本職UI/UXデザイナーが"枡"をデザインしたらこうなった! 〜起/出会い編〜
私、24歳で就職して以来9年間、ずっとスマホアプリを中心にUI/UX(ユーザーインターフェース、ユーザーエクスペリエンス)デザイナーとしてお仕事してきたんですが、ひょんなことから"枡"、そう、日本酒を呑んだり、お米を量ったりするあの"枡"をデザインすることになりました。
初めて商品になるモノのデザインを手掛けることになったきっかけ
「ゴジラボ」の完成から1ヶ月ほど経ったある日、東芝デザインセンター時代の同期でGinger Design Studioをやっている友人から、愛知周辺のものづくり企業とデザイナーを結びつけて新しい商品を生み出すプロジェクトがあるけど興味がない?、とお誘いの連絡がありました。
それがこの、AICHI DESIGN VISION。
テーマは「Afterコロナ生活を楽しくする商品」。
今回が初めての取り組みということで、当初は名称も決まっておらず、運営元の企業もザ・製造業!という感じであまりデザインの匂いがしない感じで(失礼!)、デザイン依頼料は無し(まぁデザイン料を出されると副業NGなんでむしろ助かりますが。)ということで、第一印象としては正直、大丈夫かいなぁ…?という感じでした。
しかし、かく言う自分もデザイナーとしては商品として売られる「モノ」のデザイン経験は皆無の身。これはなかなか巡ってこない格好のチャンス!
プロダクトデザイン志向だった過去
そもそも武蔵美時代はプロダクトデザインが専攻で、東芝デザインセンターに採用してもらったときもてっきり家電のデザインができる!と思って入社ました。が、その頃UXデザイン(=ユーザーが商品やサービスを使うときの一連の体験づくり)に力を入れはじめていたこともあり、当時の部長が「新しいことは元気のいいやつにやらせろ!」ということでUI/UXデザインチームに配属となり、気づいたら今に至っています。野球のことはよく知りませんが、阪神志望だった高校球児がドラフトで巨人に入る、みたいな感じですかね。
ただ、実際UI/UXデザインをやってみると、人を巻き込みながらユーザーのことを考え、論理的に組み立てていくデザインプロセスは非常に興味深く、また自分の性分ともたぶん相性のいいものであることがわかりました。
でも「UX=ユーザー体験」と言うわりに、結局は画面が関わってくるものの話がほとんどで、純粋にフィジカルなモノを作るのにUXデザインを応用したらどんな風になるだろう、というのはいつも頭のどこかにある考えでした。
そして、枡一筋70年、大橋量器さんとの出会い
初めて商品化できるモノをUXデザインを応用して作ることができるかもしれない、そんな思いもあり、個人のデザイナーとしてAICHI DESIGN VISIONへの参加を決めました。
最初のステップはデザイナーと企業とのマッチング。
各企業30分ほどのインタビュー動画を見せてもらいましたが、愛知近郊ということで自動車産業に関連深いところが多く、大型ダンボール梱包を得意とするところや、過酷な環境に耐える樹脂成形ができるところ、金属の削り出し加工をしているところなど、工学部出身としてはどこも「なるほどなぁ〜」という技術を持っていて、面白い。
そんな中で、オファーさせて頂いたのは岐阜県大垣市の大橋量器さん。
社名だけ聞くと、計器でも作っているようにも思えたのですが、実は"枡"の専門メーカー。今では宴席での酒器のイメージが強いですが、元々はお米などを図る計量器。
ほとんどがB2B専業の企業が多い中、すでにB2C向け販売や自社ECサイトを持つだけでなく、ポールスミスやコンランを始めとする様々なブランドとコラボしたり、アイデア商品を数多く手掛けているなど、1つだけ少し毛色の違う企業でした。
大橋量器さんにオファーした4つの理由
なぜ大橋量器さんにオファーさせていただいたかについては、4つの理由があります。
・(自分がプロダクト未経験なので)すでに様々な商品開発をしてきた実績があるので、自分の至らぬところを補ってもらえそうなこと
・Afterコロナを楽しくするというテーマ的に、食に関連する分野は有望そうなこと
・企業紹介をしてくれた伊東さんが一緒にやると楽しそうな感じがしたこと
・そして何より、酒が好きなこと(笑)
と、一方的に見込んではいたものの、コロナ禍でかなり苦労されていることもあり、最初はまだAICHI DESIGN VISIONへの参加を少し迷われていましたが、幸いオファーを受けてくださり、タッグを組めることとなりました。
しかし、すでに様々な商品開発や先進的な取り組みを通して経験豊富&百戦錬磨な大橋量器さん。
ちょっと枡でWeb検索するとヒットするものは大橋量器さんの関わっているものばかり。
デザイナーから出てくるそんじょそこらのアイデアでは物足りなさそう…
そこで、どういうアプローチでアイデアを考えていったのか?については、次の投稿でご紹介したいと思います。