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夕日、ノスタルジー
ここは、海にしずむ夕日が見える、少し高いところにある公園です
あかねいろの夕空を、ゆげの立っているどんぶりが、とんでいきます。
「あれ?なんか飛んでるよ」
お母さんに手をひかれながら、公園からくだる階段を歩いていた、小さな男の子がお母さんにいいました。
お母さんは夕空を見上げました。
お母さんはいいました。
やさしい声でいいました。
「ほんとだね、あれは、なんだろうね。あっ、おうどんだ」
「えっ、おうどん?」
「そう、おうどんだよ」
「おいしい?」
「どうだろうねぇ、ふふふ」
「おかあさんのつくるのと、どっちがおはいしいかなぁ」
「おかあさんのかなぁ。それとも、とんでるやつかなぁ」
お母さんは男の子の顔を見て、優しい顔でほほえみました。
男の子はうれしそうにしていました。
夕日がしずむのと同じように、空とぶどんぶりも、男の子もお母さんも、すーっと、夕日と共に消えました。
ほほえましくも切ないなぁ。っと思いながら、わたしはテレビを消しました。そして、きゅうりをかじりました。あかねいろにそまる部屋で一人。
なんだかなきたくなりました。
人間のふりはつかれます。