(連載小説)パーク〜小さなお話7
最初に)連載の間隔が開いてしまったので、箸袋とは?と謎に思う方がいましたら、お手数おかけしますがどうぞ前回の6から読んでみて下さいませ(お時間取らせてスミマセン・先にお詫び)
では、7をどうぞ。
図らずも、箸袋から怒涛のように
あの人の事をそれはもう
どんな気持ちか分からないぐらいの
モヤモヤとした塊で思い出し
少し混乱した私は
とりあえずお弁当を食べた。
悔しいけれど
貰ってきた割り箸を使い
ちゃんと全部食べた。
そうして、目の前に残された箸袋を
捨てられずじっと見ていた。
空になった
プラスチックのお弁当入れを
流しですすぎ、プラゴミに分別し
少しのお湯をケトルで沸かし
マグにティーバッグを浮かべた。
淹れたての紅茶を運ぶ間(ま)に
ようやく落ち着けたような気持ちで
テーブルに戻り
再び、箸袋に目をやると
やはり直ぐに引き戻されてしまった。
あれから、ここ最近までの
私のルーティンは完璧だった。
謎箸袋クリエイター?の奴の事なんか
すっかり忘れて自由の身に戻り
ちゃんと暮らすだけのお給料と
そつなくこなせる仕事があって
右左右左と歩みのテンポは
一定で刻まれて、、
ああ、そうか。
立ち止まる、まさに
あの小さないつもの公園で
白いボール操るジャグリングの青年を
見かけたあの日に
私は既にもう
自分で決めたルーティンを
少しの好奇心で崩したんだった。
夕闇に染まる一帯の中で
浮かぶ白いボール
小さな公園のトモシビにも似た光景。
ちゃんと進んでいたはずの
実は止まっていた何かが
動き出したような気がしていたのを
押さえつけるのは難しく
目の前の箸袋は捨てられない。
つまりはそういう事なんだろうと
紅茶を冷ます勢いで
深く息吹きかけるようなため息をついた。
息はすぐ側(そば)の
箸袋を軽く飛ばして
好きなモノが増えた時
好きだった人、思い出も
こういう謎なタイミングで蘇る。
途方に暮れて
目をやった窓の先に
白いボールのような丸い月が覗いた。
しばし見とれてから
カーテンを引いたら、ようやく夜が来た。
8へ続く。