読書感想文 暗いところで待ち合わせ
駅のホームで同僚を押して電車に轢かせた殺人犯として追われる大石アキヒロが駅のホームが見える一軒家に一人で住む盲目のミチルの家に潜伏する。
潜伏していることに気付かれないよう、ミチルの生活を脅かさないように息を殺すアキヒロと、自分以外の人間の気配に気付きながら刺激しないように気付かないふりをするミチルの、決して好戦的ではない気配斬りのようなやり取りが行われる。アキヒロ視点とミチル視点が細かく切り替わるので、一方の一方に対する考察のアンサーがすぐ知れる話の構成になっている。
殺人犯が一般市民の盲目の女性の家に潜伏という現実味のある設定で、互いに覚られないように暮らすという現実味のない工程なのに、話の構成によってこのお話の世界に引っ張り込まれる。
私が一番失いたくない身体機能は視力だ。それは一番依存している感覚だからだと思う。
物語の中でアキヒロもミチルも学生時代に同じ経験をしている。二人とも他人の目の触れる場所での孤独の怖さを感じている。
今日の私も似た怖さ感じている。一人で買い物のために店内に入った時、必ずズボンを履き忘れていないか確認してしまう。そんなことあるはずないのに。家を出る時執拗に自分の外見を気にしてしまう。
怖さの正体はなんなのだろう。
私の場合は他人に認識される、覚えられるのを怖がっている。
でもそれはなぜだろう。
いつも行くコンビニで店員に私が買う煙草を覚えてもらっていることには嬉しく思う。
思うに、覚えられていると嬉しいのは私の中でも正常で、感じている怖さは私の妄想だ。自意識の妄想、が暴走の状態。
久しぶりにあとがきまで読んだ本だった。電子書籍の週投稿される漫画の作者のコメントや単行本漫画の作者コメントみたいなフランクさが新鮮で、この人の書いた本は初めて読んだけど他のものも読んでみようと思った。