。残念。

城南宮はこんなに晴れていたのにね

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みのむし庵主の1K日記
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