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#冬

冬の寒さ

気づけば冬になっていた 水道の水が冷たくなり 唇が乾燥しカサカサになり 体に力がこもって肩こりになり それでも僕は冬に気づいていなかった 鼻水が出て咳が出て 頭痛がしてやっと気づいた 寒さは僕を覆っていた 毛布を被っても寒さはその下に入り込んで 僕の体を冷やそうとする 冷たくなっていく僕の体 死んだらこの冷たさよりもずっと 冷たくなるんだろうか 試しに毛布を剥いでみた 一度気づいてしまうと不思議なもので 僕の体は寒さに震えた

冬の不思議

ほうと息を吐けば白く染まり 自分が生きていることを自覚させられる 己の体温で温まった空気 外気に晒されればすぐに冷えて透明になる けれど私の体は どれだけ冷えても透明にならない 宙に溶けて消えていかない 白い雪の上に続く足跡 私が歩いてきた証 冬は不思議だ 自分の生を実感させられる

年の瀬

スーパーはもうクリスマスを通り越して正月気分で シャンメリーと鏡餅が並んで売っている 今年ももうすぐ終わるのだ 終わりは新たなはじまりでしかない 私たちはいつも何かを終わらせている ずっとその繰り返し その繰り返しもいつか終わる 私たちは終わりに向かって ずっと歩き続けている

吐息

吐く息は白いのに 吸う息はどうして白くないのだろう それは吐く息に その人の体温が含まれているからだ 吐く息の白さはその人のあたたかさ 吐く息の白さはその人が生きている証 かじかむ手にはーっと吹きかければ その手には生きたあたたかさが伝わって 少しだけ熱を取り戻す それは生の循環