小学生に英語絵本を選ぶときの考え方(厳選30冊の名作英語絵本リスト付き)
子どもにぴったり合う英語の絵本を見つけるのは難しく、子どもの年齢が上がっていくほど難しくなります。
子どもに英語の絵本を与えたい親も、子どもに英語を教える先生も、悩むところではないでしょうか。
なかなか合うものが見つからない原因の一つに、子どもの「興味・関心レベル」と「英語レベル」が離れていくということがあると思います。
(英語育児(おうち英語)で英語の読書量が維持されている場合は、この限りではありませんが、この場合は英語ネイティブに近い状況になるので、今回の想定から外します)
特に小学生になると、幼児期と違って、英語ネイティブの子ども向けに書かれた本が難しいからと文章のレベルを下げると、今度は内容が幼稚すぎて物足りなくなるというジレンマがあります。
もちろん、小学生向けの「教材」としての英語絵本はたくさんあります。
けれども、英語初級者が純粋に楽しめて、しみじみ味わえるような良い絵本はないものでしょうか。
小学生の時期に、英語の教科書や英検の問題ばかりに時間を使うのは、あまりにもったいないと思います。
今回は、小学生に合う英語絵本の例を挙げながら、
1)小学生(特に5~6年生の英語学習者)に英語絵本を選ぶときの考え方
2)英語絵本を難しく感じないための工夫
について検討したいと思います。
背景:読み聞かせボランティアと学校図書アンケート
私は小学校で、保護者として英語絵本の読み聞かせボランティアをしています(今年で5年目)。この活動のため、LeahとLucasが読み聞かせを”卒業”したあとも、小学生に親しみやすい英語絵本を探し続けてきました。
先日、学校の図書の先生から、読み聞かせ本の購入希望アンケートがありました。これに回答するとき、これまでいろいろな場面で自分が使ってきた英語絵本について振り返りましたので、記事に残すことにしました。
英語絵本選びの観点
理想は、平易な文章で豊かな内容が語られるのもの
英語絵本はなぜ敬遠されるか
1.子どもの「興味・関心」に合う絵本は「テキストレベル」が合わない
2.名作絵本で使われる豊かな表現(高度な語彙、詩的な表現、韻を踏むリズム、比喩、ことば遊びなど)は、学習者には分かりにくい、読みにくい
3.教育的要素が強すぎると取っ付きにくい、面白くない
親しみやすい英語絵本とは
1.ストーリーラインがシンプルで、知らないことばや表現でも推測しやすい
2.パターンや繰り返しが多く、予測しやすい
3.ユーモア、意外性、オチがあって、興味そそられる
4.シンプルでストレートな表現が使われる
このように考えて、平易な文章で豊かな内容が語られる英語絵本を理想としました。
今回の選書のポイント
小学生が英語絵本を使う場面
1.家族や先生に読み聞かせしてもらう
2.YouTubeで読み聞かせ動画を観る、オーディオブックで朗読音声を聴く
3.音声を手本に、音読の練習をする
このような場面を前提に、今回の選書では、
1.図書館で見つかりやすい(人気作、ロングセラー、古典、受賞作など)
2.音声が手に入る(YouTubeは読み聞かせ音声の宝庫です)
3.教材として作られたものではない
この3つを重視しました。
音読練習は英語習得に欠かせない取り組みなので、各絵本の「音読素材としてのおすすめ度」を★~★★★で示しました。
テキストレベルの指標
テキストレベル(文章の難易度)の指標として、
1)リーディング・レベル(Guided Reading Level)(Fountas & Pinnell Levelとも)
2)レクサイル(Lexile)指数
を使っています。
Grade(アメリカの小学校の学年)との関係
英検(長文問題)との関係
これらの指標は、たまに違和感を感じますが、貴重な参考目安です。
例)
Frog and Toad Are Friends by Arnold Lobel (1970) ★★★
400L | Level K
例えば、この「がまくんとかえるくん」絵本の場合、テキストレベルは、アメリカの小学校のGrade 1相当、かなり強引ですが、英検の読解問題のレベルと照らし合わせると、英検5-4級くらいが目安ということになります。
★3つは、私が音読素材としてのおすすめする絵本を表します。
Lexile指数/リーディングレベルの検索サイトの例
以前は複数のサイト(https://hub.lexile.com/find-a-book/、https://bookwizard.scholastic.com/など)を参照してテキストレベルを調べていましたが、今は、生成AIでまとめて確認できるので、ずいぶん便利になりました。
(AIの出力は不正確なこともよくありますので、使うときは注意が必要です)
厳選 英語絵本リスト
① 会話形式(セリフだけ)の絵本
ナレーションなしでストーリーが展開されます。
Can I Play Too? by Mo Willems (2010) ★★★
180L | Level H
Today I Will Fly! by Mo Willems (2007) ★★★
120L | Level G
『とびたいぶたですよ ぞうさんぶたさんシリーズ絵本』 落合恵子 訳 (2013)
Elephant & Piggieシリーズ。Mo Willemsはセサミストリートの脚本家/アニメーターとして活躍しました。
David Goes to School by David Shannon (1999) ★★
AD180L | Level I
『デイビッドがっこうへいく』小川仁央 訳
学校ネタ。
Yo! Yes? by Chris Raschka (1993) ★★★
10L | Level C
(Caldecott Honor 1994)
『やあ、ともだち!』泉山真奈美 訳 (1995)
友情。
Don’t Let the Pigeon Drive the Bus! by Mo Willems (2003) ★
(Caldecott Honor 2004)
AD280L | Level J
『ハトにうんてんさせないで』中川ひろたか訳 (2005)
こちらもセサミストリートのスキットのようなユーモア、ハトが読者に語りかけるスタイル。
I Want My Hat Back by Jon Klassen (2010) ★★★
230L | Level J
『どこいったん』長谷川義史 訳
Hat3部作の1作目。パターンとオチ。小学校の読み聞かせ会では、中学年のクラスによく使っています。
We Found a Hat (2016) by Jon Klassen ★★★
310L | Level L
『みつけてん』長谷川義史 訳
Hat3部作の3作目。
I Don't Want to be a Frog (2015) by Dev Petty ★
AD380L | Level K
『オレ、カエルやめるや 』こばやしけんたろう 訳 (2017)
② 絵から推測できる絵本
ことばの意味を子どもに「気づかせる」ように書かれた絵本です。絵がすべてを語ってくれます。基礎単語の感覚が身につきます。
Bears in the Night by Stan and Jan Berenstain (1971) ★★★
120L | Level E
Randon House Bright & Early
Big Bear, Small Bear by Stan and Jan Berenstain (1998) ★★
140L | Level G
Randon House Step-into-Reading
Bears on Wheels by Stan and Jan Berenstain (1969) ★★
BR30L | Level D
Randon House Bright & Early/Step-into-Reading
Rosie's Walk by Pat Hutchins (1968) ★
BR60L | Level F
Go, Dog, Go! by P.D.Eastman (1961) ★
BR240L | Level E
③ 読み聞かせの定番、内容は幼児向けが多い
大人がまだ文字を読まない子どもに読み聞かせるための絵本(レクサイル指数に「AD (Adult Directed)」コードがつくことが多い)で、内容のレベルに対して、語彙や文章のレベルが高めです。
小学生の読みの導入にも音読練習にも向かないため、いずれも「★無し」(★印は音読素材としてのおすすめ度)です。
The Very Hungry Caterpillar by Eric Carle (1969)
邦訳『はらぺこあおむし』 (1976) もりひさし訳
AD460L | Level J
Curious George by Margret Rey and H. A. Rey (1941)
邦訳『ひとまねこざるときいろいぼうし』(1966) 光吉 夏弥 訳
AD580L | Level K
Swimmy by Leo Lionni (1963)
邦訳『スイミー ちいさなかしこいさかなのはなし』(1969) 谷川俊太郎 訳
AD640L | Level M
(Caldecott Honor 1964)
Where the Wild Things Are by Maurice Sendak (1963)
邦訳『かいじゅうたちのいるところ』(1966) じんぐう てるお 訳
AD740L | Level J
④ 歌える絵本
Brown Bear, Brown Bear, What Do You See? by Bill Martin Jr. (1967) ★
Lexile: 200L | F&P: Level C
幼児向けですが、有名なので入れておきます
We’re Going on a Bear Hunt by Michael Rosen and Helen Oxenbury (1989) ★★
『きょうはみんなでクマがりだ』(1993)
280L | Level I
Three Little Kittens by Paul Galdone (1986) ★
NP (non-prose) | Level G
Today is Monday by Eric Carle (1993) ★
NP (non-prose) | Level E
⑤ ライム(rhymes)を楽しむ本
英語の音にまだあまり慣れていない子どもには、少し取っつきにくいかもしれません。
Green Eggs and Ham by Dr. Seuss (1960) ★★★
by Dr. Seuss
Lexile: 210L | F&P: Level J
食わず嫌いはよくない?
Hop on Top by Dr. Seuss (1963) ★
Lexile: 190L | F&P: Level J
Fox in Socks by Dr. Seuss (1965) ★
AD610L | Level K
The Gruffalo by Julia Donaldson (1999) ★★
AD560L | Level L
小学校での読み聞かせ会で、私は高学年のクラスによく使っています。「虎の威を借る狐」ならぬ「グラッファロの威を借るネズミ」のおはなし。一人読みには向かない。
Oi Frog! by Kes Gray (2014) ★
AD490L | n/a
Where the Sidewalk Ends by Shel Silverstein (1974) ★
NP (non-prose) | n/a
詩集。挿絵がおもしろい。
⑥ 繰り返し音読したい古典
Little Bear by Else Holmelund Minarik(1957) ★★★
邦訳『こぐまのくまくん(はじめてよむどうわ1)』まつおかきょうこ訳(1972)
370L | Level J
HarperCollins社「I Can Read!」シリーズ(Level 1)。
Frog and Toad Are Friends by Arnold Lobel (1970) ★★★
邦訳『ふたりはともだち』(1972)
400L | Level K
HarperCollins社「I Can Read!」シリーズ(Level 2)。
「The Letter(おてがみ)」は小学生全員にふれてほしい。Frog and Toadシリーズは全部おすすめ。
Nate the Great by Marjorie Weinman Sharmat (1972) ★★★
370L | Level K
絵本とチャプターブックの間。Nate the Great (ぼくはめいたんてい)シリーズ全32冊。
⑦ まだまだある味わい深い絵本
The Giving Tree by Shel Silverstein (1964) ★★★
AD530L | Level M
『おおきな木』本田錦一郎(ほんだ きんいちろう)訳(2010)(どちらかというと子ども向き)と村上春樹訳(2010)(どちらかというと大人向き)がある。
The Three Billy Goats Gruff by Paul Galdone (1973) ★
AD500L | Level L
The Little Red Hen by Paul Galdone (1973) ★
AD500L | Level L
The Very Busy Spider (1984) by Eric Carle ★★★
200L | Level J
Let's Make Rabbits (1982) by Leo Lionni ★★
AD490L | Level K
Library Lion by Michelle Knudsen (2006) ★
470L | Level K
John Patrick Norman McHennessy: The Boy Who Was Always Late by John Burningham (1987) ★★
AD620L | Level M
I'll Always Love You by Hans Wilhelm (1985) ★★
540L | Level M
英語教科書(東京書籍 New Horizon 中学2年)に掲載あり。
「過去完了形と仮定法過去完了」は未修だが「原文のまま掲載しました」とわざわざ注意書きがありました。過去完了を避けていたら、物語なんて読めない…です。
英語絵本を読むときのヒント
英語絵本を難しく感じないために
いいなと思う絵本が見つかったら、まずは、その音声を繰り返し聴いて耳を慣らします。
文字を追ったり、声に出して読む練習をするのは、そのあとです。
また、かたまりで聞くこと、全体の流れを追うことに意識を向けます。日本語の文章を読むときと同じで、一語一句にこだわっていては楽しめません。
大人は、できる限り「子どもに気づかせる」スタンスを保ちます。子どもが知りたがったら説明を加えますが、分からないだろうからと、はなから教えることはしません。
先に教えてしまうと、想像・推測して分かろうとする力が育ちませんし、「説明を受けないと英語は分からないもの、難しいもの」と子どもが思い込んでしまいます。一度そう思い込んでしまったら、なかなか抜け出せなくなります。
早くから(乳幼児期から)英語にふれると、この想像・推測する力が育ちやすいようです。日本語でしていることを英語でもすればよいからでしょうか。英語に対して壁を作らずにすむことが多いようです。
小学生から英語にふれる場合、この点がキモになると感じています。分からない、つまらない、ではなく、いかに、分かりそう、おもしろそう、に持っていけるかです。英語の先生なら、ここが腕の見せどころではないでしょうか。
私は読み聞かせボランティアとして、30〜40人の小学生を前に読み聞かせをするとき、子どもたちからさまざまな反応を受けます。分からない、難しい、と英語に苦手意識のある子はすぐに分かります。子どもが英語を“好き”になるには、歌やゲームだけではない、英語を通して純粋に楽しむ経験が大切だなと感じます。
また子どもの読みの導入として絵本を使うとき、Phonicsが終わっていない、Sight Wordsの読みができていない、など、大人が気にしすぎるのもよくないと思います。系統立った取り組みだけでなく、実践で身につけていくことも必要です。いろいろな方面から、音のかたまり、言葉の連なりにふれることが、受けとる力を育てると考えます。
目的は語彙を増やすことではなく、語感、文法感覚を得ること
絵本には子どもがことばを学ぶための工夫がなされていますが、絵本を使う目的は、単語やフレーズを覚えることだけでしょうか。
目的は語彙を増やすことではなく、リズム、語感、文法の感覚を得ることだと私は考えています。
絵本を通して、易しい文章にふれることで、イメージをふくらませながら、日本語を介さず英文をそのまま受け取る感覚を身につけます。
テキストレベルが高いものを、時間をかけて読む必要はなく、その子どもにとって易しいものを、1冊でもいいので、まずは読み親しむことです。
そのようにして吸収した文章は、理屈ではない、子どもの感覚の一部となって、後々の学習の助けになっていくと思います。
(おまけ)世界の名作のアダプテーションが秀逸なリトルフォックス(Little Fox)
この記事では「教材」絵本にふれませんでしたが、最後に1つだけ、小学生の英語学習者のニーズに合うLittle Fox(リトルフォックス)という韓国のEFL教材を紹介します。
テキストレベル別に書かれた童話が、eブック、オーディオブック、アニメ動画として楽しめます。
特に、文学作品のアダプテーションが秀逸です。児童書やリーダーズ/チャプターブックなどを専門とする欧米のライターが、各レベルに合わせて書き下ろしているそうです。
赤毛のアン、西遊記、トムソーヤの冒険などの世界の名作(このような作品が51もあります)が、平易な英語で楽しめます。英語はシンプルでも文章の質は高く、物語の筋も簡略化され過ぎず、とても充実した内容です。
(追記)リーディングを段階ごとに学べる教材
スモールステップでリーディング力を身につけていくには、やはり教材が便利です。
小学生向けのリーディング教材としては、ラズキッズ(Raz-Kids / Reading A-Z)などの多読のためのアプリや、ORT(Oxford Reading Tree)などのリーディングに特化した絵本が使いやすいので、ご参考として挙げておきます。
終わりに
以上、小学生のための英語絵本の選び方と使うときの工夫について検討し、英語絵本の候補リストをご紹介しました。
「図書館で見つかりやすい英語絵本」という条件を掲げたので、古典的な作品が多くなりました。
もちろん新しい作品にも良いものがたくさんありますので、書店の洋書売り場などで手に取って探すこともおすすめします。
ぜひ、子どもに良質な英語絵本に親しむ経験をさせてあげてください。
この記事がそのきっかけになればとても嬉しいです。
お読みくださりありがとうございました。
少しでも参考になりましたら、スキをお願いします。
英語育児における「読み聞かせ」「語りかけ」に関する過去記事です
小学校での「読み聞かせボランティア」に関する過去記事です
Minnieの音声サンプル(あくまで、小学校での読み聞かせ活動としての読み方です)
Mo Willemsの絵本のところでふれた、セサミストリートのスキットをご存じない方は、こちらのおすすめ名作スキットをぜひご覧ください