治験は楽なバイトなのか?それとも命を繋ぐ希望なのか?
治験のバイトって、ネット上で聞いた事ない人はいないと思います。
数日〜数週間泊まり込みで薬を飲むと○万円もらえるよ、って奴。
他には、何回か通院して薬を飲むと○万円もらえるよ、って奴もあります。
通院して薬飲めばお金もらえるじゃん。
ラッキー!楽なバイトじゃん。
って思うかもしれない…
はたして、治験=楽なバイトでいいものか、CRCとして思うことがあります。
治験って何?もらえるお金って何?
治験とは、「くすりの候補」のヒトにおける効果と副作用を確認し、国の承認を得る(主に保険適応で病院で使用できる薬になる)ための科学的なデータを集めることを治験と言います。
詳細は私のnoteをご確認ください。
治験でもらえるお金は、負担軽減費と呼ばれるものになります。
治験に関する1回のご来院につき7000円〜10000円程度で設定されていることが多いと思います。
治験の場合は、治験のための通院や病院に拘束される時間が多いので、その負担軽減のために設けられています。
詳細はこちらのnoteをご参照ください。
臨床試験の仕組み上、高価にならないように設定されています。
治験は手間がかかりますし、病院で拘束される時間も長い場合も多々ありますので、時給換算すると最低賃金を下回るかもしれません。
WEBで応募できるの?
治験の患者さん参加の募集状況の確認は①〜③が良いかと思います。
①WEB広告
治験に参加される患者さん(〝被験者〟といいます)を集める手法のひとつに、WEB広告を用いているからです。
それぞれの病院が個々に広告を上げるより、専門の広告会社に依頼するケースが主流です。
よく見る〝治験のバイト〟はこちらの印象が強いです。
ただ、どんな試験か、など一覧でわかるようなものではないかなぁ、と思います。
②病院のホームページ
大きな病院ですと、HPに患者募集中の試験一覧が掲載されています。
気になる試験があったら、病院の担当部署に電話をして問い合わせる形になります。
オススメです。
③臨床試験の実施状況の検索
患者募集中の試験など、まとめて検索することも可能です。
厚労省のHPにWEBサイトがまとめてありますので、こちらにも掲載させていただきます。
こちらから検索されるのもオススメです。
〝治験のバイト〟で危ないことってある?
命に関わる症状が引き起こされた事がある
※1:有害事象とは試験中に被験者に起きた良くない事象全てのことです。副作用とは、主目的以外の薬の作用のことです。副作用と有害事象は同じ意味ではありません。重篤な有害事象とは、入院治療が必要な程度や、致命的な有害事象が起きた等、通常より症状が重い有害事象ということです。
治験薬の副作用については未知な部分があります。
今後もこのような致命的な事件は起きる可能性はゼロではありませんので、〝治験のバイトは楽で簡単〟というご認識があるようでしたら、こちらの内容を頭の片隅に入れておいていただきたいです。
重い副作用がでるかも?
どんな薬やサプリメントでも、①〜⑤の副作用は共通しています。
添付文書に発現頻度が不明な副作用、と記載されているものが多いと思います。
あまり起こらないから大丈夫じゃん?と思うかもしれませんが、起きたら非常にたいへんな症状になります。
生死に関わる時もありますし、入院で治療が必要な場合もあります。
こちらは治験薬でなくても、市場で売られてる薬でも、サプリメントでも、起こりえます。
私の経験上、腎機能障害と中毒性表皮壊死症以外、治験中に起きた患者さんをみたことありますよ。
治験薬が原因か否か等の秘密は、秘密保持でひっかかるかもしれませんので言えません。
治験以外の治療薬がない人だっている
難病や抗がん剤の試験あるある、だと思います。
私がCRCをしている時にたくさん出会いました。
インフォームドコンセント(※2)をする際に、この治験薬以外に薬がないとおっしゃる方や、先生の診察の際に有効な治療法がなくなったので余命○ヶ月になってしまった、などお話しされる患者さんもいらっしゃいます。
体調としてはお元気な方々ですので、こちら側も心苦しい部分があります。
ギャンブル要素も強い部分ですが、少しでも治験薬が効いてほしいと思います。
もちろん中には治験薬が良く効いて、何年も使用されている方もいます。
私はそういう患者さんは、同じご病気の患者さんたちの希望の星になるのではないかな?と思っています。
治験中に○年使っていた患者さんがいた(orいる)薬が承認されて日本で使えるようになるって、喜ばしいことではありませんか。
また、世の中には治療法がない病気もたくさんあります。
研究が進み、薬として日本で市販されるには治験が欠かせません。
医療の進歩のためには研究や治験が必要です。
治療法がない病気がまだまだあること、治験で命を繋いでいる人がいること、次の治療としての治験を望む方々がいらっしゃることをCRCとして忘れたくはありません。
※2:治験参加の同意を患者さんがする前に、担当医やCRCが治験について説明をします。説明を聞いた上で、患者さんは治験参加について同意をします。そのようなプロセスのことをいいます。
さいごに
治験薬=最期の希望、という患者さんもいらっしゃるので、安易に治験は楽なバイトと言って欲しくない気持ちがあります。
もちろん治験には、治験治療の効果に期待してる方もいますし、お小遣い稼ぎ目的の方もいらっしゃるのは事実です。
どのような目的であれ、参加者ひとりひとりの協力があって日本の医療は進歩していることには間違いないはずです。
その面を考えると、〝バイト〟というのは否定しません。
ただ、治験薬には未知な副作用もありますし、試験によっては参加者にご実施いただかないといけないタスクがたくさんありますので、〝楽〟かどうかは再検討が必要ですよ。