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【歌舞伎鳩】毛抜ほか(團菊祭五月大歌舞伎 / 歌舞伎座)【感想】

見てみたかったやつ〜と今月も呑気にお切符を取ったわけでございますが、先日見た「鳴神」と「毛抜」、同じ作品の別の場面なんですね、知らなかった。またひとつ学びました。




鴛鴦襖恋睦おしのふすまこいのむつごと おしどり

ざっくりとしたあらすじ:
源氏方の河津三郎尾上松也)と平家方の股野五郎中村萬太郎)は、遊女喜瀬川尾上右近)をめぐって相撲で勝負をする。勝ったのは河津。遺恨を残す股野は、人の心を狂わすという雄鴛鴦の生き血を酒に混ぜ、河津に飲ませた。
つがいを殺された雌鴛鴦は、喜瀬川の姿を借りて、河津の前に現れる。雄鴛鴦は河津の姿を借り、股野を責めるのであった。
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かわいい鳥が出てきた!と思ったら秒で殺されてヒエ……となるなど。
妻鳥を殺されて恨めしい、寂しい、妻鳥の生き血を飲まされたあの人間がもはや恋しい、という踊りをしていたのですが、いや、あの、妻鳥を殺したやつ!!! そっちを殺れ!!! になりました……鳩は物騒ですね……(しかしちゃんとあとのほうで復讐はしていました)。
そして雌鴛鴦の右近さん、恨めしい女の表情が大変に良い。白拍子花子を思い出しました。とても素敵です。

そのほか細かいこと

  • お相撲を踊りに落とし込むのが面白かった。踊りはなんでも見立てられるんだな。

  • お囃子に乗せて台詞を言う部分があり、日本のミュージカルといえる立ち位置はやはり歌舞伎にもあるのかなあと思いました。

  • 座っている台ごと下手に流れて(はけて)いくお囃子連中、後ろから台ごと押し出されて(登場して)くる常磐津連中。ちょっと面白い。


歌舞伎十八番の内 毛抜

ざっくりとしたあらすじ:
小野小町の子孫にあたる小野春道尾上菊五郎)の屋敷では、家宝の短冊が盗み出されたうえ、姫君・錦の前市川男寅)も原因不明の病にかかり、床に伏せっている。
そこへ、錦の前の許嫁・文屋豊秀の家臣・粂寺弾正市川男女蔵)が様子を伺いにやってきた。錦の前は、髪の毛が逆立つという奇病に冒されていたことを知る弾正。
ともかく春道公と話すために一室で待つことにした弾正は、煙草盆を持ってきた秦秀太郎中村梅枝)や腰元巻絹中村時蔵)に言い寄るもすげなくふられる。仕方なく、暇つぶしに髭を抜いていたが、何気なく床に置いた毛抜がひとりでに動き出し……。
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粂寺弾正、節操ないですね!?そこが本筋の話じゃないんですけど……若い美男から腰元の美人まで、誰でも良いんですか……。しかしこういうところも嫌味なく、なんなら粂寺弾正の大らかな魅力のようにも見えるのが不思議なところ。ずっとにこにこしているというか、明るいというか、陽気な雰囲気があるのが魅力的なのかも。
最後、「これが望みの御祝儀だ!」というようなことを言って、そこにいる敵の首をあっさり刎ねるのがあまりに思い切りが良すぎてちょっとびっくりしたし、面白かった。まあでも思えば、腰元の仇も秒で殺していましたね……。
奇病の原因もですが、全体的に話の流れとしてもゆるやかでおおらかな感じがあり、これがまた魅力的だなあと思いました。踊る毛抜き、そもそもビジュアルが面白いものね。詰めに詰め込まれた義理人情だとかトリックだとかそういうのも面白いけれど、一方でこういったシンプルでありながら人物の魅力が光るようなお話も良いですね。

そのほか細かいこと

  • 前日にたまたま「鳴神」を見ていて、舞台の左右に演目を表示する看板?があるのを不思議に思っていたのですが、「毛抜」にもあり、どうやら歌舞伎十八番に該当する演目にはあるらしいということをイヤホンガイドに教えてもらいました(学び)。


極付幡随長兵衛きわめつきばんずいちょうべえ

ざっくりとしたあらすじ:
芝居小屋「江戸村山座」では「公平法問諍きんぴらほうもんあらそい」が上演されている。物語が佳境にさしかかったところで酔客が舞台に乱入、舞台番が止めるも収まらない。その場を収めたのは、客として来ていた幡随院長兵衛市川團十郎)であった。
その騒動を桟敷で見ていたのは旗本の水野十郎左衛門尾上菊之助)。酔客は水野率いる白柄組の一員であった。もとより対立関係にあった白柄組と、長兵衛率いる町奴たち。水野が長兵衛を呼び止めたことで一触即発の雰囲気になるも、その場は芝居の最中ということで互いに手を引いた。
その騒動ののち、長兵衛は水野の屋敷での酒宴に誘われる。罠だと知りながらも、長兵衛は屋敷に向かい……。
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敵「殺すには惜しい男だ!」
鳩「じゃあ殺さなくても良くない?」
というか長兵衛よりも喧嘩っ早い下々のものが悪くない……? 本人、上の人だから責任とっているわけですが、本来はやっぱり普通に原因がある人間が責任をとったほうが……(お話に向いていない)。
こういうお話は、長兵衛のような生き様が格好良いというところを鑑賞するものだということは分かりつつも、全然……共感できない……。お話の流れとしてはつっこみたいところが多いものの、しかしやっぱりさすがに長兵衛は格好良くはありました。どうも鳩が團十郎さんを見るとき、今回の長兵衛だとか、「め組の喧嘩」の辰五郎だとか、粋な親方みたいなものでばかり拝見している気がします。
涼やかな見た目で熱い心を持った男、という雰囲気、それでいて妻子を惜しく思う素振りを見せたりなど……、男伊達というのは格好良いというのはとてもわかる。かっこいいな〜〜〜vsでもそうじゃないじゃん!!!になりながら最後まで見ていました。
また、莟玉さんの立役を初めて見ました。とても格好良かった。



公演概要

團菊祭五月大歌舞伎
2024年5月2日(木)~26日(日)

昼の部:鴛鴦襖恋睦 おしどり・歌舞伎十八番の内 毛抜・極付幡随長兵衛
夜の部:伽羅先代萩 御殿、床下・四千両小判梅葉
歌舞伎座

3階9列10番あたり


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