秋の読書感想文~認知症世界の歩き方~
私はこの本を手に取った時、まずこれが本当に認知症について書かれている本なのかと装丁をみて思ったのでした。認知症と言ったら学術的なもので、専門性が沢山あってそれっぽい装丁が多いような気がします。しかしながらこの本は一見旅のようで、手に取る最初の段階から旅が始まり何が起こるんだと感じさせてくれます。思わずどんな内容か気になり、読んでみたい気にさせてくれたのでした。
筆者の語るようにとにかく「本人」の視点で認知症を知ることの出来る本を目指しましたとあり、書いてある言葉自体も専門用語は極力使っていなく、分かりやすく書いてある工夫が凝らされているなぁと思ったのでした。また、色が多くて見やすくイラストも多用してありますので入り込みやすいのではと感じました。
筆者の語っている認知症というのはこの一言に尽きています。
認知症とは「認知機能が働きにくくなったために、生活上の問題が生じ、暮らしづらくなっている状態」
そして認知機能とは、「ある対象を目・耳・鼻・舌・肌などの感覚器官でとらえ、それが何であるかを解釈したり、思考・判断したり、計算や言語化をしたり、記憶に留めたりする働き」のことです。
この表現でもいかに分かりやすく端的に専門用語を使わずに、説明しようとしているのかという意図が見えます。現に読み進めていても、小難しい言葉は出てこなくスラスラと読めたりします。本当に当事者から見ての困ったことが本人の口から出ているかのように、たくさん紹介されています。そしてそれだけたくさん、多くのことで悩まされるのだなぁと分かるようになります。私は12年認知症専門で仕事をしていたので、詳しいことも勉強してきたのですがどちらかというと認知症ってどんなものなの?という取っ掛かりで入る本で合っているのではないかと私は感じます。
そして本書に書いてあるように頼れる仲間をつくる、当事者とつながる、専門職に相談するなど提案されてありますし、あくまでこれをきっかけとしてもっと関心を拡げていければなと考えたりもします。また巻末に認知症世界の歩き方のポータルサイトの紹介があり、この本と連動して楽しく学べる仕掛けもあるとのことです。
そんな読み物のようにどちらかというと初めから入り込めつつ、細かい特徴を分かりやすくイラストにて、すっと頭に入る面白い本だと感じました。旅をするように楽しめて、小さめの子どもから読みやすい本にもなっているのかなと感じます。よく考えられたイラストも工夫が凝らされていていつまでも見ていたい本でした。