喉に詰まっていたものをタシギに取り出してもらったら
走るのが遅くて歩くのも遅くて
息が浅くて声が小さくてしゃべるのも遅くて食べるのも遅く、
たくさんの水も飲めないし山盛りのかき氷も食べきれない
辛いものも熱いものも苦手
そんな私の喉には小石がいっぱい詰まっているのではないかとふと気がついた。
人の機嫌に気をつかってばかりいたせいで
小石がどんどん詰まってしまったのではないかと。
ちょうどクチバシがお箸のように細く長いタシギに出会ったので、喉に詰まった小石を取り除けてほしいと頼んでみた。
いいわよ、とタシギがいうので私は木のベンチに寝転んで空に向かって大きく口をひらいた。
大きく、といっても私は口も小さくて大きくひらかないのだが
タシギはなにしろお箸のようなクチバシだから上手にどこにもさわらず、私の喉に詰まっているものをはさみ出し、ベンチの上にならべていく。
それは色とりどりのドロップだった。
野いちごの赤いドロップ
ソーダの空色ドロップ
小さい満月のような檸檬のドロップ
ペパーミントの若草ドロップ
黄色いミモザのドロップ
桜色のドロップ
透明な水のドロップ
詰まっていたのは美しいものばかりよ。
そういうと私がお礼を言うまもなくタシギは行ってしまった。
私はベンチにならんだドロップをながめる。
今では私の喉はすっきりし小さな風が爽やかに通り抜けていく
イソヒヨドリのような声で空に向かってさえずることができそうだし
もう少ししたらタンポポの綿毛になってどこかへ飛んで行けるかもしれないほど体も軽くなっている。
はー、と息を吐いてみる。
最後に体の奥から煤のような煙のようなみえないドロップが出て行って空に消えた。
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