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「自分には何もない」と思っていたわたしに、編集者の先輩が言ったこと

「わたし、なにか誇れるものとか、誰にも負けないくらい好きなこととか、ないんですよね。器用貧乏なんです」

昨日、柿内さんにこんなことを言いました。

趣味はいろいろあるものの、全部が中途半端で、語れるようなことがない。だから「オタク」にすごく憧れます。熱中できるものがある人はキラキラして見えるし、嫉妬すらしてしまいます。

「才能」は絶対、全員にあるもの

そのとき柿内さんがおっしゃったのは「絶対あるよ。才能は全員に絶対ある。なにかひとつは絶対に見つかるはず」ということです。

なんの根拠があるんだよ! と思うかもしれません。でも、柿内さんはこれまでたくさんの本を作ってきた編集者、しかも『嫌われる勇気』のように、世の中の人がまだ見つけていなかった著者の才能を引き出してミリオンセラーを作った人です。そんな、いわば才能のプロから言われると、すごい説得力がある気がします。

「とよふくさんにはあるよ」とかじゃない。「才能は、誰にでも必ずある」。すごい編集者さんが、そう言ってたよ! これを他の人にも伝えたくて、このnoteを書きました。

ダメと言われても、ついやっちゃうこと=才能のかけら

あなたには「やっちゃダメ!」と言われても、ついやっちゃうことってありますか?

いきなり言われても思いつかないかもしれません。でも、そんな高尚なものじゃなくてもいいんです。思い返してみたら、ずっとやってるなー、ということ。ちなみに私が思い当たったのは「恋愛」でした(しょうもなさすぎて恥ずかしい)。

どんなにしょうもなくても、思い当たったそれはたぶん「才能のかけら」です。あとはそれを磨いて、伸ばしていくだけ。

それを、いまの仕事にどう活かすか?

じゃあ、その「才能のかけら」を今の仕事に活かせるとしたら、どんな形になるでしょうか。

私の「恋愛」の場合は、著者のことを好きな人だと思って、とことん相手のことを知る。そうすれば、普通の取材では聞き出せないようなことまで話してもらえて、おもしろいコンテンツが作れるかもしれない……とか。

ゲームが好きな人なら、ゲームを攻略するときの考え方を、仕事にも活かせるかもしれません。寝るのが大好きな人なら、気持ちいい眠りを追求して「眠りの専門家」になれるかもしれない。

純粋な欲求を伸ばして仕事にすると、それが自分の強みになる。しかも、他の誰かが真似しようとしてもできない「自分にしかできないこと」になるのです。

コンプレックスが強みになる

柿内さんの「自分にしかできないこと」は、「めちゃくちゃ普通の感性をもち続けること」だそうです。

2019年に編集講座でおっしゃっていたことですが、柿内さんはすごい映画マニアで、これまで何千本も映画を観ています。それでも「今年いちばん面白かった映画は『アベンジャーズ』だ」と堂々と言える、と。「わかる人にはわかる」「知る人ぞ知る」映画ではなく、アベンジャーズをいちばん面白いと思えるのだと。

そういう「ど真ん中のものをおもしろいと思える普通の感性」を持ち続けているから、『アドラー心理学入門』ではなく『嫌われる勇気』というタイトルをつけて、多くの人に読まれる本にできたんですよね。

でも、新卒で出版業界に入った当時は「普通」であることがコンプレックスだった。周りの同期が飲みながら朝まで「メディア論」を語っている横で、話に入っていけなくて死にたくなりながら家に帰ったこともあったそうなんです。

それでも自分の強みを模索しながら仕事をした。そして『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』がヒットしたことで、「普通」を強みにするのは間違っていないと確信を持てたのだとか。

こだわりが強くて知識が豊富な編集者が多かったからこそ、「普通」であることが逆に強みになった。「自分にしかできないこと」は、意外といまコンプレックスに感じていることの中に隠れているかもしれません。

あとは自分を信じて「才能のかけら」を磨くのみ。それを意識しながら、ひたすら頑張るのみです。わたしにはまだ堂々と言える「強み」はないですが、3年後にはその尻尾を掴めているように、目の前の仕事に取り組んでいきたいです。


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とよふく/編集者
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