【感想文】東京二十三区女
いやーマジで面白かった。最高だった。
一昔前、「放送禁止」というドラマがやってたの知ってますか?
2003年から不定期で制作されていて、2008年から劇場版も公開。2024年時点での最新作は2017年。有田哲平さんが世にも奇妙な物語で言うタモリさんの様な案内人を担当されていました。
この本の作者は、その放送禁止を作った人。
もし知らないなら一度見てみて。このnote見終わった後にでも↓
今回読んだ「東京二十三区女」は短編集。
・板橋区
・渋谷区
・港区
・江東区
・品川区
この五つの区が舞台。
先に言っておくと、この作者はかなりのやり手だ。基本いつもホラー寄りな作風で、人間の闇に焦点を当てたストーリーが大半。ゾワっとするような感覚を楽しませてくれる。
やっかいなのが作中でよく出てくる「謎解き」だ。初見ではまず気付けない、文章の中に隠されたメッセージを見つけると真実が浮かび上がる。その真実の隠し方がとっても巧妙だ。
そのトリックは作者のどの作品でもいいので、一つ見て体験してくれれば分かる。まだ見た事ない人がとても羨ましい。
「東京二十三区女」も、もちろん凄いことになっている。それだけは保証する。
さて、そんなトリックの話はさておき、読み終わってまず考えたのが「創造物におけるジェンダー観」だ。
近年、ジェンダー観は昔と比べると大きく変化してきている。多様性の認知や、社会運動、新たな主義の誕生など、現実の世界で色んな出来事が増えつつある。
それは現実世界の中だけでなく、創作物に対しても同様である。時に作者が意図しなくても批判の的になったりする話もチラホラ聞く。
それもさておき、
あなたは「女性」という性別に対して、どういうイメージが沸きますか?
・儚さ
・弱さ
・気高さ
・綺麗さ
まぁ、色々あるでしょう。
「東京二十三区女」には先述した五つの区を舞台に違う話が展開されるが、いずれの話もキーパーソンは「女性」である。
不思議なことに、どの話に関しても、キーパーソンは女性でなければ話の締まりが悪くなる。この本に限らず、きっとどの作者のどの作品でも、登場人物の性別を全て逆にすると全く違う雰囲気の作品が出来上がるだろう。
その「女性」の描き方にも、是非注目しながら読んでみてほしい。
ちなみに全体を通して男の影はかなり薄い。この作品の中において、男なんてもんはモブキャラでしかない。
五つの区の話はどれも面白いので、とてもじゃないが甲乙をつけることはできないが、僕の一番ののお気に入りは「港区の女」。ちなみに、五つのストーリーのなかで一番「男性」が登場する章だ。この章を読むだけで、作者の長江俊和という人物はどういう作品を世に出し人々を魅了し続けているのか、よく分かるはずだ。
東京二十三区、全ての話を作っていくらしく、全てが終わると長江作品で最長の物にきっとなるだろう。その第一巻と思うと、続きが気になってしょうがない。
まぁ、騙されたと思って読んでみてよ。実写化もされてるみたい。流石でっせ長江先生。
このノートは一人前の羊飼いを目指す見習いの日記。
羊の世話してる時以外はよく本を読んで過ごしてます。
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