観てくれる人を想像してあかりアートに物語を|あかりアート展入賞者インタビュー 福田さん
岐阜県美濃市が、日本に、世界に誇る文化「あかりアート」。見て楽しい、作って楽しいあかりアートの魅力をもっともっと知って欲しい。
そこで、美濃和紙あかりアート展の入賞者に、あかりアートの魅力やあかりアート作りの楽しさ、上手に作るコツ、あかりアート展を最大限楽しむためのポイントなどを聞く連載企画がスタートしました。
今回お話を伺ったのは、第27回美濃和紙あかりアート展で美濃和紙あかりアート賞を受賞された福田さん。
福田さんのあかりアート作りへのこだわりや、あかりアートを上手に作るためのポイントなど、これを読めばこれまで以上にあかりアートを楽しめること間違いなしです。
時間がかかるからこそ完成形が見えるとわくわくする
ーーあかりアートと出会ったきっかけはなんですか
あかりアート展を見に行った人から「すごく良かった」という話を聞いて、翌日、家族で出かけました。たくさんの作品を観て私も作品を出してみたいと思うようになり、翌年の2015年5月から準備をして出品しました。木工が好きで小物を作っていますが、作品を出展したことはないので、これが人生で初めての出展です。
まず下準備として、電球、ソケット、電線などを買いそろえ、美濃市まで和紙を買いに行きました。これが意外と時間がかかりましたね。
作品も最初は行灯風であればいいと思っていて、自分がきれいだと思えばいいと思っていました。でも、あかりアート展で自分の作品を見たとき、それほど感激がありませんでした。それで、もっといい作品を作りたいと思うようになったという感じです。
ーーあかりアート作りで楽しいことはなんですか
3ヶ月ぐらいかけて作るのですが、少しずつ完成に向かっている実感があることです。作業場が食卓テーブルなので、ごはんのときは片付けなければいけません。従って、1日の作業時間は3時間くらいです。もちろんやらない日もあります。
そのように、時間をかけて作品を形にしていくので、完成の形が見えてきたときはとても楽しいです。あかりを入れて意図したようになっているとわくわくしてきます。
幻想的なシーンをどうすれば和紙で表現できるか
ーーあかりアートはどのような手順で作るのですか
まず、アイデアを簡単なイラストにします。何回か描いていると徐々に形ができます。そこから、詳細な絵を描いていきます。そこまで事前にイメージしておいても、そのまま形になるわけではありません。
作っていく途中で形を変更して和紙が足りなくなり、3回ほど買いに行った年もありましたね。和紙は光を通すと明るいもの、暗いものなど、3種類は用意しています。立体感を出すためには組み合わせが必要だと思っています。
ーー今回の作品作りで注目して欲しいポイント、苦労したポイントはどこですか
今回の作品は、貝のように閉じた状態から、深夜夢見る頃に光を発し、開いて中のモヤモヤが晴れ不思議なものが現れる。その1シーンをイメージしました。このようなアイデアはいろいろなときに考えていて、形あるものを見るときよりも、本などを読んでいて想像する方がアイデアが出てきます。
しかし、イメージ通りに形が作れず苦労もしました。モヤモヤのドロドロした感じを出したかったのですが難しかったですね。今回のように、なかなか思い通りにならないときは、元に戻して何日かしばらく休み、対策を頭の中であれこれ考えるようにしています。
前後左右から撮影。方向が変われば印象やグラデーションにも変化が。
観てくれる人がいるからあかりアート作りは楽しい
ーー作品を作るときに大切にしていることはなんですか
作品を見てくれる人が立ち止まっていろいろ想像してくれるような作品であること、物語性を持たせることを心がけています。
実際にあかりアート展に来られた人が作品の前で話がはずんでいる様子は、とても印象に残っています。観ている人が私の作品の横に並んで一緒に写真を撮っていたときは、すごく嬉しかったですね。
ーーこれからあかりアートを作ってみたい方は、どんなことに気をつけて作ると上手に楽しく作れると思いますか
やっぱり観てくれる人を意識して作るべきだと思います。あかりアートは作るのも楽しいですが、観て楽しむものでもあります。観る人が楽しさを共有してもらえるような作品を意識するといいとのではないでしょうか。
和紙の長い歴史から見れば、つい最近まで人のすぐ隣に神様も妖怪もいたのだと私は思っています。和紙を通したあかりやその周りは、それを語っているように感じています。そのように何かを感じながらあかりアートを作ってみるのもいいかもしれませんね。
作品に込められたメッセージを感じてほしい
ーーあかりアート展を楽しむためにどんなポイントに注目するといいと思いますか
たくさんの作品があります。見た目の美しさもいいですが、それぞれの作品の個性や、題名と照らし合わせて作品が訴えたいものを見つけるのも面白いと思います。
私もいろいろな方の作品を観てきて、引き込まれるような幻想的なものがいくつかありました。賞をもらえる作品はもちろんいいのですが、自分の感性に合った作品を見つけてみてください。
編集後記
和紙の歴史やあかりから神様や妖怪の存在を感じ取ってみたり、本を読んでインスピレーションを得てみたりと、いろいろなものから何かを感じとられているのが印象的でした。作品に想いや物語を込めるためには、それを形にする以前に感じとる力が必要なのかもしれません。
作品と一緒に写真を撮ったり、感想を話し合ったりすることで、作者の方の創作意欲が高まり、観ている人たちも楽しくなる。あかりアート展は、作る人と観る人が一体となって作り上げているものだと感じました。
もしかしたら作者の方が観ているかもしれません。お気に入りの作品を見つけたら、じっくりと作品を眺めてみたり、写真を撮ったりしてみてください。
次回のあかりアート展も楽しみです。
取材・文=澤田おさむ