この時期になると、入院生活で出会った3人のおばあちゃんを思い出す
年明け早々体調を崩しています。わたしをよく知る人は「また」と思われるでしょう。そうお正月休みしっかり休んで、いざ仕事を始めると熱が出る。2021年1月11日に髄膜炎で1週間入院してから、この時期は注意して過ごしているのですが、もはや毎年成人の日が鬼門です。
せっかくなのできょうは髄膜炎で入院した時のことを振り返ってみたいと思います。
ファストドクターありがとう
2021年1月10日。突然38.9度の高熱と、手を洗おうと水に触れた瞬間に鋭い痛みがあって「これは何かおかしい。いつもと違う」と思い往診してもらえるサービス『ファストドクター』を呼びました。ちょうどコロナ禍1年目で医療機関が混乱していたので、課金してでも『ファストドクター』を選んでよかったと振り返ります。
『ファストドクター』にてコロナの抗体検査をして陰性。医者の所見から「髄膜炎」の疑いで大きな病院で精密検査をしてもらうよう「紹介状」を出してもらいました。紹介状があったから大きな病院でもスムーズに相手にしてもらえました。
大きな病院でそのまま車椅子に乗せられて検査をたらい回しにされて検査結果は「即入院」。医者に「帰宅できません」と告げられるも、看護師さんに「猫を飼っている(待ち受けを見せる)」という話を伝えてあったので、看護師さんが「自宅に猫がいるそうなので、一時帰宅を許可しないと!」と強めに言ってくれ、特例として帰宅させてもらいました。
相談して、当時は離れて住んでいたパートナーに1週間うちに住んでもらい、猫のお世話を頼むことにしました。帰宅したらその日のうちに、泣きながら猫にお別れを告げ、入院グッズを準備し、タクシーで病院へ。
数十年ぶりに甘いものが食べられたおばあちゃん
難病持ちながら、入院が初めての私は不安で押しつぶされそうに。シッター先の子どもからビデオレターが届くなど嬉しいこともありましたが、ずっとメソメソしていました。
髄膜炎はウイルスの種類によってやばいかやばくないかがあり、「検査結果次第では死ぬかもれないですが、多分大丈夫だと思います〜」的な説明を受けました。
結構ショックで、たぶん大丈夫と思いましたが、死んだら何も持っていけないからモノより経験や関係性、思い出に費やしたいななど考えていました。
コロナ禍ということもあり全体的に病床が逼迫中。脳神経外科の病床に空きがなく、外科病棟に送り込まれたのですが、手術後の老人が多く、誤解を恐れずに言えば、こんなに"死のにおい"がする環境は生まれてはじめて。
おじいちゃんおばあちゃんも若い人が珍しいみたいで、よく話しかけてもらいました。
その中でも印象に残っているおばあちゃんが3人います。
1人目は手術をして数十年ぶりに甘いものを食べられるようになったおばあちゃん。
デザートのチョコプリンを「おいしい、おいしい」とボロボロ涙を流しながら口に運んでいて。
「ごめんなさいね。病気で数十年甘いものが食べられなくて、手術してまたこうして甘いものを食べられて、人生まだまだ楽しめるわって思うと泣けてきちゃって」と話す姿に、こちらももらい泣きしてしまいました。
「よかったですね。たくさん美味しいもの食べましょうね。」と声をかけながら、味気のない人生に急に甘みが戻ってくるなんて、きっと急に人生に希望が訪れた感覚があるだろうなと思いました。
癌に触れさせてくれたおばあちゃん
印象に残っているおばあちゃん2人目は、コテコテの関西弁を話す強めのおばあちゃん。独立心が強く、鍼灸師として介護施設で働いているそう。
乳がんであることを自覚し、乳がんで死ぬと決めてそのままにしていたところ、腸に転移しその痛みで運ばれてきたそう。治療を拒否し「わたしは癌で死ぬ」と医者を困らせていました。
仲良くなったので、乳がんを実際に触らせてくれたのですが、癌って成長する生き物なのだなと、触れて初めて知りました。地球外生命体のように胸に星が埋まったように大きくなっていました。
関西弁のおばあちゃんは、主婦でも夫に頼って生きたくはないと、節約してそのお金で鍼灸師の資格を取得。その節約術がテレビで紹介されて、番組でコーナーを持ったり、本を出したりしているスーパーおばあちゃんでした。「資格をとって自分の力で稼いでいくのが大事」と言っていました。フリーランスの大先輩だなと、今でもたまに思い出します。
マザーテレサのようなおばあちゃん
印象に残っているおばあちゃん3人目は、マザーテレサのようなおばあちゃん。目が綺麗で、上品な立ち居振る舞い。関西弁のおばあちゃんとは対照的なのですが、よく3人で窓際で話していました。
マザーテレサのようなおばあちゃんは、非常勤で手話の先生をしながら、特別支援学級の補佐をしている方。脳梗塞で運ばれて検査入院中でした。
30歳過ぎて自転車に乗れるようになったり、子どもが好きで子どもと関わる仕事を選んだり、シンパシーを感じるところがありました。
「子どもに質問する時は、オープンクエスチョンじゃなくて、イエスノーで答えられるような質問をするといいのよ」と優しくアドバイスしてもらい、今でも優しさと可愛らしい上品な語り口調は、将来こうなりたいなと思えるお手本です。
フリーランスってきっと少ないはずなのに、3人ともフリーランスで同じだねと笑い合ったのを覚えています。「あなたはこれからたくさん楽しいことが待っているからね。がんばってね。」と励ましてもらいました。
わたしはきっとこれからも成人の日が来ると、2021年に入院した日のことに思いを馳せるのでしょう。
手洗い・うがい・余計なものは触らない。この3点を守ってみなさんもどうぞご自愛くださいませ。
わたしはおとなしくベッドで安静にして過ごしています。