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【読書記録】青空と逃げる/辻村深月
助けを求めるんだー。
頭の中で、その声だけがずっと響いていた。
子どもだから何もできない、かもしれない。
だけど、子どもだからこそ、助けを求めていい。世の中の大人の全員が助けてくれるわけじゃないかもしれない。しかし、誰か一人が助けてくれなくても、次に声をかける別の誰か一人は助けてくれるかもしれない。
辻村さんからの、メッセージはここじゃないかと思った。
多彩なストーリーの中で一番、伝えたいことはここに凝縮だれているんじゃないかと、読んでいて思った。
父親が事故を起こし、その同乗者の存在によって母と子は騒動に巻き込まれる。そして渦中の父親が一人で失踪。何が何かわからぬまま、母親は子どもを連れて、「逃げる」ことを決意する。
誰にも事情を話せず、助けを求めることができずにただただ「逃げる」日々。
高知県で過ごす夏休み。
兵庫県の小さな島。
大分県の温泉街。
仙台。
事情を話さないながらも、優しく接してくれるその地その地の人々。
母親は自分には何の取り柄もない、と背中を丸めていた女性。
けれど、息子を守りたいその一心で、一人転々としながら働き、
「自分」を見つけていく。
子どもがいるからこそ、強くなれる。
子どものために、強くなる。
「大丈夫、あなたを絶対に悲しませたりしない。」
辻村さんの作品はいつもどこか、登場人物が悲痛な助けを求めているように思う。
その度に、辻村さんは
「逃げていいんだよ。」
「周りに助けを求めていいんだよ。」と語りかけているように思う。
知らない人に助けを求めるのは怖い。
何が何かわからないままに逃げることも怖い。
けれど、自分一人でどうしようもなくなったら、助けを求めればいい。
その場にいてもたってもいられなくなったら、逃げればいい。
本作の力くん(小五)は、我が息子よりだいぶ大人な気がするけれど、
所々息子を重ね合わせながら、
成長を見守っていた。
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![朝月広海](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/53158230/profile_d377cb65fc94baba966ecedbc6f209f7.jpg?width=600&crop=1:1,smart)