VIVANep10 VIVANTを面白くした物語の紡ぎ方と役所広司の包容力
VIVANT最終話。自分は大満足の結末でした。
ツッコミどころもあったけれど、総合点と勢いでぶっちぎっていたと思うVIVANT。
最後の感想は、VIVANTを面白くした、物語の紡ぎ方の話をします。
* * *
この作品を2話ぐらいまでみた時に、真っ先に思ったのが、
監督(脚本も担当)は、自分が撮りたいと思った映像をVIVANTにぶち込んだんだろうな、ということ。
VIVANTて、非常にマンガっぽい。
マンガでなら可能かも、という現実離れした破天荒展開の連続です。
ルパンか?スターウォーズか?〇〇か?
と、アニメや映画のシーンを思い浮かべた方も多かったと思います。
急所外して銃を撃つ、とか、実際には無理ですよね。
本人の技術だけではなく、銃の性能、メンテナンスにもよるから、奪った銃でいきなり急所外して撃つ、しかも胴体を…って…
いちかばちかすぎる…
櫻井司令、そんな作戦許すんじゃないよ…w
でも、VIVANTでは、それで正解。
なぜなら、カッコイイから!
VIVANTの世界では、カッコイイこそ正義!!
そして、そこがイイ。
多分、監督は、
”こんなシーンを撮りたい!”
という、リストのようなものが先にあって、
それが入るように、物語を構成していったんじゃないかと想像します。
例えば、
・主人公が仲間を撃つ(実は急所を外している)
・馬で街中疾走
・装甲車でパトカーに突っ込む
・チンギスに捕まる絶体絶命の場面で、助っ人モンゴル軍の派手な砲撃
・公安を巻いたところでカッコよく登場する仲間
・裏切り者に自白剤(→最近見ないが昔の小説・マンガのお約束)
・最強&最恐の敵が仲間に(→まさに少年ジャンプの法則)
・日本刀で成敗するシルエット
・自分だけには言って欲しかった…と迫るバディ(なに、この黒須のツンデレ萌え展開!)
・重要場面で印籠の如く天から降りてくるテントの旗(いつ仕込んだ!)
・父の罪を止めるため、銃を構える息子
・”神は一つではないという考えがあることで、相手の宗教に理解を示し、違いを超えて結婚もする。日本には考えの違う相手を尊重する美徳がある”云々のセリフ
などなど
適当に並べましたが、これだけじゃなく、カッコよーーーっ!という萌えシーンや若ベキに銃を向ける少年などの印象的な場面満載。
これらのシーンは先に、撮りたいシーンのストックがあり、そういう展開になるようにストーリーラインを組み立てていったのかな、と。
小説を書いていた経験から言うと、
このやり方は、作り手には大変楽しいストーリーの紡ぎ方ですよね。
ただし、気をつけないと、そのシーンを入れたいばかりに話の流れに無理が生じてしまう。
その矛盾点の調整が、書き手の腕の見せ所になるわけですが、泣く泣く一番入れたかったシーンを削らざるを得ない時もあります。
一方、ストリーの骨子が優先される作り方。
いわゆる先にしっかりとしたストリーラインがあって、エンディング(オチ)に向かうように、エピソードを構成していく方法もあります。
ミステリーなどは、基本この方法で書かないと、矛盾や破綻が生じますね。
(今期ドラマの、ハヤブサ消防団はこちらかも)
もちろん、創作する人は、どちらかを選んで書いていくわけではなく、どちらの要素も取り混ぜて作っていると思います。
前者の場合でも、おおまかなストーリーラインは決めておくでしょうし、後者の場合も、こんなセリフやシーンを入れたい!という思い入れがないと、無味乾燥な話になっちゃいます。
VIVANTは、圧倒的に見せ方というか、映像的面白さが優先されているので、前者の要素をより強く感じます。
場面場面はどこを切っとっても、カッコいい、泣ける、爽快、印象的。
創作者なら一度は書いてみたい、胸アツ萌え萌えシーンの連続。
その代わり、ちょいちょいツッコミどころというか矛盾点もある。
でも、そんなことをものともしない、怒涛の勢いとスピード感。
ワクワク、ドキドキ、ハラハラ、キュン、ほっこり…だったり
恐怖、怒り、困惑、笑い…だったり
視聴者を虜にするべく、様々な感情に持っていく場面がいとまなく繋がっています。
そして、最終的には、爽快感、カタルシスにちゃんと落とし込むという。
お見事としか言いようがない。
視覚と感情が全部持っていかれますし、それが気持ちいい。
最終話も、ところどころ
んなわけねーだろ〜、
とツッコミながらも、しっかり泣かされていましたw
理詰めで考えたい人には、ちょっと不満は残るかもしれません。
だって、そもそもの前提で、法治国家では起こっちゃいけないことしか起こらないですからね。
そういう意味では、ファンタジーだと思って観た方が楽しめます。
監督も、もともと考察系を狙っていないとおっしゃってましたし。
しかし、萌え萌えシーンをぶっ込みつつ、
勧善懲悪ではなく、正義と悪が見方によってひっくり返る作品テーマはとてもよかったです。
* * *
さて、
矛盾点を考えるいとまもなぐらいに、感情を揺さぶる展開をぶつけてくるVIVANTですが、やはり冷静に考えれば不可解なところもたくさん。
その、不可解に、説得力を与えたのは、紛れもなくノゴーン・ベキ役の役所広司さんだったと思います。
今さら、役所広司を語るなどおこがましくはありますが。
この話の中で、一番嘘っぽいのが、テントという組織だし、それを作ったノゴーン・ベキの存在です。
ところが、父としてのベキになった時の、役所さんの包容力ったら。
優しくもあり、厳しくもあり、どこか弱くもあり、ちゃめっ気もあり。
ただの、いい父ちゃんやん…
と思わせてからの、
テントのベキの顔になった時の威厳。
役所さんの、息子や組織だけでなく、物語の矛盾も何もかも包み込むような包容力の演技が、全ての嘘っぽさに説得力を与えていたなと思いました。
加えて言えば、若ベキをやった林遣都さん。
彼だけが、劇画ではなくドキュメンタリーを演じていて、それもベキの存在に説得力をもたせていましたね。
* * *
最後はテントのベキとして公安に裁かれることではなく、
乃木卓として息子に裁かれることを選んだ彼。
この後は、乃木卓でもベキでもない第3の人生を歩むのでしょうか。
そんな妄想も抱かせる最後の落とし方も、非常に好みではありました。
VIVANT=生きる
3ヶ月間十分に楽しませていただき、ありがとうございました。
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