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【声劇台本】そこにあるのに、みえない
クリス:天気がいい夜に空を見上げると、いくつかの星が輝いているのが見える。
クリス:それは、決して大都会ではたしなむことができない、田舎だからこそ堪能できる数少ない贅沢な体験。
クリス:都会は眠ることを知らない。いつも目まぐるしく何かをしている。
クリス:明るすぎて星なんて全然観えないし、観ようとする人もいない。
クリス:空を見上げることすらもしないなんて、本当に彼らはニンゲンなのだろうか……。
クリス:けれども、闇に包まれた空を見上げたところで、ボクたちが観ることができる星の数はほんの少ししかない。
クリス:ボクの目に映る星はちょっとしかないんだ。
クリス:学校の授業か何かで先生が言ってたし、
そもそもこんなこと学校で勉強しなくてもわかるけど、
星は、この宇宙に数えきれないほど存在している。
クリス:科学者が研究で使うような一台で何億円もするような望遠鏡を使えば、
たくさんの星をこの目で観ることができる。
クリス:そんな機会はないだろうけど、少なくとも事実としては、ね。
クリス:この夜空の先には、星空が無限に広がっているけれども直接観ることはできない。
クリス:存在はしているけれども、決してその星々の渦に足を踏み入れることはできないんだ。
クリス:そういった決して手の届かない存在に、ニンゲンは憧れを抱く。
クリス:遠い遠い過去のお話。
クリス:ボクたちの先祖に当たる人々は、日が沈むと働くことをやめてなにをしていたのだろうか?
クリス:キット、夜空を見上げていたんだと思う。
クリス:でも……
クリス:彼らはいったい、何を想ってそんなことをしていたんだろう……?
クリス:彼女らは、夜空をどんな風にとらえていたのだろうか?
クリス:神々からの贈り物?
クリス:他の生き物が住んでいる場所?
クリス:それとも、イデア界が存在している場所?
クリス:まぁ、考えたところで、わからないんだけどね。
クリス:けれども、古代ギリシアの人々は常闇に輝く星々に命を与えた。
クリス:ある星は、神話に出てくる崇高な存在である神様。
クリス:またある星は、神々の化身であり、遣いである動物。
クリス:そしてある星は、神々の産物である生命だとか。
クリス:いまでもギリシア神話を語るうえで星座という存在は欠かせない。
クリス:日本人も、自分の星座を必ず持っている。
クリス:星座占いなんてやっているのは日本人だけなんだろうけど……
クリス:それはそれで、日本人らしいなぁと思う。
クリス:なんというか、平和だなぁーって感じる。
クリス:ボクはそこまで星座には詳しくない。
クリス:だから夜空を見上げても、どの星にどんな命を吹き込まれているのかボクにはわからない。 クリス:たった1つの星から、物語を作り上げて命を吹き込むなんて……。
クリス:もしもタイムマシンがあったら、ボクは絶対古代のギリシアに行くだろう。
クリス:そこにあるのに、みえない。
クリス:そこにあるけれど、手に取ることはできない。
クリス:でもそこにあることが分かっているからこそ、余計に憧れてしまう。
クリス:だからこそ、いつの時代でも人々は夜空を見上げる。
クリス:憧れているからこそ、星はさらに美しくみえる。
クリス:本質は何1つ知らなくても、美しければすべてが許されてしまう……
クリス:外見が美しければ、内面はどうでもいいらしい。
クリス:「恋は盲目」とは、キットこのことなのかもしれない。
クリス:もしかしたら……
クリス:みんな盲目になってるから、星を観たくても観れないのかも……?