what a wonderful worldとはこういうことか
2024.4.12
新開地のcafe kitchen aiaiにて、「Classic Jazz L ive 2024 Hajime&Oji feat. Yoichi Kimura」春のクラシックジャズライブ2024に行って参りました。
終演後に「あゝ人生とは素晴らしい!」と思わずにいられないライブになった。
古き良きクラシックスジャズでありながら洗練された演奏。はじめさんのピアノもおおじさんのドラムも軽やかな中に熱がある。耳に心地いいけど決してBGMにはならい音に対する熱。うまく言えないけど音楽を心から楽しんでいる熱量が高くて、主張は強くないけどしっかり聴かせる演奏だなぁ。
そしてこの日のライブで1番心を打たれたのは木村陽一さんの歌。はじめとおおじおふたりの演奏はもちろん素晴らしいのだけど、おおじさんのお父様:木村陽一さんが全部持っていってしまった。
小学生の時に進駐軍の方が聴いていたサッチモのレコードに感銘を受け、それからジャズ人生が始まったという陽一さん。何と御年86歳。通常86歳くらいになると耳が遠く音の聴き分けが難しくなられる方も多い中、しっかり音やリズムを聴き分けておられた。また英語の発音も素晴らしく、味わい深くも華がある歌を聴かせてくださいました。
正直に言うと、自分があまり目立たない人間ということもあり、陽一さんのような天真爛漫な明るさと華があり、無意識に全部持っていってしまうタイプの人が苦手だった。私がたくさん考えて伝えようとした言葉より、天真爛漫な人が軽やかに言ったひとことの方が伝わったり好かれるということは何度もあった。私が考えたり遠慮して言えなかった言葉・できなかった行動をいとも簡単にやってのけ、人に愛される人を見て泣きたくなることは何度もあった。そんなの私が勝手に我慢して、勝手に嫉妬してるだけなんだけど。そんなことはわかってる。わかってるけど、自分ができないことを目の前でされるとイライラしたり悲しくなって嫉妬してしまう自分を見たくないからこそ苦手だった。たぶん寂しかったんだろうな私は。悪気なんてないのに嫉妬されてやっかまれる側の気持ちなんて考える余裕はなかった。
だけど、この日のライブで歌う木村陽一さんを観て「結局、自分と自分の人生を愛し、喜んで楽しんで生きている人が輝くんだなぁ」ということを思い知らされた。木村陽一さん自身が「what a wonderful world」を体現している姿を目の当たりにし、羨んでばかりいるのではなく私も自分や自分の人生を愛して喜んでいようと思えた。陽一さんの歌やステージでの振る舞いから、そんなことが伝わってきた。
それはもちろん軽やかで耳と身体にすんなり入ってくる素晴らしい演奏をされるはじめさんのピアノとおおじさんのドラムがあってこそでもある。
自由すぎるくらいのびのびと歌わせてもらえる懐の深い音楽家のふたりの実力があってこそ、歌の素晴らしさや歌い手の良さが引き立って輝いたステージ。
ライブ中、陽一さんが歌い終えた後に「お父さんが言ってた一拍に込めるって言ってた意味が何かわかった気がする」とおおじさんがポツリと言っていたのが印象的だった。とてもいいシーンだった。陽一さんも嬉しそうだった。
今年の2月終わりに大動脈解離で緊急入院されていたおおじさん。去年の夏に同じcafe kichen aiaiでライブをされていて、その際お誘いくださった時は私が左足靭帯損傷で休職中でライブ等に出向いたりできない頃。行きたいけどタイミング合う時に…と思いながら足を運べずにいたのだけど、行けるタイミングがあるなら少し無理をしてでも行こうと足を運べてよかった。
そんな中、実はこの日私はえらいことをしでかした。感動のライブレポとして何も言わずにここで終わっていいのかも知れないけど書いておこう。
お店に到着してミュージックチャージを払おうとして、私は財布を忘れていたことに気づいた。
カバンの中をひっくり返すほど見たけど、ない。冷や汗をかきながら何度探しても、ない。「もうダメだ。忘れたんだ」とその事実を認めて諦め、腹を括って「申し訳ないし、今から垂水まで財布を取りに戻ったらライブに間に合わないので帰ります」とお店の方に伝えて出ようとすると「せっかくここまで来たのだから…」と親切な方が助けてくれた。そんなことあるのか!? what a wonderful world!
助けてくださった方に何度もお礼を伝え、ホッとひと息ついてからオムライスとコーヒーを注文した。ありがたさを感じ入りながらオムライスを食べ、優雅にジャズの演奏に酔いしれていた。
ライブ後半、ふと私の白いニットに思い切りデミグラスソースをこぼしていたのに気づいた。何歳なんだ私は。ショックを受けた。本物のドジは洒落にならん。
しかしだ。財布を忘れ、オムライスのデミグラスソースを白いニットにこぼし、自分のダメさに打ちひしがれても、私はこの日のライブを観終わった時には「あゝ人生は素晴らしい!」と思えた。
どんなダメな自分でも、自分を恥じずに自分や自分の人生を愛して、遠慮なく輝いていこう。自分が喜んでできることをして、時には遠慮なく人に助けてもらいながら、人や世界を愛していこう。陽一さんの歌とはじめとおおじの演奏で、そう思えたのです。まさにwhat a wonderful world。あの名曲を音楽を通して体感した夜になった。
はじめとおおじの今後のライブスケジュール
気になった方はぜひ一度ライブに足を運んでみてください。