見出し画像

#3 AI研究者としゃべってみた:「窓」で感じる哲学と科学のミックス

はじめに

今回の対話の相手は、生成AI研究者の笹埜健斗さん(笹埜健斗ラボ)。AIの教育活用を研究する笹埜さんに、私が取り組む「窓」を通じた教育の可能性について語り合っていただきました。「窓」による学びの哲学と科学の融合を探ります。

「窓」から考える教育のかたち

野邉:笹埜さん。今日はテレプレゼンスシステム「窓」について話させてください。私は、普段から「窓」をつかって遠隔での教育コーディネーターをしているのですが、その中で学びや教育に対する考えがすごく深まっていて…。例えば、窓のまわりでは生徒や先生とか関係なく対等な立場で一緒に探究している感じが出るんですよね。知識を一方的に教えるだけじゃなく、互いに考えをシェアする場が生まれて、そこに「学びの哲学」がある気がしてるんです。


出雲のオフィスから隠岐高校の探究活動の伴走をしていたりします。
こちらは企業さんとの協働プロジェクトの進捗をチームでおこなっているところ。


笹埜
:なるほど。教育の現場で、教える人と学ぶ人が一緒に学びを深める空間ができるというのは、哲学的な問いですね。そもそも「教育とは何か」「学びとはどうあるべきか」といった根源的なテーマです。「窓」が、それを新しい視点で見せてくれるのは興味深いですね。相互作用の場をつくることが、教育そのものの意味を再考させるきっかけになるのかもしれません。

野邉:そうなんです。「窓」を使っていると、物理的な距離があるにもかかわらず、そこにいるという感覚が生まれることで、人と人が本質的にどうつながるのかを考えさせられるんです。この感覚は、教育の本質に触れているような気がして、哲学的だなと。

哲学としての教育:人間関係の再考

野邉:「窓」を使っていると、私たちが教育の場において本当に大事にしていることは何か、という問いが浮かび上がります。単に知識を与えるのではなく、学び手が自ら気づき、考え、他者とつながりながら成長する場を提供すること。それは一体、どういう意味を持つのかという、哲学的な問いです。

笹埜:確かに、教育という行為自体が「何を学ぶか」という表面的な問いではなく、「どのように学ぶか」「なぜ学ぶのか」といった、より深いレベルの問いに根ざしています。「窓」は、こうした問いを現実の教育の中に具現化していると思います。学びの場が一方通行ではなく、相互に触発し合うダイナミックな場として生まれ変わる。それはまさに、教育の哲学的な変容です。

野邉:「なぜ学ぶのか」という問いに向き合うことは、私たちが教育にどんな価値を見出しているかを問い直すことでもあります。知識を習得するだけではなく、生徒たちが他者とのつながりの中で自らをどう理解し、世界をどう意味づけるかが問われている気がします。「窓」が提供する空間では、そうした自己の探求が自然に行われるんですよね。

哲学から科学へ:得られる情報が教育を変える

野邉:一方で、「窓」を通じて得られる膨大な情報が、私たちの学びをどう変えるかも重要です。「窓」を体験した時に出てくる言葉で多いのが「“自然”なコミュニケーションができる」なんですが、何をもって自然と感じているのか。そもそも私たちが普段何を受け取ってコミュニケーションをしているんだろうってなりました。
「窓」では表情や身振り、姿勢、場の空気感なども感じ取れます。他のオンラインツールだとそぎ落とされていたデータ、感覚的に捉えていた部分が「窓」では得られ、AIを通じてデータ化される。それがまさに「科学」の領域に入ってくる瞬間だと思うんです。

笹埜:その通りです。「窓」では、教育の現場で感覚的に進めていたことを、科学的に分析できるようになります。発言のタイミングや生徒同士の関わり方など、微妙な変化を捉えてデータ化することで、どのタイミングで学びのブレイクスルーが起きるのかを特定できるんです。
データが見えるようになるということは、私たちが何を価値あるものとみなしているかを映し出す鏡でもあります。どのデータを重視し、どの行動や反応に注目するかという判断には、私たちの教育観が反映されています。

野邉:なるほど。データとして可視化されることで、経験則や直感に頼っていた部分に根拠が与えられますが、同時にそれが本当に意味のある学びを捉えているか、常に問い続ける必要がありますね。ある意味、教育における哲学が「科学」として成立する瞬間とも言えますね。ここが「窓」のおもしろさかもしれません。

「出力」ではなく、「入力」が重要

笹埜:ここで重要なのは、AIで強調すべきなのは「出力」ではなく「入力」だということです。「窓」を通じて得られる、表情や態度、会話のリズムといった多様なデータこそ、AIにとって貴重な入力になります。このデータから、教育の場でどのようなサポートができるかが変わるので、「窓」は科学的にも非常に貴重な役割を果たします。

野邉:「入力」ですね!確かに、「窓」を通して得られるデータは、AIにとって多角的な情報源であり、分析において大事な部分ですね。それが科学的な判断材料になることで教育における「科学的根拠」を持つ部分が増えるのは大きな変化です。

科学と哲学が重なる瞬間

野邉:こうして考えると、「窓」が持つ可能性って、哲学と科学が融合する場だと思うんです。教育現場で生まれる学びの瞬間を捉えるだけでなく、それをデータとして分析し、改善につなげる。それは単なる技術的な進歩ではなく、教育の本質に立ち返ることだと思うんです。

笹埜:その通りですね。「窓」は、人間の感覚的なつながりを捉えることで、教育の哲学的な要素を現実に引き戻すと同時に、データ化された学びのプロセスを通じて科学的な精度も高めていく。この両者が交わる場所こそ、これからの教育の中心になるはずです。人間の学びの本質を見つめ直す時、それを支えるのがテクノロジーと哲学の共存という未来だと思います。



笹埜さんが実行委員長を務める「生成AI甲子園(生成AIクイズ選手権)」も是非チェックしてください。



この記事は、「窓」を使った教育DXの試みや、その背後にある哲学と科学の融合をお届けしました。今後は、この「窓」を通して見えてきた気づきをもとに、実際に「窓」を活用する方々との対話を通じて、その可能性や新たな使い方を探っていきます。そんな学びと発見の連続を、次回以降もシェアしていきますので、どうぞお楽しみに。