お金の呪縛にわたしを消費されたくない
在日中国人の両親を持つわたし
今は学費全額免除の学力特待で明治大学に通っている
そんなわたしの大学受験を控えた冬の葛藤の日々のお話
18年の人生で一番泣いた24時間
わたしの父親はほとんど単身で日本に来て、日本語学校に通って、群馬の大学を卒業して、その地域の会社に就職した
母親は父親が安定したタイミングで日本に来て兄とわたしを産んで4人で群馬で暮らしていた
父親の年収は56歳現在たぶん500~600万円ほど
彼によると、「日本人ではないからもっと偉くすることはできない」らしい
その辺の事情は親も話したがらないからわたしも詳しく聞かないので知らない
要は、わたしは経済的に余裕のない家に生まれた
高一あたりから筑波大学に行こうとしていた
普通にB判定くらい出てたけどそれでも漠然と東京に行きたいなって思ってた
でも東京の大学となると偏差値的には国公立だと首都大か一橋か東大くらい
浪人だけはしたくなかったし、「東京に行きたい!」と本気で思い始めた当時はもう12月だったから一橋や東大は目指すには間に合わないから残る選択肢が私立しかなくて
でも年間100万を捻出するのはうちには不可能
加えて親は(返済がキツいから)奨学金を借りることは許さないの一点
東京に行きたい、自分の好きな街で好きに生きたい
でもそんなお金はうちにはない
この葛藤で深夜にみんなが寝静まった後部屋で何度も何度も泣いた
なんであの子は
'頭が悪いから仕方なく'私大に行くのにわたしは頭がいいのに一番行きたいとこに行けないんだなんでわたしだけってこの世界の全てが憎悪でできてた
高校受験に失敗して当時は私立高校に通っていて、そこでもわたしは特待で学費は免除されてた
「絶対に特待を落として親に迷惑はかけられない」の一心の成果が校内模試で最初の高二の秋から最後の高三の冬までずっと3教科5教科ともに一位
そんなわたしが、なんでよって、毎晩世界を恨んだ
わたしの母親は、わたしが小さい頃からその家柄的な、経済的な不自由さから、わたしの要望にNoを出したことは一度もなかった
今思えばわたしが全く我儘を言う子ではなかったからだとも思うけど
そんな母親に、初めて筑波じゃなくて東京に行きたいって言ったときに返ってきた言葉を鮮明に覚えてる
「(筑波に受かる)自信がないんでしょ」
わたしは貧乏な家に生まれたから、自分が行きたいと思った土地にも行くことが許されないんだって
ましてやその願望が
【逃げ】だと
1番わたしに近いはずの親に解釈されるんだって
失望に満ちて言葉が出てこなくて
色々説得したけど、3つ上の兄が私大に通っていたこともあり、無理、としか言われなくて
もういいよって声にならない声で吐き捨てて自分の部屋に逃げ込んで枕に顔埋めてひとしきり泣いた
わたしの毎日の葛藤も親に言い出す覚悟も全部無駄だった
確かその日は期末テストの2日目で、翌朝はテスト3日目だったけど何食わぬ顔で家を出ててから学校とは反対方向に自転車を走らせてショッピングモールに向かった
高校も特待だったから学校をサボったことはなかったけど、もう3年で来年の特待は関係ないしって、初めて自主的に躊躇いもなく学校をサボった
とにかく誰にも会いたくなくて、自分に全く関心を持たない人間しかいない空間に逃げたくて、フードコートで太宰を3時間くらい読んでた
友達や親にその日学校に行かないことを言ったかは覚えてないけど、とにかく無心になりたくて制服姿のまま本を読んでぼーっとして音楽聴いて本屋でウロウロして時間を潰した
夕方くらいに携帯で奨学金のこととかいっぱい調べて
色んな情報を見つけても見つけても虚しさばかり増して涙が出てきて一人でフードコートの窓辺のカウンターで泣いてた
独りだなって思った
尚更家を出たくなった
一日一人で過ごし、わたしは
「ここで折れたらわたしの人生はわたしの家に台無しにされる」
と思い、完璧に意思が固まった
その日の夜、わたしは家族に
「年50万だけ出して、家賃とか生活費とかは全部自分で稼ぐからわたしは絶対東京行く」と啖呵を切った
わたしは今、東京で色んな人に出会い、色んなものを見て、色んな考えやカルチャーに触れられている日々を送っている
大学の諸費年20万〜30万と家賃4万5千だけ出してもらい、生活費や光熱費は自分で稼いで生活している
人生で最高の日々
今のわたしが在ってよかった
此処に居れてよかった
「東京に行きたい」と思い始めてからずっと考えていたこと、【なんで勉強するのにお金を払わないといけないの?】
ちなみに、高校三年生当時のわたし調べでは早稲田大学や慶應義塾大学にはMARCHに比べて奨学金制度が圧倒的に少ない
結局わたしは明治、立教をふた学部ずつ、法政をひと学部受験して、5個全てに合格することができた
中でも明治大学の今の学部からは特待もついてきたので、そこに入ったというわけである
第一志望を筑波から明治に変える、と教師側に報告した時、一番言われたのは「早慶じゃないの?」という言葉
早慶は受ければ受かってたとは今でも先生や友人に言われるが、わたしはそれに「お金が無いので、」と答えていた
すると皆、あぁと言った顔をする
本当に悔しかったんだよ
世の中お金とはよく言うけど、より高い学力を持つ大学へ行くのにもお金なんだねって、本当にやるせなかった
学費だけじゃない、参考書はなるべく買わないで、買うとしても中古の安いもの
塾も自習室目的で講義は一個しか取らないで夏から冬まで粘った
「お金はかけなくていいとこにはかけない」
その一心だった
お金の問題を自分の力ではどうにもできない子供にまで背負わせることは本当に残酷なことだと、日本のお偉いさんたちは気づかないの?とずっと思っていた
まあそりゃそうだよね
日本の政界の実態はほとんど世襲制
彼らは生まれながらに裕福なんだから、「貧乏な家の子はバカ」ってなんとなく思ってる程度なんだろうなあ
高校でも大学でも「学力免除のため」に勉強をしてきたと言っても過言ではないわたし
今は大二の夏だから、計4年半、わたしは【お金】のために良い成績を残すために勉強してきた
残酷な呪縛だよ
わたしの人生なのに
「学ぶ権利」は誰にだってある筈だよね
頑張ったら手が届くレベルの学び舎でも、行きたくても、それを選ぶ権利はね、お金がある人にしかないんだってさ
「苦労学生」なんて簡単に言ってくれるけど、確かにそんなのよくある話だけど、そこに身を置かれる子どもたちはどれだけ失う時間や楽しさが大きいかなんて裕福な人達からしたら他人事でしかない
ただの大学生でしかないわたしの言葉なんて何も届かないけど、これだけは少しでも多くの人の目に留まってほしいの
日本の学費、ひいては医療費とかも、大学はまでは無償化して欲しいんだ
わたしみたいに【お金】を理由に行きたい学び舎に行けない子供をこれ以上増やして欲しくない
周りの子たちが楽しく旅行に行ったり放課後飲みに行ったりしてる間に「お金のためだ」って働いたり勉強したり
良い成績をあげるために本当に興味がある学問より簡単な授業を取る自分が
どれだけ惨めか
「家庭が貧乏だから若いうちに苦労をする」人は、世の中にはいっぱいいるが、それがどれだけ残酷なことかを、もっと多くの人に重く受け止めて欲しい
わたしは、この国では子供を絶対に育てたくない