組織文化をプレイフルにリ・デザインしよう!(Vol-1)
-株式会社 オーイーシー様の事例-
組織文化をデザインし直す動きが活発化しています。日本経済新聞では、社名変更がこの10年で2倍超に上り、そこにはグローバル化やDX化といった激しい経営環境の変化やパーパス経営の浸透によって大胆に再成長を進める企業の覚悟が見えてくることが紹介されています(3月26日)。
「みんなのデザイン進化論」のメンバー レベルフォーデザイン(L4D)とクリエイティブ・ジャーニー(CJ)は、ジャパンラーニング株式会社様(以下JL)からのお声がけで、さる4月にリリースされた株式会社オーイーシー様のCI(Corporate Identity)プロジェクトに参画させていただきました。
「変革を進める企業にデザインの力はどのように寄与するのか」その現場をレポートする本連載。第1回では、取り組みのはじまりからMI(Mind Identity)開発までの経緯をご紹介します。
きっかけ
はじまりは、2022年秋にオーイーシー加藤健社長(兼CDXO)からいただいたご相談でした。オーイーシーは、1966年に大分県で創業。日本におけるコンピュータ商用化の創成期から現在に至るまで、県内外を問わずICTを基盤とした社会の実現のためのソリューションを提供し、近年は AI・IoT・ドローンといった先端技術も積極的に取り入れ研究開発をしている、正に全国の「地域」におけるデジタル社会のインフラを担っている企業です。
社長からのご相談の内容は、翌2024年春にグランドオープンする同社の本社新社屋をデザインの力で共創の場としたい、そのアイデアが欲しい、というもの。それに対し、我々(JL/L4D/CJ)が課題を再定義しご提案したのは「これは企業変革(CI)の取り組みではないか」ということでした。
同社は2021年に中期経営計画(2021年4月~2024年3月)を発表し、そのスタートにあたって加藤社長はこういう内容をメッセージされていました。
「これからの時代(=あらゆる産業でデジタル技術の活用、DXがかつてないスピードで進む時代)を生き抜き、成長していくために我々はビジネスモデルに加えて、業務プロセスや組織、企業文化・風土を変革していかなければなりません。それは従来の発想、やり方を劇的に変えていくことからしか成し遂げられません。全部門一体となって、この変革に取り組んでいきましょう」
本社新社屋はこの変革の象徴であり、同社が創業60周年(2025年)に向けて、更には100年企業に向けて成長するドライバーとしての意味があるのではないか。つまり、同社屋建設という一大プロジェクトを起爆剤として「企業文化・風土変革」を行うための取り組みを開始する必要があるのではないか、というご提案でした。
この提案にご賛同頂き、CIプロジェクトが正式にキックオフしました。
全役員インタビューから
タスクチームの発足へ
CI(コーポレート・アイデンティティ)とは「企業文化を構築し特性や独自性を統一されたイメージやデザイン、メッセージで発信し社会と共有することで存在価値を高めていく企業戦略」と定義され、大きくMI(マインド・アイデンティティ=企業理念や方向性、考え方ビジョンの構築)、VI(ビジュアル・アイデンティティ=視覚的統一性を持たせたブランドツール)、BI(ビヘイビア・アイデンティティ=行動や発信を通した統一的アイデンティティの体現)の3つの要素で構成されています。
オーイーシー・CIプロジェクトの第1ステップ(MIの開発)は、同社・森秀文会長、加藤健社長以下、全役員への全15名、計15時間のインタビューから始まりました。初動として、経営を担っていらっしゃる皆さんの考えや想いをお聞かせいただくことが欠かせないからです。
インタビューの内容は、これまで歩んで来られたキャリアをお話しいただくことから始まり「これまで(キャリアの中で培われた価値観)」
「いま(自社をどう定義するか、時代の変化の中で残すもの、変えるものは何か)」「これから(60周年・100周年に向けて自社が社会に果たす役割、やるべきこと・大事にするべきこと、新社屋をどう活用したいか)」の3つのステップで進行しました。
同時に、同社にはタスクチームが発足していました。椎葉和彦取締役・常務執行役員をプロジェクトリーダーとした経営企画・総務・人事部門からの同社の皆さんと共に 我々(JL/L4D/CJ)が「チーム」となってプロジェクトに取り組んでいくことになります。
ワークショップから
MI(Mind Identity)の開発へ
役員インタビューに続いて行ったのは、2回のワークショップでした。初回は「オーイーシーの未来の方向性への気づきと共に、MI開発のヒントを得る」と共に「チームの一人ひとりがプロジェクトを自分ゴトと捉え“学習する組織”となる」ことを目的に、筆者(酒井)がファシリテーターを務め、タスクチームの皆さんが参加する形で2日間にわたって開催。
初日は、役員インタビューと同じプロセスで「これまで」「いま」を考え、経営陣の考えを咀嚼(そしゃく)しながらチームとしての見解をつくり、2日目は未来志向で、一人ひとりが心から望む社会の実現に向けて自社が果たす役割を徹底的にディスカッションしました。
第2回のワークショップは、各部門からの社員の皆さん15名にご参加いただいて開催しました。タスクチームに閉じることなく、多様な意見を募ることで多角的な視点を得ると共に、各部門の皆さんにもCIプロジェクトへの参加意識を持っていただくことが目的です。
ここでは、タスクチームの阿部俊介さんと坂本将幸さんがファシリテーターを務め、第1回ワークショップの流れを辿りながら、締めくくりとして、一人ひとりが「私のオーイーシー未来ストーリー」を宣言しました。
そして、役員インタビュー、2回のワークショップで紡がれた言葉と想いをもとにタスクチームで議論し、MIが開発されました。
オーイーシーCI:
そのMI(Mind Identity)とは
オーイーシーのMIは以下の4つの要素で構成され、ICT技術やデータを活用し、人を思いやる心を持って幸福中心の社会システムへの転換を進める意志を表明しています。
パーパス
(実現したい社会への同社の存在意義、覚悟)
ビジョン
(パーパス実現のために同社の目指す姿)
バリュー
(ビジョン実現のために同社の社員が大事にすること)
ストーリー
(パーパスやビジョンに込めた想いを語りかけるように表現したもの)
最後に
(本プロジェクトに関わらせていただいて)
筆者(酒井)は本プロジェクトの中で、主にここでご紹介した役員インタビュー~ワークショップ~MI開発に携わらせていただきました。そのどの段階でも濃密な時間を経験しましたが、特に印象に残った出来事をご紹介したいと思います。
ひとつは、最終的にオーイーシーの皆さんが「Action! Playful!」という言葉を選択されたことでした。正直なところ、これまで自治体プロジェクトを主な領域とされてきた同社の組織文化は「ド真面目(と、同社の皆さん自身が表現されていました)」であり、それとは真逆の言葉が最終的にタスクチームの皆さんの総意で決定されたことに驚きました。
それだけ「変わりたい!」という強い気持ちがあったことの表れであり、MI開発の過程でこれらの言葉をご提案はしていたものの強く推し切れなかった自分は、メンバーの皆さんの想いを十分に汲み取ることができていなかったのではないか・・ということが大きな反省です。
もうひとつの出来事は、ワークショップを終えた時、何人かの方々から「こういうことをやりたかったんです!」という言葉を頂戴したことでした。「Action! Playful!」という言葉は、突然変異的に生まれたものではなく、オーイーシーの皆さんが潜在的に求めていらっしゃったものであり、それがCI構築や新社屋の建設というタイミングを得て出現したのだということに、改めて気づかされています。
次回(第2回)は、MIからバトンを受け取る形で、その言葉をビジュアル化するVI(Visual Identity)の開発に携わった、レベルフォーデザインの安土潤一郎(「みんなのデザイン進化論」のプロジェクトリーダーでもあります)のインタビューをご紹介します。お楽しみに!
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