農業のことを考えるときの3つのポイント
最近iPadを購入したのと同時に勉強欲も湧いてきて、本を読んだり動画を見たり、Podcastを聞いたりで、改めて農業のことや自分の働いている業界について考えています。
どの業界もそうだろうけど、さまざまな問題や課題があって、それは一つだけではないし、いろんなトピックや見方があります。
例えば農業の課題もいろいろ言われている。
高齢化の問題、それに伴う耕作放棄地の増加。
また少し前から市場外流通も増えて、市場流通の衰退と言われていたり、中間業者が搾取してるとか(どこかの社長が昔言っていたなあ)、野菜の価格暴落で畑に野菜捨てるなんてもったいないとか、それらを含むフードロスの問題。
環境問題の視点から脱プラの声があったり、有機がいいとか、みどりの戦略これからどうなるのか、給食をオーガニックに、なんて声もあったり。
まあいろいろありますが、いろいろ知っていくと、いろいろ難しいなあと思います。
そして最近気づいたことは、問題として関心を持ってくれている食べ手(消費者とは呼びたくないんだよなあ)と生産者さんの間にギャップがあるなと思いました。また、わたしも下記の3つのことを知らずに、考えていた時期があったなと思っています。
そこで、農業のことを考えるときに、この視点忘れさられてない?ってことを3つ書いてみようと思います。
①農家さんってひとくくりにできない
「農業は」とか「農家さんは」って言って、それらをひとくくりにしてなにかのトピックを考えてしまいがちです。けれどそもそもみんなどんな農家さんを想像しているのでしょう?
それらは「飲食店」とか「ファッション業界」などをひとくくりにするのと同じぐらい、かなり大雑把なくくりです。
「飲食店」と言っても
「マクドナルド」や「ケンタッキー」などの全世界にあるファストフード店。
「サイゼリヤ」や「ガスト」などのファミレス。
吉野家、松屋、すき家などの日本中にある牛丼チェーン。
わたしの地元、静岡にしかない「さわやか」
(自社で製造?しているらしく、期限or届けられる距離や時間の問題から静岡県外に店舗置くのはできないらしい)
はたまた、全世界にある「スタバ」も飲食店という分類には入るし
京都にしかない、コーヒー屋さん、カフェも飲食店です。
それらの全ての飲食店の問題や課題が違うように、「農業」「農家さん」もひとくくりにして何かを考えようとすると、そもそもそれって土俵が違う話やんってことあります。
飲食店でいえば、チェーン店にしてたくさんの人に味わってもらたい、というお店もあれば、家族経営の地元にしかないお店もあります。
農業も同じで「たくさんの従業員を雇って、雇用を作りたい。圃場を広げたい」という農家さんもいれば、「家族が食べていければそれでいい」というような農家さんもいます。
どちらがいい、悪いではなく、価値観や考えのちがいです。
農家さんのちがいでなにが変わってくるのか次回、また書いていきたいと思います。
②流通させる人、売る人の都合がすっ飛ばされている
最近気づいた大きなことは、さまざまな課題があるなかで、食べる人が農家さんにこうだったらいいのになあというようなことも、実は間にいる「市場、卸、小売」などの流通させている人、売っている人の都合がすっ飛ばされているなあと気付きました。
例えば規格の問題。
JA出荷では厳格な規格があります。それらに入らないものは市場には出せません。
「そんなのもったいない。少しぐらいの規格外だったら買いますよ。」なんていう食べ手の人もいますよね。わたしもそうです。そしてそれが過度になると
「規格なんていらない、なんで必要になるの?市場流通はそれを妨げている。」だなんて言うひとが出てきます。
わたしもその気持ちはわかりますが、規格がないと、こうなります。
同じ農家さんからの「ミニだいこん」です。
まあたしかに、ミニだけど・・・これを売るのって難しくないですか?
食べる人にとっては「これ同じ値段なの?」って、ってなりませんか?
スーパーの青果コーナーって何種類の野菜がありますか?
常時、20種類以上の野菜が並んでいるのではないでしょうか?
全ての野菜たちがこんなに、ちぐはぐだったら「売る側」は棚に並べるのも、商品管理も、値付けも、もっと大変になります。(ただでさえ商品数が多く、粗利も低いのに、そんなに手間をかけていられない)
そして規格がバラバラだと輸送するのも大変です。
↑のようないろんな大きさのだいこんであれば、こっちのダンボールには15本入ってるけど、こっちには10本しか入ってない。
そもそもダンボールの大きさが違うから運びずらいし、こんなまちまちなダンボールをトラックで運ぶにも無駄なスペースができる=輸送コストが上がります。
だからダンボールに入る規格も決まっているし、ダンボールも決まっているのです。
わたしも農家さんが作ってくれた野菜は全て現金にできたらいいと思います。でも食べれればいい、規格外や少しの痛みなら大丈夫。も「流通させる人、それを店頭に並べて売る人」からしたら「はい!喜んで売りましょう」だなんて簡単には言えないのです。
規格、脱プラ、品種などの食べる人にとっての「こうだったらいいのにな」は、売る人にとっては厄介な問題なのです。
農家さんの気持ちもわかります。食べる人の気持ちもわかります。
でも売る人にとっては、どちらの気持ちも考慮しながら、「品質も量も安定した、売れるもの」を店頭に置きたいのです。
やさいを作るのも大変ですが、売るのも大変ですし、さまざまな都合があるのです。
③直ぐには変えられないそもそも論
そもそもこういう視点で考えたことなかった、いやそもそもそんなの知らなかったし。ということがいくつかあります。
指定産地制度
「指定産地制度」というものがあります。
よく食べられる野菜は全国で年間通してリレーしているのです。
だから一年中じゃがいも、玉ねぎ、にんじん、ナス、ピーマン、だいこんがスーパーに並びます。
逆にこれがあるからこそ、この地域ではこれを作ってね。という品目が決まっていて、それ以外のものを作っても買ってもらえません。自分の作りたい野菜がある農家さんにとっては、関係のない制度ですね。(出したくても出せない農家さんもいるということ)
端境期
ハザカイキっていうのがあります。時期と場所によっては年に1,2回ぐらい。
冬野菜が終わって、夏野菜が出てくるまでの、2月終わり〜5月はじめぐらい。
夏野菜が終わって、冬野菜が出てくるまでの、10月〜11月ぐらい。(あんまりないかも)
その時期は野菜がないのです。本当にない。
スーパー、八百屋さんにいけばそりゃあります。
それは作る人も売る人も頑張ってるからです。売る人が頑張って集めているからです。
地産池消をすすめようとしても、端境期の時期はなに野菜がない!売るものがない!だなんてことになります。(その時期は小売店は本当に大変です)
また、端境期があるのに年中野菜があるのは、指定産地制度があるため。全国規模で、この時期にこれ作ってねってなってるから一年中食卓がたのしいのです。
全量買取制度
市場の卸売業者は農家さん(JA)が持ってきたものは全て買い取らなければなりません。拒否できないのです。だからたくさん持ってこられたらそれを売り切らなくてはならないから価格も下がる。
農家さんにとっては持っていけば全て売れるからうれしいですが、価格がいくらになるのかわからないというのは難しい問題です。
そしてどこかで絶対にロスが出ます。
価格が下がりすぎて、出すのも諦めて圃場にすき込むか、
市場に出回って、小売店や八百屋さんで売り切れないか。
価格も量も読めない
飲食店でも、モノづくりでも、これぐらいの原価で、これぐらい時間を使って、何人で作業したので、これぐらいの粗利のせていくらで売ろう。という価格設定ができます。
けれど、市場出荷の野菜は需要と供給で価格が決まるため、出荷したあとに価格が決まります。(一部相対取引、出荷する前から価格が決まっている取引もあるようです)
また、天候に左右されて、豊作だったり不作だったり、また生き物と同じように野菜も病気になることがあります。病気にかかって、それが広まり、その畑のものが全滅した、ということも時々聞きます。
相対取引や、市場外に流通させたら価格については安定するかもしれませんが、後者の天候や病気での収穫の不安定さはどうにもなりません。
薄利多売、品質劣化が異常に早い
例え、市場を通さなくても、大根1本売って100円、150円です。
それらを作る経費を考えたら、利益は数十円。
それなりの量を売っていかなければなりません。
そして、鮮度が命です。本や洋服、雑貨のように、数ヶ月在庫しておけるものは多くはありません。(一部、じゃがたまニン、カボチャなどは在庫できるけれど)出来すぎたとしても、基本的には在庫できないので、いま、直ぐにでも売らなければならないのです。
収穫次第、品質は落ちていくので流通、販売するのも、他の小売業とは違います。
アマチュアでも売れる時代≒プロとアマは違う
最近は、「家庭菜園」レベルな人でも、メルカリなどで野菜を売っていることもあります。
また、定年退職した方が時間ができて、野菜を作って、道の駅で売ったりだとか。
畑をはじめたり、それを売るという選択肢が増え、ハードルが下がったことはとても良いことだと思います。
けれど、プロとアマは違います。
人生をかけて投資をして、人を雇って、天候に収入も左右されてしまう生業としての農業。
収入よりも自分が楽しみたい、農的暮らしっていいよね、という農業、は全く別物ですし、同じ土俵の上で語るのは違います。
趣味でやる釣りと漁師さんが違うのと同じです。
家庭菜園、農的暮らし、半農半X的に楽しむのであれば
自然農、自然農法、不耕起、自家採取、種どり、在来種固定種といったものは相性がいいなと思います。
そして、それらを積極的に扱いたいという小売店は少ないです。
②で書いたように、売る人は、「品質も量も安定した、売れるもの」を売りたいからです。
全ての項目に注書きを入れたいぐらいですが、今回はここまでにしておきます。
なにかの、誰かの参考になればうれしいです。
そして一緒に考えていければいいなと思っています。