【歌舞伎鳩】御浜御殿綱豊卿、伊勢音頭恋寝刃ほか(三月大歌舞伎 / 歌舞伎座)
ヘッダーの仁左衛門さん、めちゃくちゃにかっこよくないですか……? これは歌舞伎座でポスターを撮影したものですが、画質荒いのでもう本家で見てきてください。
見ましたか? かっこいいですね。鳩はど素人であるため、どの演目も大体内容を知らず、もちろんこの「御浜御殿綱豊卿」も知らなかったのですが、ビジュアル出た途端に、かっけ〜〜〜〜〜!!!と声が出たのはこれが初めてです。演目名だけで夜の部のお切符を取っており、昼は「傾城道成寺」を幕見しようかな〜程度だったのですが、まあ、行くよねこれは。
もはや昼の部もお切符とったら良くない? ともなりましたが、ともかく、幕見でした。
傾城道成寺
ざっくりとしたあらすじ:
入水から救われた平維盛が、安珍(尾上松緑)と名を変えて匿われている紀州の道成寺。
仏門を志した安珍が剃髪する日、そこに傾城清川(中村雀右衛門)が現れる。
清川は実は安珍と深い仲であり、安珍恋しさに道成寺まで訪ねたのであるが、かき口説かれても安珍は出家の志を曲げることはない。
そこへ僧・妙碩(大谷友右衛門)が出会し、灯火に映る清川の影が、大蛇の姿であると問いただす……。
きちんとしたあらすじはこちら。
安珍清姫のお話のバリエーションの演目。
傾城清川は実は清姫の霊である、というわけです。
初めは娘らしく安珍を口説いていた清川がだんだんと本性を現し、凄みがかかってくるのですが、その妖力で安珍を無理やり引き寄せるものの、最後自分の手で引き寄せる時は、とても柔らかい手つきになるのが印象的でした。
自分を置いて出家する安珍が恨めしい、ながらも、結局好いた人なので、そうなってしまうんだろうなあ。
最後は法力によって安珍にも近寄れなくなってしまい、消えていくのですが、法力強すぎてあんまりあっけないので、清川が可哀想に思えたりもしました。
はじめ、舞台下手の襖が開いたと思ったらその向こうにお囃子連中がおり、知らないパターンすぎてちょっと面白かったです。建物内から始まるのが、最後屋外になるので、その大道具を取り払うと、屋外にお囃子連中が座っているようになっていて、うまい舞台の使い方だな〜となるなど。
御浜御殿綱豊卿
ざっくりとしたあらすじ:
松の廊下の刃傷沙汰から一年。
次期将軍と目されている徳川綱豊(片岡仁左衛門)の屋敷・御浜御殿では、お浜遊びが行われている。
そこに綱豊ご寵愛の中臈お喜世(中村梅枝)の義理の兄・富森助右衛門(松本幸四郎)が来て、そのお浜遊びを隙見したいとお喜世に願い出る。
実は助右衛門は、赤穂浪士。お浜遊びには吉良上野介が来るということを聞きつけ、その顔を確かめたいという目論見があった。
御祐筆江島(片岡孝太郎)のはからいで助右衛門は隙見を許されたものの、綱豊卿と直々に対面することに……。
きちんとしたあらすじはこちら。
「元禄忠臣蔵」の中の一幕(のようです)。忠臣蔵のお話たくさんありすぎていまだに仇討ちの場面を見たことがない。その周辺の話ばかり見ています。
綱豊卿は、"浅野家のお家再興"と"浪士たちの仇討ち"の間でどうするべきか悩むのですが、鳩があほなもんで途中までお家再興したら仇討ちの権利(権利というか体裁というか)がなくなるということに気がついていませんでした(あほ)。そういう論理なんですね、またひとつ学びました。
浪士たちの仇討ちの覚悟を探るために、綱豊卿がめちゃくちゃにけしかける場面、面白かったんですが、まあ綱豊卿もお人が悪い!となりますね笑 ぽろっと白状することを前提にしているので煽りまくるしかないのですが。
「今に上野介は米沢の城に隠居するぞ!そうしたら浪士には絶対に手が出ず、畳の上で往生するぞ!(意訳)」とか、的確に煽っていく……。ただやられる側も負けていないのがまた良いです。次期将軍(候補)相手にそこまで強い口が利けるのは覚悟が決まっている証拠です。ここで計画頓挫してしまったら元も子もないものね。しかし、最終的に「お前は俺に憎い口を利いたからな!(意訳)」と言って、何も明かさず立ち去る綱豊卿はやはり人が悪いて……。
このやりとりの間、だんだん日が暮れるように照明が橙から青っぽくなっていっていた(と思う、気のせいでなければ)のがすごいなあと思いました。だいぶ長い間押し問答していたというのが体感として分かる。
綱豊卿が何も言わずに去ってしまったので、助右衛門も「今ここで吉良を討たねば」となるのは分からんでもないな、と思っていたら、最後鳩もともに綱豊卿に諭されました。すみません。武士の心が足りてなかった……。
細かいところ
・最初に散々格好良いと騒いでいた綱豊卿のお衣装ですが、歌舞伎経験値がチョットたまったために、イヤホンガイドで初めて展開のネタバレをくらいました(ネタバレ?)。
・お浜遊びで丁稚に扮装したおいぬ某(小川大晴)に、伊勢参りの施しをねだられた綱豊卿、「俺は一文も持ったことがない、一文なしだな!」みたいなこと言うの、さすがに殿様ジョークすぎて面白かった。綱豊卿に「ケッ!」てできる子供も可愛い。
伊勢音頭恋寝刃
ざっくりとしたあらすじ:
阿波の蓮葉家の家老の息子・今田万次郎(尾上菊之助)が紛失した家宝・青江下坂の刀とその折紙は、お家乗っ取りをもくろむ藩主の弟・蓮葉大学によって奪われた。それを取り返すため、家来筋にあたる御師・福岡貢(松本幸四郎)が奔走する。
蓮葉大学の密書を奪い取ったり、太々講の奉納金横領の濡衣を着せられたりしながらも、なんとか刀を奪い返した貢は、叔母おみね(市川高麗蔵)からその刀との因縁を聞かされる。青江下坂の刀によって、貢の祖父・父は命を落とし、家は没落したのであった。
取り戻した刀を万次郎へ渡すため、貢は、万次郎の恋人・お岸(坂東新悟)や貢の恋人・お紺(中村雀右衛門)のいる油屋へ赴くが……。
きちんとしたあらすじはこちら。
伊勢の遊郭の血みどろのやつ、という雑認識でまた観ていましたが、前半は結構コミカルなんですね。サービス精神が多くてたくさん笑った。
伊勢の遊郭の様子や、夫婦岩などが出てきて、このお芝居は当時、動く名所絵図的な役割もあったんだろうなと思いました。行きたいが行けない場所を目の前に現してくれたらそれは楽しいでしょう。鳩も夫婦岩行ったことないから行ってみたい。
この当時江戸→伊勢神宮に最短でも40日近くかかったらしく、また旅費も数百万とのことで、現代の旅との差を感じますね。一生に一度できるか分からない旅。旅ひとつが途方もなく、そこに含まれるろまんの大きさを想う。
後半は、貢がずっとなじられ耐える場面が続くので、見ているこっちも緊張します。仲居万野(中村魁春)が、お鹿(坂東彌十郎)を利用はするし貢に対する言動が嫌味すぎるしでもう最悪。鳩の方が、うわあもう全員殺っちまえ!!!!!などと思っており(最悪)、気が短いらしい貢、結構理性的じゃない?とすら思いました。そして最後、だいたい悪いのだけ殺して正気に戻ったのもえらい。血みどろの貢にお紺が縋り付いて、料理人喜助(片岡愛之助)が刀の血を拭うあの見得、本当に絵のように決まっていてとても格好良かった。
細かいところ
・筋書を読んでいて、万野は貢に惚れているという話もある、というようなのを見かけたのですが、それはさすがに無理じゃない……? 元恋人とかならまだしも、あれで惚れているだけなら、万野は一体あのなじりをどういう気持ちでやっているんだ……。
・全然関係ないのですが、たまたまこのお芝居を見た後に、横溝正史「黒猫亭事件」を読んでいて、「伊勢音頭の万野のような女」といった文章を読み、なにか鳩生の伏線回収をしました。見たから知ってたけど、見てなかったら分からなかった……。
六歌仙容彩 喜撰
ざっくりとしたあらすじ:
六歌仙のうちの一人、喜撰法師(尾上松緑)をモチーフにした舞踊。
美しい茶汲み女・祇園のお梶(中村梅枝)を口説いたりなんかする。
きちんとしたあらすじはこちら。
徳の高いお坊さんだった?人を、酒飲みの色好みにしてしまうの、おおらかで面白いですね。いいんだそれ、結構罰当たりじゃない?笑 でもお坊さんも人間なので、良い女は好きだよね。仕方ないね。
春爛漫の風景の中でお坊さんと綺麗な女性が踊るので、見ていて華やかで楽しかったです。所化がたくさん出てきて踊るのも好き。
伊勢音頭で血みどろのあとにこの演目は、なんというかただ心が弾む感じで、気分が明るくなるので良かったです。
公演概要
三月大歌舞伎
2024年3月3日(日)~26日(火)
昼の部:菅原伝授手習鑑 寺子屋・傾城道成寺・元禄忠臣蔵 御浜御殿綱豊卿
夜の部:伊勢音頭恋寝刃・六歌仙容彩 喜撰
歌舞伎座
ついに開場前に、携帯電源オフのアナウンスが入りましたね。
鳩は割と歌舞伎座のゆるい"芝居見物感"が好きではあるので、袋がガサガサとか前屈みがどうとかを、あんまり気にしていないというか、まあ人間がたくさん集まりゃあな、程度に思ってはいるほうですが、上演中の携帯は確かに会場全体に鳴り響くので嫌です。というか一気に現実/現代に引き戻してくる音なので気になるという感じなんですかね。
今年に入ってかなりスタッフさんがその辺ピリピリしてるというか、そんな感じはしていたのですが、ま〜改善されなかったのだろうなあ……。確かに鳩も、本編中はないのですが、暗転で舞台転換中に鳴ったのを聞いたことがあるし……。劇場内は圏外なのでアラームの切り忘れとかではあるんだろうけど。これを機に少しでも改善されると良いですね。
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