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2020年3月の記事一覧

氷の街と停まった時間

 その旅人は、はるか西方から二ヶ月間も歩き続けて、ようやくこの街に辿り着いた。    歩み…

水上下波
4年前
5

おじいちゃんは同級生

 信じられないことだけれど、僕のおじいちゃんは段々若返っていく体質らしい。  生まれた時…

水上下波
4年前
4

馬鹿な女

 大学の外階段の、踊り場にある喫煙所で私は煙草をふかしていた。本当は自販機に飲み物を買い…

水上下波
4年前
5

ビー玉と絆創膏

 引越しのために部屋の整理をしていたら、クローゼットの奥から昔使っていたカバンが出てきた…

水上下波
4年前
2

日の出の日 #4(最終話)

前話はこちら *  靴を履き替えるころには、辺りはすっかり暗くなっていた。  昇降口から…

水上下波
4年前
2

日の出の日 #3

前話はこちら *  俺たちは他愛の無い話を続ける。  その間も三村のピアノは、言葉に色を…

水上下波
4年前
2

日の出の日 #2

前話はこちら *  俺たちしか居ないせいで、夕暮れの音楽室はやけに広く感じて、その代わりに、隅々までピアノの音が充満しているみたいだった。  赤く染まる音楽室の姿は、見慣れていないせいかなんとなく違和感があって、三年間通ったこの学校にも、まだまだ知らないことがあるんだと実感する。そんな新鮮な驚きが、少しくすぐったい。 「……そんなに珍しいもんかねぇ」  落ち着きなく視線を動かしていると、呆れ声が降ってきた。俺は慌てて、声の主に向き直る。そんなに分かりやすかったのかと思

日の出の日 #1

 何もしなくたって、ただ毎日は過ぎる。  気の合う仲間とくだらない話をしたり。試験前に必…

水上下波
4年前
1

好きと嫌いの間

 昼休み。屋上へと続く階段には、階下の喧騒が遠く聴こえている。  わたしのすぐ隣。階段に…

水上下波
4年前
2

100秒

 気が付くと、教室にはもう自分しかいなかった。    クラスのみんなは明日からの夏休みが待…

水上下波
4年前
4