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専門商社就活のすゝめ

 凡人のための凡人による就活戦略として今回は「専門商社」をターゲットにした就活について説明する。
 筆者は新卒で専門商社に入社し5年間勤務した後、メーカーへ転職した経験を踏まえて語りたい。
 今現在、商社は大学生の人気の就職先の一つである事は疑いようが無い。早速だがリーディングマークが発表した「2023年卒就職人気企業ランキング」を見て欲しい。

出典:https://resemom.jp/

TOP10に総合商社がズラリ。

 何と就活生の志望企業のトップ10に5社がランクイン。しかも1位〜4位を独占しているという人気ぶりである。日本の新卒就活における商社の人気は凄まじく、それは近年非常に強くなっているように感じられる。事実、10年前の就職人気企業ランキングでは、1位は電通、2位が伊藤忠商事、3位はオリエンタルランドだった。付け加えると、この年のTOP10入りした商社は伊藤忠のみである。
 この人気の移り変わりについては別で考察の機会を頂きたいと思うが、日本において一般的に商社というと、総合商社を指す。三菱商事、三井物産、伊藤忠商事をはじめとする巨大な商社が21年度の決算で大きく収益を叩き出し、勝ち組のイメージを強く印象付けていることが人気を上げているのではないだろうか。

専門商社は商社ではない?


 総合商社について説明をしてきたが、本記事は専門商社に関する記事だ。
ネットやSNSでは商社について色々と語られており様々な俗説が蔓延っているが、専門商社の就職についてきちんと答えている内容はほぼ無いだろう。勤務している社員とその社員にきちんとOB/OG訪問をした学生だけが理解できていると言えよう。
 ネットで広まっている俗説の中には「専門商社は商社を名乗るな」と言う低俗な放言も見られる。またマッチングアプリで商社と職業が書いてあったのに実は専門商社だった、というコンプレーンもちらほら。
 ここで私がはっきりさせたいのは、総合商社も専門商社も定義づけとして明確なものがされているわけではなく、ほとんどの場合その会社がホームページやPR資料で紹介する際に名乗っていたり、新聞記事などで書かれているに過ぎない。
 総合商社の三井物産は日本産業分類では卸売業として登録されている。では専門商社はどうかというと、鉄鋼の専門商社であるメタルワンも卸売業である。総合商社と専門商社は異なるものとして扱われがちだが、業態においてはどちらも卸売業に位置付けられている。
 総合商社は広く製品を扱い、専門商社は限られた商品のみを扱う、という説明もある。これも一面的には合っているが誤解を招きやすい。
一例を挙げるとコーヒー豆を買い付けて日本に輸入する仕事は、総合商社もやっているし、専門商社もやっている。総合商社でこの仕事をしているのは食品カンパニーであり彼らは自動車の輸出に関わったりすることはなく、専門的にコーヒー豆を取り扱う部隊がある。
 専門商社が行う豆の輸入と、総合商社が行うトレードという行為そのものは同じである。事業部という単位で見ると、総合商社も専門商社もやっている事は同じというケースはたくさんある。
 専門商社はれっきとした商社であり、総合商社もまた商社だ、というのが事実なのだ。

専門商社を志す理由


 Twitterやネットの無責任な意見と総合商社の凄まじい待遇の良さが真実かどうかは別にして広まっている。そのためにモテる職業、勝ち組といったイメージが先行した結果、商社全般に対する理解が広まっていない。その中でも専門商社に対する理解は筆者が約10年前に就活をした時からほぼ変わっていないのが現状だ。これは採用側も自分達の会社・業態を伝えるのが難しいということが理由としてはあると思われる。
 言うまでもなく新卒就活で総合商社への内定を勝ち取ることは難関だが、総合商社に行けなかった人が専門商社に行く、という残念な意見すら聞かれる。
 では専門商社に入社することのメリットは何なのか?総合商社ではなく専門商社を選ぶ事が前向きな選択肢に成りうるのだろうか?

メリット①入社時点である程度商材を選べる。

 総合商社は過去には取り扱い商材について「ラーメンからミサイルまで」と言われる程幅広い品目を取り扱っている。それ故に入社時点ではどの部隊(カンパニー)に配属されるかは分からない。専門商社を見ると、会社ごとに鉄鋼、機械、食料と、生業としている業界が分かれている。
 例えば現在半導体は全世界的に不足しているが、こうした今盛り上がっている商材に関わる仕事がしたい!と思うのであれば、ピンポイントで半導体業界に強い専門商社を受ける事で自己実現につなげることができる。
 総合商社では商材も多岐に渡るため、内定してからも自分の希望の分野の部隊に行けるとは限らない。

メリット②トレーディングという商社の原点の業務に従事できる可能性が高い。

 専門商社の多くはメーカーまたはそれに準ずるサプライヤーから製品を仕入れ、お客様へ販売するというトレーディングによる事業を営んでいる。製品販売にあたってのマージンが商社における利益の源泉となるのだが、これが100年以上前からの商社における基本のビジネス体系である。総合商社でも当然こうしたビジネスに従事できる可能性はあるが、昨今は投資先の管理や全く新しいビジネスモデルの構築といった仕事をする事業部に行く可能性もある。また、コモディティ商品を取り扱う部署では、基本的には納期調整や配船のような既に流れているもののコントロール業務が中心になることもある。
 専門商社ではこのトレーディングという商社の原点である仕事を正面から覚える事が出来る。一口にものを買って売るというにも簡単なことではない。売り手と買い手の双方が納得する値段・納期・品質で商売を成立させるのはかなりやり応えのある業務である。
 総合商社の事業投資や事業開発も最終的にマネタイズするにあたってはこうしたトレーディングがビジネスモデルとして重要になるケースもある。例を挙げると国外の機械メーカーに出資をして、日本向けにスペックインした製品を日本に輸入する。その輸入代理店のポジションは出資をした商社が権独占的に得ることができる。商社は製品を日本に輸入し、国内のお客様に販売する際のマージンが手元に入るということになる。またその機械を作るためのパーツを今度は機械メーカーに対して売る…といった形で事業投資はトレーディングによって複合的かつ継続的な利益を産むのである。よく総合商社は事業投資が中心、といった表面的な浅い理解が言われるが、トレーディングは商売の基本であり続けている。この業務を理解し、こなせるようになる事はかなり貴重な経験になるだろう。

メリット③裁量を持って仕事をするまでの時間が早い。

 専門商社では入社から研修期間は1ヶ月程度であり、その後はすぐに配属され、OJTで仕事を学んでいくケースがほとんどである。担当者として予算を与えられ、利益を出す目標を与えられる場合もある。筆者が1年目に言われた事だが、「商社にはそのままで金を産む資産はない。人がどんどん動いて商売を産んでいかなければならない。だから稼げない人をそのまま置いておくわけにはいかないし、若いうちから積極的に積極的に新しい商売を作れるようにチャレンジしてほしい」。どんどん自分の裁量を持って仕事を作ることを奨励され、そうした姿勢は新人でも評価されたものだった。
 もちろん独断で仕事を進めて良いわけではなく、上司や指導員への報連相は必須だが、若い内から裁量を持って仕事を進める機会には恵まれていると言えるだろう。

まとめ

 色々と書いてきたが専門商社には上記のようなメリットがあり、就職先としては前向きな選択肢であることは間違いない。
・総合商社も専門商社もどちらも商社
・専門商社には取り扱いたい商材・業界を最初から選べる、トレーディングという商いの基本をしっかり学べる、若い内から裁量を持った仕事ができる、というメリットがある。
 次回は筆者の実体験を踏まえた専門商社での仕事について説明する。

Twitterアカウント:@minami10g
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