大学の保証人(身元保証)
前のnoteで少し触れたものですが、改めて大学などに入学する際の「保証人」のことについて書かせていただきます。
僕はいわゆる“学び直し”というやつで、通信制の大学院に入ることにしました。
その入学手続きの際、引っかかることがありました。それが入学には「保証人」が必要だったということです。
僕は、通信で大学など高等教育が受けられるという制度は、それを利用することで、さまざまな状況に身を置いている人でも「学び」や学問というものに触れることのできる素晴らしいものだと思っています。
必ずしも直接、就職や収入アップにつながらなくても、「学び」や学問に触れることは、生きていくことにおいてプラスになるものがあるとも信じています。
ただ、自身が「保証人」の署名が必要な書類を見たとき、「保証人を頼める人がいない人はどうしたら良いのだろう」と思いました。大袈裟かもしれませんが、なにか信念や見つけていた希望のようなものが揺らぐような気がしました。
一つ、お断りしておかないといけないのは、僕自身は保証人を親戚に頼みました。提出期限に間に合わないかもしれなかったので、事務局に問い合わせて、期限後になることに承諾も得ました。なので、本当の意味でその“困り感”を実感できているわけではありません。
でも、10代は20代の若い頃に、仮に親や親戚のあてもなかったら、自分はどうしていただろう。
そのような状況で、誰にも相談できない。そんな人もいるのではないか。そういう状況の人がいるなら、何か自分にできることはないか。などとぐるぐると考え込んでいました。
まだ、自分なりの答えのようなものも出てはいないのですが、情報だけでも何かの役に立つかもしれないと思います。
よければ、長くなるかもしれませんが、読んでいただけると嬉しいです🙇
入学手続きでのモヤモヤ
ー“野良学者”を目指すものとして
気になってネットで検索をかけてみたものの、いくつかSNSに相談が上がっているだけで詳細はわからず、大学や教育者の発信は、書式が民法の改正に対応していないらしく、対応させねばというものくらいでした。とくに、保証人を確保しないといけないということが、何か妨げになっているといった問題意識のようなものは見られません。
モヤモヤを感じているのは、やはり大袈裟なのか。とも感じましたが、一応は学者を目指すものとして、これが教育学的にどう捉えられているのか調べてみようと思いました。
ー 先行研究がない!
ただ、結果を言うと、教育学の分野(教育経営を含め)では先行研究は見当たりませんでした。
まず、 Google scholar で検索。ヒットなし。念の為、CiNii Research や J-STAGE でも調べてみたものの、調査や考察をした論文というのは見当たりませんでした。(後で書く行政評価局の調査はあったものの)
そのほか、国立国会図書館レファレンス協同データベースに同様の調査依頼が出ていないかみてみましたが、これといったものは見つかりませんでした。
というか、大学の図書館で司書の方にレファレンスを頼んでみて、「見当たらない」の回答だったので、本当に教育分野の先行研究はなさそうです。(我流だけで済ませたわけではないので💦)
そこで、他分野の研究を参考に、取り巻く状況の違いや共通点をみて考えてみました。
他分野の先行研究
ー そもそも「身元保証(保証人)」とは
法律的にみると、大学等の入学続きで求められる「保証人」は、金銭の借り入れなどでもとめられる連帯保証人や保証人とは微妙に違っています。
身元保証は、主に労働契約にともなって結ばれる、将来、その労働者が原因となって発生するかもしれない損害を保証する約束事です。『身元保証の裁判例』という論文を書いた能登真規子さんによると、古くは江戸時代の“人請”の伝統から続く慣習から来ているものだそうです。
この身元保証の問題点は、その責任が、保証人として署名する時点では、どれほどの損害額を負担するのかと言うことが全くわからないことです。
そこで、日本の法律では、「身元保証法」と呼ばれるものが作られ、保証を引き受ける人、つまり保証人の保護がはかられました。ここでの保護は、損害の限度額を定めることや保証期間に関すること、またそれらに反する特別な契約の禁止などです。
つまり、法律分野での問題意識は、「(人情的なものから)やむなく保証を引き受ける人に、際限のない責任を負わせるのは無茶だ」ということだったと考えられます。慣習として一般的に行われていることだけど、受ける利益が人情的なものなのに、責任があまりにも大き過ぎる、といったところでしょうか。
のちに民法の改正により、労働契約にともなうものだけでなく、住居賃貸や介護・医療施設の入所、大学の入学の際に求められる「保証人」にも、同様の保証人保護の決まりごとが適用されるようになりました。
しかし、法学の分野でも、“その法的性質や身元保証人保護のための法律構成をめぐって”、盛んに研究がなされていたようなのですが、次第にテーマが金融取引での保証(“貸金等根保証”というらしい※1)に移っていったそうです。
ただ、労働契約に伴うものにフォーカスしてるものの、能登さんも論文のなかで述べられているように、本来、保証契約は雇用主などと保証人との間で結ばれるもので、そこに十分な合意がなければ上手く機能しません。にも関わらず、現実は労働者や入所・就学を希望する人が、どのような役割や責任のものなのか理解出来ないまま、親族や知人を頼って依頼するのが現状です。
ここからは、保証人の役割の不明確さという点に着目しながら、他分野での研究と課題を見てみたいと思います。
ー 介護や医療での入所・入院の保証人
近年の研究として、よく対象となっているのが見られたのは、福祉分野の介護・医療施設に入所する際に求められる「保証人」についてでした。
介護に関しては、まず前提になるところで、2000年に社会福祉基礎構造改革という業界の動きがありました。”措置から契約へ”という標語であらわされ、多くの福祉サービスが民営化されました。
そういった中、本人が自分で必要なサービスを判断し、自分で入所したい施設を選べるようになったのは良いのですが、いくつかそれまでになかった問題も生じることになりました。
その一つが、入所契約の際に求められる「保証人」の確保の問題です。
かつては、高齢者の施設入所などは、「措置」と呼ばれる行政の判断と指示によって行われていました。本人の選択の自由がほぼない一方で、本人とサービス提供者がそのために「契約を交わす」ということも必要ありませんでした。
しかし、2000年を境に民営化によって、ビジネスとしての「契約」というものが必要になり、そのリスクヘッジとしての「保証人」も必要になったわけです。
ここで、入所が必要であっても「保証人になってくれる人を見つけられず、介護施設に入所できない」という問題も出てきました。介護施設を必要とする高齢者のなかには身寄りのない人も多く、なかには身寄りがないからこそ入所が必要という人だっているからです。
そのような流れを受けて、近年になって現れてきた問題なので、研究者の注目もあるのでしょう。また、福祉や医療には単にビジネスというだけでなく、公共的な側面も強くあります。
そのため、サービスの在り方という視点や、保証人制度そのものがどうなのか、というところまで踏み込んだ研究も見られます。
引用としては少し長いですが、高等教育の機会についての僕の問題意識のようなものにも近い気がするので、紹介させていただきました。
もちろん、村上さんも公共的なサービスをする者は、経営だとかいってリスクヘッジを図ったりしちゃいけない。などとまでは言いません(ちょっとニュアンスは感じますが😅)。そこでの中心課題は、具体的に社会としてどのような問題が生じているか、です。
ーー 施設側は保証人がいないとどう困るのか
それでは、実際に保証人がいないと施設や従事者はどう困るのか、を見ていきたいと思います。
先ほどの村上さんは、保証人を頼める人がいない(身寄りがない)ということが、貧困と孤立を含む複雑な社会的問題を背景にしていることを、医療施設入院患者についての2つの生活実態調査を再分析し、データとすることで指摘しています。また、そのデータを根拠として、これは公的な施策を必要とする社会構造的な問題であると主張されています。
では、施設や従事者といった現場レベルの困り事というのは何があるのか。
林祐介さんという方が、「保証人不在者事例におけるソーシャルワーク支援上の困難性についての一考察」という論文を出されていました。これは、病院に勤める医療ソーシャルワーカーという仕事をされている方達にインタビュー調査を行ったものです。
ここでは、
といったものが挙げられています。また、林さんは “その他の困難” が最も多く、その広汎さに着目しているようですが、そこには “患者とのやりとり” といった保証人がいたとしてもどうにもならなそうなものも含まれています。
これらの困難は、他施設、介護施設などでも高齢者に特有の問題としてありそうではありますが、僕が考えている「大学等入学のための保証人」とは少し事情が違いそうではあります。
“入院費等に関すること” も、未払金の回収や何らかの損害賠償のような法律・契約的な問題というよりは、預金自体はあるけど銀行から “お金の引き出し等ができない” といったものです。つまり、本人が手続きできないときに代わりにやってくれる人として「保証人」が求められているようです。
正直な感想としては、病院や介護施設が求める「保証人」の役割は、法律上の「保証人(身元保証)」とは、ちょっと違っているようです。だいぶ、上乗せされているといった方が正確でしょうか。
ちなみに、法律上「保証人」の立場にあるからといっても、本人の銀行預金などを引き出したりといったことができるわけではありません。医療同意に関しても、病院が「保証人が同意したから」といってもあまり意味のあることではありません。
ここには、保証人を引き受ける人や、それを頼む人が、「どれだけの法律的な責任を負うのか」を不安に思っているのに対し、病院や介護施設、少なくともその現場が求めているのは、「法律上の保証人じゃない」という状況が見て取れます。
ちょっとここで、厚労省のものではないのですが、愛知県の半田市地域包括ケアシステム推進協議会というところが作成した「『身元保証等』がない方の入院・入所にかかるガイドライン」にピンとくる記述がありました。
この内容が施設ごとに違い明確でないことや、その元になっている “漠然とした「不安」” というのは、大学等の入学で求められている保証人の制度にも通じるものがあるように感じます。
ーー 身元保証代行サービスの問題
高齢者の問題として認知されつつあることもあり、具体的対処として、この問題を需要として進んだサービスもあります。「身元保証代行サービス」です。
最近になって初めてできたサービスというわけではないと思いますが、この介護施設での保証人問題が見られるようになったため、高齢者や社会的孤立の問題に取り組むNPO法人などでのサービスも広がっているようです。
ちなみに大学等の入学や、就職・住居賃貸の保証をしてくれるところもあるようです。冒頭で調べたSNSの書き込みでも、進学したいが保証人がいない、代行サービスも考えたけど怖い。というものもありました。
ここでの怖いイメージは、昔、貸金等の保証で、反社会的集団が連帯保証人となり、本人が返済可能でも勝手に返済することで、債権(利子つけて金返せという権利)を手に入れ、追い込みをかけるという事案が横行したイメージからきているのではないかと思います。
もちろん、「リスクはないですよ」などとは言えないのですが、イメージでではなく具体的にどのようなリスクがあるのか、知っておくことは上手く利用するためには欠かせないかと思います。
実際に、国民生活センターに寄せられたトラブルは次のようなものとなっています(令和元年当時)。
そのほか、2023年の読売新聞によると死後の寄付金が求められる場合があるとのこと。これは、相続を受ける遺族がいない場合には問題ないように見えるかもしれませんが、寄付金となる死後財産を残すために適切に医療や延命の同意がなされないかもしれないという懸念や少なくとも不安が生じます。
これらのトラブル事例もどちらかというと高齢者特有の事例で、大学入学の状況とは違って見えますが、問題点はやはり、一つには、このサービスに金融業法のような規制や監督官庁(把握している行政)というものがないこと。
そして、保証人に求められる役割が漠然としているため、それに対するオプションサービスのようなものが多く生まれすぎて複雑なものになっている、というところにあるようです。
「保証人」の求められる役割がわからなければ、その代行でどのようなサービス(どのような備えをすればいいか)もわからない。そのため、必要ないサービスを入れてしまったり、保証料金が高額になってしまうと考えれられます。
以上、「保証人(身元保証)」と呼ばれるものでつながる福祉分野での研究やトラブルを見てきましたが、状況が違うものの共通する部分もあるように感じます。
大学が「保証人」をどう考えいるか
ー 国立大学の「保証人」についての行政相談
ここまで「大学に入学する際に保証人が必要」ということにモヤモヤを持ちながら、法律・介護の視点を借りて見てきました。ここからは、大学自体が「保証人」をどうみているかを考えてみたいと思います。
このnoteの最初の方で、教育分野では先行研究がないと書きましたが、そのため誰かの論文を引用したりができません。
ただ、行政評価局というところに入った行政相談(ようはクレーム)をきっかけに行われた調査報告がありました。
https://www.soumu.go.jp/main_content/000734917.pdf
次のものは、その調査結果概要からの抜粋です。
3つ目の問題点は法律要件的なものですが、上の2つはつまるところ、大学側においても「何故、保証人が必要なのか」が漠然としているところから生じている問題と考えられます。
この保証内容の曖昧さ、認識と記述の差は、介護・医療施設での保証人制度で、法律的な記載と、実際に求めている役割にずれが生じていることにも通じるものがあります。
また、法律上の「身元保証(保証人)」が古くからの慣習によって行われてきたように、大学等の保証人も「以前からそうなってるから、何となく」で求められているように思えます。実際のところ、裁判例を調べても、大学での保証人が学費の未納分を請求されたというものは見当たりません ※2)
もっとも、もし保証人に学費等の請求がなされるにしても、大抵は「裁判外」で行われるでしょう。
ただ、そういった保証人の支払いは法律的なものというより、道義的だったり、その学生が退学にならないようにと人情的な部分で行われているものだと考えれられます。
ー 法律外で、大学が求めている「保証人」の役割
上記の法律上(金銭面)での役割のほか、行政評価局の調査報告でみられる役割は次のように例示されています。
とくに入寮を希望する時のものが多いですが、基本的に「緊急連絡先」と「(後々、揉めないようするための)同意」に類するもののようです。
これは、僕の推測でしかないのですが、大学特有の事情として、長らく「入学を希望する者」の大半が「未成年」であったことにあるように思われます。
18歳が未成年ではなくなった現在でも、在学契約自体は大学と学生の間で結ぶものの、学費の支払い者として学生本人以外の者も関わってくることが多いという事情もあるでしょう。
ただ、本来、学費の資金繰りがショートしたにせよ、ほかの事情があるにせよ、退学(退寮)するか休学するかの決断は、学生本人がすべきことです。たとえ「保証人」がいたとしても、同意がないとできないものではないはずです(後々になって第三者がクレームを言っていいものでもありません)。
保証人の役割を「説明しないといけない」のは誰か
あと、能登さんの考察の中で、大学の保証人に対する姿勢にも通じる指摘がありました。
能登さんは、“身元保証書を徴求する際に身元保証人の意思を確認する等、身元保証契約がその内容をふまえて慎重に締結されているという実態はない。”と指摘しています。
また、この根拠になっている事例として、雇用主が保証人に損害の保証を求めるも、保証人としての署名が明らかに保証人本人の筆跡ではないとして、雇用主の訴えを退けた判例を紹介しています。
これは、保証を必要とする雇用主が、本人任せにせず、保証人となる人に内容を説明して、保証する意思を確認していれば起こり得ないことと言えます。そして、雇用主が説明・確認を行わなかったことによる不利益は、雇用主に返っているとも言えます。
これは大学の手続き(だけでなく他の身元保証全般)においても言えることです。
保証契約というのは、保証を求める側と保証人の間で交わされるものです。そして、リスクヘッジとしての“利益”は、補償を求める側だけが受けるものです。
しかし、実際に保証人をお願いし、説明するのは、就職や入所、入学を希望する本人なのが実情です。雇用主・施設・大学など求める側が交渉したり、説明することはほぼありません。せめて、とくに大学などであれば、はじめて社会にふれる学生本人が保証人を頼みに行く際に、ちゃんと責任の内容や範囲を説明できるよう、要項やホームページなどで公表しておくべきなのですが、それすらほとんど行われていません。
だからこそ、半田市のガイドラインで指摘されているように介護・医療施設の場合でも内容が不明確であったり、行政相談に寄せらた国立大学へのクレームでも保証内容が分からないと訴えられていたり、大学が求めているものと書式の記述が違っていたりということが起こっているのです。
もちろん、以上のことは大学などに提出する「保証人」の書類が、法律的な効力を持たないということにはなりません。怠慢だ!と叫んでもすぐに制度を作り変えたり対応してくれるほど、甘くもないでしょう。
調べてみて、制度の穴というか問題点はわかってきたものの、何か即効性のある解決策のようなものを見つけられていないのは悔しいですが(読んでいただいている方にも申し訳ないですが😓)、まとめとして次に少し提案的なことも書いておきたいと思います。
まとめ
ー “漠然とした「不安」”
法律としての研究や介護施設などでの保証人問題との類似点から、大学にも漠然とした不安があり、それが問題につながっていると考えられます。また、法的な効果を実質的には意識していなくても、「保証人」という法律的な単語が使用され、学生やその応援者側の「不安」を煽ってしまっている状況が見て取れます。
この不安を煽ってしまっている状況は、大学が慣習的な手続きとして保証人を求め、たいした問題とは思っていなくても、です。
この「保証人制度」において最も重要な問題点は、保証を求める大学側にも引き受ける保証人にも、そして、学生側にも、“漠然とした「不安」”が存在していることだと感じます。
提案と呼ぶのもおこがましいですが、もし、「保証人」ということを前にして大学で学ぼうという気持ちが挫けそうになっている人がいて、このnoteを読んでくれてた人がいるなら、まず一歩として希望する学部を持つ大学の事務局に問い合わせほしいと思います。
学則等に保証人の規定があっても、必須ではない大学もあります。また、僕がよく話題にする通信制大学では、「保証人不要」とするところも増えてきています(たぶん、制度的に「保証人」をとってもほぼ無意味だから)。
どうしても保証人が必要であるならば、どういった責任が求められているのか、リスクがあるのか、問い合わせてください。
仮に、「身元保証代行サービス」を利用するという決断をする場合でも、高齢者ほどリスクは高くないとはいえ、余計なオプションを契約させられるようなことは回避できます。
そして、どのような「保証人」が求められているのか把握し、資金やもしものときの対応をしっかりと考えていることを伝えれば、保証人を引き受けてくれる人、応援してくれる人は必ずいます。
その応援してくれる人は、何よりの財産になるはずです。
ー 寄り添えるか
ただ、問い合わせるにも、保証人をお願いするにも、傷つくこともあることは確かにあります。寄り添い、一緒に考える人はどうしても必要になるとは思います。身寄りがないということは、単に保証人が用意できないということだけでなく、事実そのものが重くのしかかり、前に進もうとするのを止めるのでしょう。
自分が直接困っているわけでもないのに、この問題が気になって仕方がないのは、「えんじゅ」という社会的養護のアフターケアに取り組む人のネットワークが発行している『えんじゅ ーアフターケアから、出会いへ』という本を読んだからです。※3)
でも、僕は「出会えて」すらいません。
それは調べることはできても、本当のことは何も知らない。ということでもあります。
実は、自身の入った通信制大学に保証人が必要ということを知り、客観的を装って事務局と話してみようとしたのですが、その話題では接触自体できずじまいでした。なら、野良学者を目指す者として「論文」という形でぶつけてやるなどと息巻いていたのですが、本当のところをわかっていない人間が書いた論文など“薄い”と自覚しました。
今、せめて、真っ向から研究倫理を通し、せめて、アフターケアの現場で寄り添っている人たちの声を聞いた「論文」を書いてみたいと思っています。
最後まで、読んでいただいた方、ありがとうございます🙇 やたら長くなるので、調べている中で見つけたもののいくつかを(補足)としてみました。よかったら、そちらも目を通していただけると嬉しいです。
(補足)
※1 )個人根保証
能登真規子『身元保証の裁判例』を参照・引用してます。就職や住居賃借、このnoteで扱っている「保証人(身元保証)」も、法律的には「個人根保証」というらしいです。皆さんがネット検索などで調べるときの参考までに。
※2)身元保証人が当事者の裁判例
能登さんの『身元保証の裁判例』では、レクシスネクシス・ジャパン株式会社のデータベース『LexisNexis JP』に収録されている裁判例80,903 件の中から、1989年から2011年の期間で、キーワード『身元保証』で抽出した裁判例を分析されています。
それによるとヒットした198件のうち、身元保証人が訴訟当事者となっているものは40件。その全てが、労働契約に伴う保証人となっているそうです。
(その他の判例では、入国在留・保釈に関する保証人。入所入院に関する保証人などがみられるとのこと。ただ、入国在留や保釈の保証人はそもそも契約行為に伴うものでなく、入所入院に関するものも責任追及されているものはなかった)
個人的にも、最高裁判所HPの裁判例検索システムで「身元保証(ヒット126件」「保証人+大学(133件)」「保証債務履行請求(22件)」を見てみました(すみません💦これは我流でです)が、入学に際しての身元保証人が責任を問われているものはありませんでした。
ー ある大学の法務担当者の記事
裁判上の請求が見当たらないことの補足になりそうなものとして、大学の保証人制度について、大学の法務担当者が書いた記事がありました。
記事は、大学の保証人署名用の書類が、民法改正に対応できてないことが多い。という指摘のものなのですが、
法的効果や請求の可能性を否定するものではありませんし、一人の弁護士の所感ということになるかと思いますが、一応のご紹介です。
※3)社会的養護での「身元保証人対策事業」
社会的養護出身者を対象としては、行政も何もしていないわけではなく、「身元保証人確保対策事業」という制度が設けられています。
しかし、これは保証人確保と言っても、行政が彼らの保証人になってくれるというわけではありません。あくまで出身の施設長や里親といった立場の人が、保証人を引き受けてくれたとき、「何かあった時の保証(賠償)の一部を共済的に負担しますよ」というものです。
また、退所後5年以内(2023年10月時点。これでも当初よりは延びた)の人が希望した場合のみという制限もあります。
つまり、施設入所や里親委託を受けることになった経験がある人だけです。保護に至らず、在宅指導(様子見)になった子達には、おそらくというか原則的に適用されません。
何より親の支援を受けられない子達全てに、児童相談所が介入して関われているわけではありません。児相に関わったことはないけど、親が学費を出したり、応援してくれることさえ考えられないというのはじゅうぶんあり得ることです。
そういった人がいた時、どう寄り添えばいいのか。まだわかってはいないですが、もしヒントがあるなら、今、思い当たるのはここで支えている人たちだと思っています。
余談)法律的な視点での「入学(在学契約)」と入学金と授業料
だいぶ余談になりますが、裁判例を探していたとき、一つ興味深い判例を見つけました。
大学に入学する(入学を許可する)という契約の性質について、最高裁判所が見解を述べたものです。
まず、入学時に大学と学生がする契約を、法律的には「在学契約」というそうです。
大学側には教育サービスを提供する義務を、学生側にはその対価(学費など)を支払う義務を負うことが中心的な要素になっており、加えて学生が大学組織の構成員としての地位を得て、大学の指導や規律に従う義務を負うという、双方が義務を負う契約になります。消費者契約法も適用されます。
また、「入学金」については、“合格者が当該大学に入学し得る地位を取得するための対価”であり、契約が確定したときには支払わなくてはならないものになります。実際のところ入学金を払わないと入学手続きが終わらないのですが、入学許可証が送られてきた後は、解約しても返金されないということです。
一方、「授業料等」はその年の4月1日、つまり授業期間(サービスの提供期間)が始まるまでは、その契約を解除しても大学に損害があるとは言えず、返金すべきものとなっています。
ただし、「4月1日にはほとんど授業が行われていないのだから損害なんてないだろう」と文句を言いたくても、その日を過ぎてしまうと「損害がないこと」を学生側が証明しなければ返してもらえません。
これらは、募集要項や学則で「一度納付した授業料は何があっても返さない」となっていても、消費者契約法によって無効になります。
というか、そういう内容が争われ、最高裁が判断した判例です。